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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

双闇の邂逅(1)

いつもお世話になっている「闇月の創作ノート」の闇月様より、投稿作品をいただきました。

今回は闇月様のサイト「闇月の創作ノート」で連続掲載されました「ノワール・キングダム」シリーズのキャラと、我らが「犯罪教授響子様」シリーズのキャラが絡み合うというコラボレーションSSです。
まさに先日TVで放送されました「ルパン三世VS名探偵コナン」ばりの大胆なコラボレーションではないでしょうか?
(ただし、私は今回の作品そのものには携わっておりません)

とはいえ、今回のSSは双方が協力し合うというものではなく、まさにお互いが対決するというシチュエーション。
はたして勝利を手にするのはどちらの陣営でしょうか?

今日と明日の二回で公開させていただきます。
それではどうぞ。


舞方雅人様作「犯罪教授」シリーズ/闇月作「ノワール・キングダム」シリーズ コラボ(?)作品
【双闇の邂逅】

街の路地裏にある小さなバー『ノワール』。
店内には漆黒のパーティー用ワンピースを着た女性、いや、少女が一人。
少女はおそらく未成年だろう。
しかし、この少女のまとう雰囲気は大人の女性と同じものだった。

「こちらは本日おすすめのカクテル、『クライム・プロフェッサー』でございます」
バーテンダーが少女の前に、彼女の衣装と同じ漆黒のオリジナルカクテルを出す。

「あら、私にカクテルなんて出しちゃっていいの?」
「ノンアルコールですのでご心配なく」
少女の皮肉めいた問いにバーテンダーはにこやかに答えた。

(ふーん…カクテルの名前といい、私が何者なのか、わかっているみたいね)

「お客様がお待ちの『あの方』はあと15分ほどでお見えになります。お仕事が予定より長引いたようで…」

バーテンダーの言葉を聞き流しながら、少女はここ数日の出来事を思い出すため、そっと眼を閉じた。



数日前、犯罪教授のもとに届いた依頼。
それは『ノワール・コーポレーション』という企業の調査と、社長である青年実業家への襲撃。
犯罪教授こと案西響子は部下であるコックローチレディに調査を、マンティスウーマンに襲撃をそれぞれ命じた。


翌日の昼時。
ランチタイムとあってか『ノワール・コーポレーション』があるオフィス街はサラリーマンやOLたちで賑わっていた。

「『ノワール・コーポレーション』のビルは、オフィス街にあるビルの中では真ん中レベルといったところかしら?」
『ノワール・コーポレーション』のビルを眺め、そう呟く女性はフリーライターの佐登倉志穂(さとくら しほ)。
彼女の服装は、周囲に違和感を与えないようなスーツ姿。
“調査”を目的に行動していることは気づかれないだろう。

(あれ? 今『ノワール・コーポレーション』から出てきたのって、投捨の女記者じゃない…?)

志穂が監視していたビルの玄関から出てきたのは、薄紫のスーツ姿の若い女性。
見覚えのある顔に志穂は驚く。

「…確か、投捨新聞社会部の門名真里(もんな まり)だっけ?」
“かつての”自分と同じタイプの女記者の名前を志穂はすぐに思い出す。

その時、志穂は、真里の行動にさらに驚いた。
真里が志穂の方を見てにっこり微笑み、軽く会釈をしていったように見えたからだ。

「ありゃ、気づかれたかな、これは…」
志穂は苦笑いを浮かべ、そう呟いたのだった。


佐登倉志穂の視界から消えた門名真里は、バッグの中から携帯電話を取り出すと、素早く電話をかけた。

「もしもし…どうやら“あちら”が動き出したようです。今夜あたり潜り込むと思いますわ…」
「…はい。顔見知りでしたけど、おそらく私の“正体”には気づいていないかと」

電話を終えた真里は、くすっと笑うと、新聞社に戻るため、駅に向かったのだった。


その夜。
オフィス街は残業の明かりも少なく、閑散としていた。

『ノワール・コーポレション』社内に蠢く一つの影があった。
美しいプロポーションを包む茶色のレオタード、すらりと伸びた脚にはハイヒールのブーツ。
頭を覆うヘルメットのようなものからはふるふると震える二本の線が延び、背中には翅のような形をしたものを背負っている。

その姿はまるでレオタードの胸の部分に描かれたゴキブリのよう。

そう、この影の正体こそ、犯罪教授の部下の一人、コックローチレディ。
フリーライター佐登倉志穂の“もう一つの顔”である。

コックローチレディがやってきたのは、『ノワール・コーポレーション』の情報が全て集まったサーバールーム。
ここまでやってくるのに、警備員に会うことはなく、警報装置も背中の装置で簡単に無効化できた。

「クスッ、業績を伸ばしている企業のわりにはセキュリティが甘いんじゃない? まぁ、私にかかればどんなに強固なセキュリティでも赤子同然だけどね」

コックローチレディの言葉は自分に対する自信と、自分にこの装備を与えてくれた犯罪教授への絶大なる信頼によるものだった。

コックローチレディは触角の先のコネクターをコンピュータにつなぎ、右手に仕込まれたキーボードを操作する。
これで、複眼状のバイザーにコンピュータのデータが映し出されるはずだったのだが…

(えっ、サーバーのセキュリティに阻まれてる!?)

おかしい。こんなことは今まで一度もなかった。
コックローチレディは初めて動揺を見せる。

それから十数分、彼女はセキュリティシステムと格闘したが、結局全ての手段を阻まれ、データの強奪をあきらめざるをえなかった。
再びもと来たルートを誰にも気づかれずに進み、外に出る。

「…くやしい、こんなこと初めてだわ。いったいなんなのよ、あのセキュリティシステムは!」

失敗の報告をしたら響子様は何ておっしゃるだろう?
そう思いながら、コックローチレディは重い足取りでアジトに向かうのであった。

…自分が何者かに尾行されているのも気づかずに。


「ふぅ。結構手ごわかったけど、失敗に終わったみたいね」

住宅街にある『神崎』と書かれた表札のある家の2階の部屋で、神崎飛鳥(かんざき あすか)はフゥっと息をつく。

部屋にあるのは数台のパソコンとサーバー。
ここでは、『ノワール・コーポレション』の事業の一つ、『女性ニートのためのSNS HOT-SL』の運営と、『ノワール・コーポレション』のサーバールームのセキュリティを遠隔で監視していた。

部屋には飛鳥の他に二人の女性がいた。
一人は飛鳥ともにこの部屋で仕事をする笛木美鈴(ふえき みすず)。
そして、もう一人は門名真里だった。

「あちこちの企業でデータを根こそぎ奪ってきたコックローチレディも、うちのセキュリティは破れなかったんだ。これならどんなヤツが来ても大丈夫だね」
美鈴が笑顔で言った。

「まぁ、ここまで強固なセキュリティシステム作れたのも、貴女の“怠惰”のおかげよね、スロート」
「ひどっ! ラスティ、グリーデがひどいこと言ってるよぉ…シクシク」
真里に“スロート”と呼ばれた美鈴の笑顔が泣き顔に変わる。

「グリーデの言っていることは真実だからねぇ。貴女がサボっても問題ないようにしたらこんな立派なシステムができたんだから」
美鈴に“ラスティ”と呼ばれた飛鳥がクスクスと笑い、真里に向かって言った。

「グリーデ、貴女の情報のおかげで万全の体制で迎え撃つことができたわ。感謝してるわよ」
「いえいえ。今頃彼女、どうなっているのかしら? たぶん“彼女たち”に捕獲されているでしょうけどね」
飛鳥に“グリーデ”と呼ばれた真里はそう言うと、ニヤリと妖しい笑みを浮かべた。



「…コックローチレディがしくじったようね。珍しいこともあるものだわ」

携帯電話に届いたメールを見て呟いたのは、白いカマキリの模様の入った暗緑色のレオタードとマスクの女性。
彼女はマンティスウーマン、犯罪教授の部下の一人だ。

「それにしても、今回のターゲット、なかなかのイケメンじゃない…切り刻んじゃうのがもったいないわぁ」

マンティスウーマンはターゲットの写った写真を見て、ため息をつく。
彼女が物陰に身を潜めて待っているのはこの写真の人物、『ノワール・コーポレション』の青年社長だ。

左右の複眼を模した暗視ゴーグルが男性の姿を捉える。
どうやらターゲットは一人のようだ。
マンティスウーマンは両手首に蟷螂の鎌を模した手鉤を装着する。

「うふふ…『ノワール・コーポレーション』の社長さんですわね? お待ちしておりましたわ」
物陰から男性の前に躍り出たマンティスウーマンの口元に笑みが浮かぶ。

「貴女のような方と待ち合わせをした覚えはないんだけどね」
漆黒のスーツをきちんと纏った青年社長が乾いた笑みを浮かべる。

「こちらが一方的にお待ちしていただけですわ。私はマンティスウーマン、以後お見知りおきを」
「言われなくても、貴女のような姿をした人は二度と忘れないと思うけどね」

マンティスウーマンの言葉に、青年社長は表情を全く変えずにサラリと言い返す。

「あら、まもなく死ぬというのに、驚いたり怯えたりしませんのね?」

マンティスウーマンは驚いていた。
今まで彼女が襲った相手は彼女の姿を見て驚き、がたがたと震えて腰を抜かす者までいた。
それなのに、この青年は全く動じる様子がない。

「貴女…いや、君には悪いけれど、私は君にむざむざ切り刻まれるつもりはないんだよ、蟷螂のお嬢さん」

(悪いけど、そういうわけにはいかないのよ…響子様のために!)
青年の言葉に応えることなく、マンティスウーマンは心の中でそう呟くと、青年に襲い掛かった。

ザクッ!

手首の鎌が肉を切り裂いた感触がした。

もう一撃、と思い振り返ると、青年と眼が合う。
キッと睨みつける青年の眼を見た途端、マンティスウーマンの身体が硬直し、次の行動に移れなくなってしまった。

(な、何が起こっているの!?)
マンティスウーマンは自分の身に突如起こった不可解な出来事に呆然とする。
彼女の視線の先では、彼女の攻撃を受けた青年が片膝をついて荒い呼吸を繰り返している。
彼女の鎌には、仲間であるスコーピオンガール特製の神経毒が仕込まれており、攻撃対象を確実に仕留めることができるようになっていたのだ。

「…これ以上、君に攻撃はさせないよ」

青年の声が先程までと全く違っていた。
声色だけではなく、口調も、雰囲気も、ガラリと変わったような感じだった。
聞いた者に恐怖を与えるような、闇の底から響き渡るような声に、硬直していたマンティスウーマンの身体ががたがたと震え始めた。

もうこれ以上、この声を聞きたくない。
一刻も早く、ここから逃げ出したい。

マンティスウーマンはそんな衝動に駆られていた。

「蟷螂のお嬢さん、私の手駒が来る前に立ち去るがいい…これは警告だよ」

その声を聞いた途端、マンティスウーマンの身体に自由が戻る。
青年の言葉に逆らうことなく、彼女はその場から立ち去った。


「大丈夫ですか?」
「あぁ、君のおかげで助かったよ。メディスン・レディ」

マンティスウーマンが立ち去った後に現れた若い女性の処方した特製の即効性解毒治療薬により、青年は元通り回復していた。
不思議なことに、傷口もすっかり消えてしまっている。

「“あっち”はどうなっている?」
「今のところ順調に事は進んでいます。あとは“彼女”が無事帰還すれば任務完了ですわ」

“メディスン・レディ”と呼ばれた女性は淡々とした口調で青年に報告した。
  1. 2009/04/08(水) 21:21:49|
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投稿作品二本目です

昨日一昨日の作品に引き続きまして、kokusu様よりいただきました投稿作品の二本目を公開いたします。

タイトルは「女勇者モンスター化Ⅲ」
こちらは非常にオーソドックスな悪堕ち作品となっており、昨日の作品ともども楽しめること請け合いです。

それではどうぞ。


「女勇者モンスター化Ⅲ」

ナジミの塔、一階。襲いかかってきた大ガラスを一刀両断にし、あたりに他の敵がいないのを確認して私は銅の剣を鞘におさめた。仲間の無事を確認すると再び探索を開始する。
「ちょっと待ってくださいよ。勇者さん」
「そうそう、そんなに焦んなくたって、魔王は逃げねえぞ」
 口々に不平を洩らすのは私の仲間、商人と戦士だ。
「……そんなにここに置き去られたいのならそうしてろ。私は先に行くぞ」

 もともと私は仲間など連れて旅するつもりはなかったのだ。父、オルテガと同じように一人で魔王に、バラモスに挑むつもりだったのだ。しかし、父が失敗したことをかんがみた王は私に無理やり供をつけて送り出した。それが彼らだ。
 商人は胡散臭いひげを生やした小男で、戦闘にはほとんど参加せずあたりをうろちょろしては金目のものを探している。戦士は脳味噌まで筋肉でできているような典型的な体力馬鹿だ。役に立つと言えば立つが、どうしても必要かと言われれば首をひねらずにはおれない。
「まあまあ、実はね、さっき面白い防具を拾ったんですけどね、こいつを勇者さんが装備したらさぞお似合いになるだろうなと思いましてね」
 商人はにやにやして後ろ手に何かを隠している。あまりいい予感はしない。
「……見せてみろ」
「へへへ、これだよ、これ」
 戦士が商人から取り上げて、私の目の前にそれを突き出した。白い色をした非常に露出度の高い水着。俗に言う危ない水着というやつだ。
「……ッ! 何を考えている! 馬鹿もの! 誰がこんな物を着るか!」
 私は目の前の水着をひったくって地面にたたきつける。
「あぁあ、もったいない。なんてことするんですか」
 商人が慌てて水着を拾い上げる。
「捨ててしまえ! そんなもの」
「そういうわけにもいかねえだろ。こいつは売るとこにうりゃ大した金になるんだぜ? 軍資金は必要だろう? 勇者様」
「ぐっ……」
 理はある。確かにそのような水着が高値で売買されることは知っている。しかし……
「分かった。袋にでも入れておけ。ただし、今後私に着せようなどと言い出したらどうなるかわかってるだろうな?」
 なるべく凄みを利かせて、念押しする。
「ええ、そりゃもう」
「分かってるぜ」
 商人と戦士はクックと笑い合う。何を考えていることか。


「勇者さん。さっきの魔物がこんな物を落としていったんですが……」
塔の中腹ほどにさしかかったころ、商人が両手に何かを持ってきた。
「これは……」
 白いふわふわした毛玉のようなアクセサリーと、ウサギの耳を模したヘアバンド。
「ヘアバンドはわかるが……この毛玉はなんだ?」
 商人に問う。アイテムの知識に関してだけは彼はなかなかに優秀だ。
「ウサギのしっぽと言いまして、装備すると運の良さが上がるアクセサリーなんです。どうです? 勇者さん」
 商人は白い毛玉、ウサギのしっぽをぐいと私の眼前につきつける。運のよさ、か。確かに私はあまり運のいいほうではないが……
「ま、物は試し。装備してみてはいかがですか?」
「ふむ、そうだな。貸してみろ」
 商人から受け取ったウサギのしっぽを装備する。
「気分はどうです? 勇者さん」
「うん。なんだか楽しい気分になった。ありがとう! 商人さん」
 商人さんにお礼を言う。うふふ、ウサギのしっぽってかわいいなぁ。それにしても商人さんってすごいなぁ。あたしが見たこともないようなアイテムの名前も効果も一発で当てちゃうんだもん。そんけいするなぁ。
「おい、どうしたんだ。こいつ。えらい変わりようだぞ」
 戦士さんが不思議そうに商人さんに問いかける。
「へへへ、アクセサリーの中には装備者の性格を変えてしまうものがあるんですがね。ウサギのしっぽの効果はズバリ幸せ者になること。一匹狼のつんけん娘と一緒に旅するなんてまっぴらごめんなんでね。ちょいと素直ないい子になってもらおうかと思って」
「あ、ひどい。そんなこと言うなんて。でもあたしは変わったんだしもう問題ないよね。これからは仲良く旅しようね!」
「へぇ、人間変われば変わるもんだなぁ。よろしくな、勇者」
 戦士さんと握手する。ごつごつした手。頼もしいなぁ。こんな人たちと旅できるんだから、バラモスなんて楽勝だよね。あっ、そうだ。
「商人さん。さっきのもう一つの装備は?」
「うさ耳バンドですか? これは……」
 商人さんの持っているバンドをひょいと取り上げる。かわいいなぁ。これ装備したいなぁ。ううん。これは装備しなきゃいけないの。
「えへへへ、どう? 似合う? かわいい?」
 あたしが首を振るとヘアバンドもひょこひょこと揺れる。
「おお、似合う似合う」
「……? おかしいな。それは勇者さんには装備できないはず……」
えへへ、こうしてると本物のウサギになったみたい。たのしいな。
「お、そうだ。勇者、ついでにこれ装備したらどうだ?」
 戦士さんが袋の中から危ない水着を取り出す。もう、戦士さんってすけべだなぁ。でもあの水着もちゃんと装備しなきゃね。だって真っ白な水着なんてうさぎさんにぴったりだもん。あたしは旅人の服を脱いで、素っ裸になる。全然恥ずかしくないよ。だってあたしはうさぎさんなんだもん。
「お、おお……」
「お、いいぞいいぞ!」
 商人さんは鼻を押さえてる。戦士さんはスケベな目であたしを見てる。えへへ、なんだか嬉しいな。
「どう? せくしー?」
「これは……たまりませんな!」
「最高だぜ!」
 みんな喜んでくれてる。嬉しい! しばらくこのままでいよっと。
 
 もう随分階段を上ったし、そろそろ最上階にも近いかな? あたしは耳をそばだててあたりの様子をうかがう。ウサギさんの耳って便利だなぁ。どんな小さな音も聞き逃さないもの。
 扉をあけると塔のへりの部分に出た。危ないなぁ。こんな所から落ちたらひとたまりもないよね。
「っくし! うおお、寒ぃ!」
 戦士さんが大きくくしゃみをする。もう! 汚いなぁ。
「あ、勇者さん。ここは流石に水着一枚では……」
 商人さんが毛皮のマントを差し出してくる。心配してくれるんだ。優しいなぁ、商人さん。ありがとう! 尻尾がホンモノだったら、きっとあたしはそれをぶんぶん振ったことだろう。
 でもあたしは寒くないよ。水着が毛皮の代わりになってくれてるもの。むしろ邪魔なくらい。
「そ、そうですか?」
 うん。そんな装備、暑苦しくて、とてもじゃないけどしてられないよ。
「おーい! なにやってんだ?」
 戦士さんの呼ぶ声がする。いけない、忘れてた。
「あ、すいません。小部屋がたくさんに分かれてますね。散開して探索しましょうか」
「さんせーい!」
「おう」
 商人さんは右の小部屋。あたしは左の小部屋。戦士さんは外で見張り。それぞれ役割を決めて散らばる。あたしの入った左の小部屋にはローブで全身を隠したモンスター、まほうつかいがいた。
「覚悟しろー」
 あたしは銅の剣を構える、がまほうつかいは首を振る。
「待て、わしはお前と争う気はない。この宝箱もお前にくれてやろう」
 まほうつかいは宝箱を差し出してきた。
 あたしは首をかしげる。襲いかかっても来ないし宝箱もくれるなんて。そうか、もしかしたらこのまほうつかいはいいまほうつかいなのかもしれない。うん。きっとそうだ。
「ありがとう」
 あたしはお礼を言って宝箱を開けた。中に入っていたのは毒針だった。力のない人が使っても、先に仕込んだ毒で相手を即死させることができる武器だ。
「ああ……」
 あたしは思わずため息を漏らした。なんて素敵な武器なんだろう。
「本当にもらっていいんですか? なんだか悪いです」
 こんな素敵なもの。何の見返りもなくもらうことなんてできないよ。
「いいから装備してみるがいい」
 言われるがままにあたしは毒針を装備する。ああ、なんだかとっても落ち着く。絶対手放したくないよぉ……。

「くくく、どうやら実験は成功のようだな」
「じっけん? 何の実験ですか?」
 満足げなまほうつかいさんに、あたしは聞き返す。
「呪いの装備品を作ってそれを装備した人間をモンスターに変える実験だ。お前の今装備している……いや、していたものはすべてわしの作った呪いの装備なのだよ」
 言われてあたしは自分の体を意識する。そういえばヘアバンドは今や本物の耳になっているし、水着が覆っていたところにはふさふさの白い毛が生えそろっている。尻尾はお尻でピコピコとその存在を主張してる。あはっ、あたしモンスターになっちゃったんだ!
「ありがとうございます! まほうつかいさん。あなたのおかげで、あたし立派なモンスターになれました!」
「くく、礼には及ばんよ。その代りお前にはわしの僕としてこれから仕えてもらうぞ」
「はぁい! まほ……ご主人様!」
 まほうつかいさん。と呼びかけて咄嗟に言いなおす。これからお仕えする相手だもん。こう呼んだほうがいいよね。あ、いけない。名前を名乗るのを忘れてた。
「あたしの名前は……あれ?」
 おかしいな。あたしの名前が思い出せない。なんだっけ? 確か……
「くくく、お前の人間としての名前はもう消えてしまったよ。これからはいっかくうさぎと名乗るがいい」
「分かりました。あたしは今からいっかくうさぎです!」
 名前までもらっちゃった。嬉しいな。ありがとう! ご主人様。
「早速だがまずお前の仲間二人を消してもらおうか。逃げ帰られてわしの研究が知れてしまっては厄介だからな」
「了解しましたー」
 折よく商人さんが部屋に入ってきた。
「勇者さん? 随分と時間が……」
 あたしは商人さんの懐に潜り込むと毒針を突き立てた。
「ぐっ……ゆ、勇者さん、何を……!?」
「勇者さんじゃないよ。あたしはね、いっかくうさぎさんなんだよ!」
 商人さんは顔を赤くしたり青くしたりしたかと思うと口から泡を吹いて死んじゃった。面白ぉい! 人間殺すのってこんなに楽しいんだ。早くもう一人も殺そうっと。
 外に出て、あたしは大声で戦士さんを呼ぶ。
「どうしたー!」
 戦士さんが駆け寄ってきた。今だ! あたしは勢い良く戦士さんに突進した。
「どーんっ!」
 戦士さんはあっさりと突き飛ばされ、下へ下へと落ちていく。信じられない。といった表情の戦士さん。間抜けでおもしろいなぁ。
 でもあっという間に見えなくなっちゃった。後でちゃんとぐちゃぐちゃになってるか確かめてこよぉっと。
「くくく、よくできたぞ」
 床に寝そべって、戦士さんが落ちて行ったほうを覗き込んでいると、ご主人様がすぐ後ろに来ていた。あたしは慌てて起き上がってご主人様に向き直る。
「これからもこの調子でわしに仕えるのだぞ」
「はい! ご主人様!」
 モンスターになれたしご主人様にお仕えもできる。それにきっと人間もいっぱい殺せるんだ。あたしって幸せ者だなぁ。

END


いかがでしたでしょうか?
こちらも私にはすごく楽しめる作品でした。
「毒針」と「危ない水着」と「うさぎのしっぽ」で「いっかくうさぎ」にしちゃうとは驚きです。
アイテム悪堕ちの王道とも言える作品でしたね。

kokusu様、あらためまして投稿ありがとうございました。
よろしければまたお願いいたします。
  1. 2009/02/19(木) 21:18:29|
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投稿作品続き

昨日に引き続いてのkokusu様の投稿作品の続きです。

それではどうぞ。


2、
『おや? この子はキラーパンサーの子供のようですね。まぁ、放っておけばじきに魔性を取り戻すことでしょう』


あたしはキラーパンサー。魔界の殺し屋と恐れられるモンスターだ。キラーパンサーは普通は群れで行動するものらしいが、あたしは何故かはぐれなどをやっている。あまり昔のことは覚えていないが、いつの間にやらこのあたりのモンスターのボスのようなことをやることになってしまった。
このあたりのモンスターは弱い。ただの町人ならともかく、少し腕に覚えのある冒険者にはあっさりと負けてしまう。だからあたしが襲撃の計画を立てたり、強い冒険者を避けるルートなどを考えたりして、面倒を見てやっているのだ。
正直柄ではないと思うのだが、「姐さん」などと言って頼ってくるモンスターたちも無下にはできない。慕われるのは嫌いではないことだし。

ただそんなあたしには一つの悩みがある。それは、もしばれてしまえばボスとして面子が立たない様な重大な問題だ。
あたしは野菜しか食べれないのだ。記憶にある限りであたしは肉というものを口にしたことがない。魔界の殺し屋が菜食主義者です。なんて、冗談にもならない。配下のモンスターたちにも示しがつかない。
仕方なく、あたしは夜な夜な縄張りから近くの村へ下りて行って、こっそり野菜を盗み食いする。情けなくて見られたもんじゃあない。
今日も今日とて、誰にも見られないようにねぐらの洞窟を抜けだして村の畑へ向かう。抜き足差し足、音も立てずにひっそりと……しかしそんな努力も大好物を目の前にしては消えて失せる。
キャベツだ。夜の畑に、月明かりに照らされてまん丸のキャベツが並んでいる。
あたしはたまらずそのうちの一つにかぶりついた。口いっぱいに広がる土のにおい、えぐみ、青臭さ、瑞々しさ。そのすべてが愛おしい。夢中になって咀嚼し、嚥下する。
あたしは野菜の中でも特にキャベツには目がないのだ。お肉なんて、あんなまずいものを食べる奴の気がしれない。
あたしは飢えが満たされる快楽に半ば恍惚としながら、キャベツを食べる。嗚呼、美味しい……やっぱり餌はキャベツに限るわ……もっと……もっとキャベツ頂戴……キャベツ……ッ!
突然感じた気配にあたしは一目散に逃げ出した。まさか配下のモンスターじゃないだろうか? 見られていたら大変だ。村人や冒険者だったらいいのだけど……。

寝床の洞窟に戻る。試しに通りがかった何匹かに訊いて見るが、あたしが何処に行っていたか知っているやつはいなさそうだ。とりあえずほっと一息ついて、あたしは藁の上に寝転び、まどろみ始めた。
『姐さん! キラーパンサーの姐さん! 大変です!』
 叫んで駆けこんできたのは突撃兵だった。手にしたやりを振りまわして部屋の中をぐるぐる走り回っている。
 あたしは一喝して呼吸を整えさせた後、状況を説明するように言った。
『恐ろしく強い人間の魔物使いがやってきて、俺たちじゃまるで相手にならないんです! とりあえず弱い奴らから姐さんのとこに避難するようにしてるんですが……』
 言うが早いか、何匹ものモンスターがあたしのねぐらに駆けこんでくる。ひどく怯えて、身を寄せ合っている。皆すがるような瞳でこちらを見つめて来る。
 安心しなさい。どんな奴が来ようとあなたたちには指一本触れさせない!
 あたしは後ろをかばうようにして部屋の入口を睨みつける。それに倣うようにして何匹かの戦闘要員があたしの横についた。

 どれほど待ったのだろう。其処から紫色の旅装をした黒髪の男が現れた。その手に下げるのはモンスターの血で染まった大剣。その姿からはまるで想像もつかないような、穏やかな笑顔を浮かべている。
「ああ、やっぱり……」
 男が何かを言いかけた瞬間、恐怖にかられたイエティとモーザが男に襲いかかった。しかし男の左右に控えていた二匹のスライムナイトによって一刀のもとに切り捨てられる。
 あたしはというと……まったく動けずにいた。恐怖に、ではない。何か大切なこと、そう、あたしの後ろのモンスターなんかより遙かに大切なことを、思い出しそうなのだ。
 男はじっとこちらを見つめる。あたしは知っている。この匂い、この声、このどこまでも吸い込まれていくような不思議な瞳。この男は……いえ、この方は……!
「久しぶりだね。ゲレゲレ」
 ゴシュジンサマッ!
 気付けばアタシは彼に飛びついていた。アタシに殺意がないことを見てとったのか、控えているスライムナイト達も斬りかかっては来なかった。
 アタシはそのまま彼にすり寄るとゴロゴロとのどを鳴らしてめいいっぱいじゃれつく。
「思い出してくれたんだね。ゲレゲレ」
 そうだ。この方こそ昔アタシを助けてくれた。アタシのただ一人のゴシュジンサマだ。こんな大切なこと、どうして忘れてたんだろう? ごめんなさい。ゴシュジンサマ。
 アタシは精一杯甘えた声を出してゴシュジンサマに許しを乞う。
「いい子いい子……ふふっ」
 ああんっ、ゴシュジンサマが撫でてくれてるぅ……はぁ…ん…とろけちゃいそう……ああ……ゴシュジンサマの匂い……子宮がうずくよう……

『姐さん!? 一体何やってるんですか!?』
「また一緒に戦ってくれるね? ゲレゲレ」
 また……ゴシュジンサマと一緒に……ッ! ああ! 断る理由なんてありません!
『姐さん! キラーパンサーの姐さん!』
 全く、さっきから五月蠅いやつ。せっかくゴシュジンサマとの再会を悦んでたって言うのに、大なしじゃない! キラーパンサー? 誰のことを言ってるのよ?
『姐さん?』
 アタシの名前はゲレゲレ。ゴシュジンサマの忠実なペットよ。薄汚いモンスターごときに気安く呼ばれる筋合いはないわ!
『姐さんッ!?』
「ゲレゲレ、まかせたよ」
 はぁい! ゴシュジンサマ! 見ててくださいね。今すぐこのうっとおしい連中を皆殺しにしますから。さぁ、あなたたち。覚悟しなさい!

戦いにそんなに時間はかからなかった。もともとアタシの力をあてにして生きていたようなクズどもだ。途中からはスライムナイト達も参戦してくれて、あっという間に決着はついた。
「良くやったね。ゲレゲレ」
 ゴシュジンサマがほめてくれる。ああん、嬉しい。もっともっと殺したいな。そしたらゴシュジンサマももっと褒めてくれるよね?
 あ、そうだ。ゴシュジンサマにあの剣を渡さないと。アタシはゴシュジンサマのお父様の残した剣のことを思い出した。そして部屋の奥へそれを取りに行こうとして、一匹のビッグアイに気がついた。気が弱いので、なにくれとなく目を掛けていた妹のような存在だった。部屋の隅でがたがたと震えて、恐ろしいものでも見るようにこちらを覗いている。
 そんなとこへ隠れてたなんて、ちゃんと殺しておかなきゃ。そう思ったアタシが近づくのを制して、ゴシュジンサマがビッグアイに歩み寄った。ビッグアイはびくりと体を震わせて縮こまる。ゴシュジンサマは聞くものをうっとりとさせるような優しい声で言った。
「ごめんね。僕はゲレゲレに会いに来ただけだったんだけど、結果的に君たちの住処を荒らすことになっちゃったね」
 ビッグアイは恐る恐る顔をあげて、そこで固まる。まるで石にでもなったかのように、ただひたすらゴシュジンサマの瞳に見入っている。
「僕を怨んでいるかい?」
 ゴシュジンサマの問いにビッグアイはフルフルと首を振った。
「どうして? 僕は君の仲間を殺したんだよ?」
『貴方に……比べれば……とるに足らないこと……』
 ビッグアイはやはり首を振った後、恍惚とした表情でゴシュジンサマを見つめる。
「そう……。じゃあ、僕の仲間になる?」
『良いんですか!?』
 ビッグアイは激しく頷いて、歓喜に満ちた声を上げる。
「肯定ととっていいのかな? そう……だな。じゃあ、君の名前はガンドフにしよう」
『ああ……素敵……』
 相好を崩し、舌を犬のように突き出してビッグアイは荒い息をもらす。
 ふふふ、よかったわね?
『あ……姐さん』
 ゲレゲレよ。
『あ……はい。ありがとうございました。ゲレゲレ姐さん。貴方があいつらを皆殺しにしてくれたおかげで、私もあの方の仲間に加えていただけます』
 ふふふ、いいのよ。あたしも貴方が仲間になってうれしいわ。ビッグアイ。
『ビッグアイなんて呼ばないでください。私にもあの方から頂いたガンドフって言う名前があるんです』
 そうね。ごめんなさい。ガンドフ。これからもゴシュジンサマのお役にたてるように一緒に頑張りましょう。
『はい。ああ、私たちは一生あの方のしもべなんですね! なんて嬉しいんだろう!』
 ふふ、一生じゃあないわ。私たちは未来永劫ゴシュジンサマのしもべなのよ。
『未来……永劫……あああああっ! わ、わたし、しあわせですぅぅ!』
 ガンドフは歓喜のあまり涎を垂らして体をがくがくと震わせている。アタシはいつか見た幸せな夢の続き、ゴシュジンサマと一緒に魔物を殺して遊び回ることができる今の喜びをかみしめた。

エンド

いかがでしたでしょうか?
モンスター側の視点で、まものつかいの主人公に従うことになる思考の変化をしっかりと書いてあったと思います。
私個人としては面白い作品だったと思いました。
kokusu様、あらためまして投稿ありがとうございました。
明日はもう一本のSSを公開いたしますね。
  1. 2009/02/18(水) 21:12:54|
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投稿作品をいただきました

当ブログに先日掲載いたしました「奪われたフローラ」は、おかげさまで皆様にご好評をいただくことができました。

今回この「奪われたフローラ」に影響を受けられたというkokusu様というお方から、ご自身もドラクエに関するSSを書きましたというメールをいただき、SS二編をお送りいただきました。

拝見させていただきましたところ、実に楽しいSSでしたので、当ブログで公開してもよろしいかどうかお尋ねしたところ、快く公開の承諾をいただきました。
そこで今回今日明日で一本明後日に二本目とと三日連続でkokusu様のSSを公開させていただきます。

今日は第一弾としまして、モンスターであるキラーパンサーをメインにすえたSSを公開いたします。
視点のユニークさをお楽しみくださいませ。

それではどうぞ。


1、
 あたしはベビーパンサー。魔界の殺し屋と恐れられるキラーパンサーの子供なの。
「ほら! もっと鳴いてみろ!」
 人間の子供があたしを蹴りつける。お腹がすいて倒れていた私を捕まえてきて、猫か何かだと思っているのか、いじめて遊んでいる。子供だから食べるまでもないし大目に見てあげようかと思ったけど、そろそろあたしも限界。殺して、食べさせてもらうことにする。

「ちょっと、何してるのよ? ネコちゃんかわいそうでしょう!」
 あたしがいじめっ子ののど元へかみつこうとしたその時、声が聞こえてきた。目をやると金髪の女の子とそれに連れられるように黒髪の男の子がやってきた。女の子もあたしを猫だと思ってるみたい。いじめっ子に喰ってかかってる。
 お肉も柔らかそうだしどうせ食べるならこの子にしようかな。そう思ってると隣の言い争いをよそに黒髪の男の子がこちらを覗き込んでいるのに気づく。目があったのをきっかけに男の子はしゃがみこんであたしに視線を合わせる。何だろう。不思議な瞳。まるで吸い込まれるような……あたしがあたしじゃなくなってしまうような……。

突然抱きかかえられる。あたしの目の前に柔らかい子供の首筋がさらけ出される。なんて不用心な。あたしがその気になればこんな子供ひと噛みで噛み殺せるのに。
男の子はあたしを抱きかかえたままにっこりと笑った。とくん、とあたしの心臓が鳴った気がした。何だろう? おなかの下のあたりが変な感じ……。鼻と鼻がくっつきそうな距離で見つめあう。ああ、駄目……吸い込まれていく……。あたしは……アタシハ……。

「ちょっと、ちゃんと聞いてたの?」
 女の子の声に男の子はアタシを降ろして振り返る。ちょっと残念。
「レヌール城にお化け退治に行くの。そしたらネコちゃん私たちにくれるって」
 アタシをモノみたいに扱わないでよ! ああでもこの男の子のモノにならなりたいな……。でもそれはないよね。助けを待っていじめられ続けるなんて嫌だもん。さあ、いじめっ子たちを食い殺して……
「絶対助けるから、いい子にして待っててね」
 はい。わかりました。いい子にして待ってます。
 アタシはゴロゴロとのどを鳴らして男の子に返事をする。この子の言うことには何だか逆らえないなぁ。なんでだろう? この子はただの人間……
「いい子いい子」
 あん! 撫でられた! 気持ちいいよう……あれ、なにかんがえてたっけ? アタシ。まあいいか、きっと大したことじゃないよね。

 お化け退治の準備をするために男の子たちが去っていく。ああ、さみしいよう。でも絶対助けるって言ってくれたもの。アタシ、信じていい子にして待ってるよ。いじめっ子たちもさっきの今でいじめる気はないみたい。もう暗くなってきたし、家に帰るみたいね。アタシはいじめっ子たちに連れられるがままに彼らの家に入った。晩御飯は皿に乗せられたキャベツだった。何考えてるんだろう。試しにかじってみるが変な味がしてとても食べられたものじゃない。うう、お肉食べたいなあ。
与えられた毛布は少し薄かったけど、全然寒くない。あの男の子のことを考えるだけで心も体もぽかぽかしてるもん。ああ、早く来てくれないかなぁ。

二日もたたないうちに男の子たちはお化けを退治して帰ってきた。そして約束通りいじめっ子たちからアタシを解放してくれた。嬉しい! アタシとの約束。ちゃんと守ってくれたんだ。
「そうだ! このネコちゃんの名前を決めないと」
 あたしが男の子にじゃれついていると不意に女の子がそんなことを言った。
「そうね……ボロンゴって言うのはどうかしら?」
 あ、かっこいい。アタシはこの名前が良いな。でも男の子は首を横に振った。残念。
「じゃあ、チロルって言うのはどうかしら?」
 ちょっとかわいすぎるな。アタシはボロンゴのほうがいいなぁ。男の子も首を横に振る。
「じゃあ、プックルって言うのはどうかしら?」
 これもかわいすぎる。もっと地獄の殺し屋にふさわしい名前がいいなあ。これにも男の子は首を振る。
「もう、まじめに考える気あるの? じゃあ……ゲレゲレっていうのはどう?」
 うわ……確かに地獄の殺し屋にはふさわしいかもしれないけど……これは流石に……
「それがいい」
 えっ、うそ!? 
「そう、じゃあこの子の名前はゲレゲレね」
 い、いやよそんな名前! アタシは助けを求めるように男の子を見上げる。ゲレゲレなんて……
「よろしくね、ゲレゲレ!」
 なんて素敵な名前なんだろう! うれしいな。今日からアタシはゲレゲレなんだ。考えてみたらあたしも一応メスなんだからボロンゴなんて勇ましい名前似合わないよね。それに比べて、ゲレゲレ……なんて良い響きなんだろう!
「行こ。 ゲレゲレ!」
 はい! 
「あ、そうだ。私の家って宿屋だから動物飼っちゃいけないんだよね。だからゲレゲレのご主人さまは君がなってね」
 ゴシュジンサマ……? なんだろう? 不思議な響き……でもこの男の子にはふさわしい気がするな。
「うん。改めてよろしくね。ゲレゲレ」
 はい! ゴシュジンサマ!

 ゴシュジンサマのお父さんの風邪もなおって、ゴシュジンサマの村へ帰る道すがら、ベビーパンサーの群れに出くわした。アタシの兄弟姉妹たちだ! みんな人間と一緒にいるアタシを怪訝そうに見つめている。どうしよう、いくらゴシュジンサマの為でも家族と戦うなんてできないよう。アタシはゴシュジンサマを見つめた。
「ゲレゲレ……」
 ゴシュジンサマ……お願い……
「ガンガン行こうぜ!」
 はぁい! わかりました! ガンガンいきます!
 ゴシュジンサマの命令にアタシは喜んで一匹のベビーパンサーに飛びかかった。群れの中ではお兄さんのような存在で、いつもアタシに優しくしてくれていた。でもそんなことはどうでもいいよね。ゴシュジンサマの命令のほうが大切だもん。
 飛びかかってきたアタシに驚いているうちに彼はあっさりとのどを引きちぎられて死んじゃった。何だ、いつも大人ぶってる癖にこの程度か。でも爪ごたえは良かったな。死に顔も間抜けでおかしかったし、ベビーパンサー殺すのってこんなに楽しいんだ。うふふふふふ……。
 信じられない。と言ったような表情のベビーパンサーの群れに向かって、アタシはさっきの爪の感じを思い出しながら襲いかかった。

 無事村につくと、太っちょの人間がゴシュジンサマたちを出迎えた。そのままゴシュジンサマの家で早めの夕食をすることになった。食卓に次々とゴシュジンサマのためのご飯が並べられていく中、太っちょの人間が困ったように言う。
「ベビーパンサーというのは何をあげればいいんですかねぇ? 魚なら川でとれたのがあるんですけど……」
 魚……かぁ、嫌いじゃないけど。やっぱり人間の肉が一番だよね。かぶりついた瞬間に口中に新鮮な血が……
「ゲレゲレはね。キャベツを食べるんだよ」
 突然ゴシュジンサマがとんでもないことを言い出した。どうやらいじめっ子たちからアタシが何を食べたかきいたらしい。
「キャベツ……ですか? 変ってるんですねぇ」
 太っちょの人間はさして疑問に思うこともなくキャベツの用意をし始めた。ほどなくしてお皿いっぱいに盛られたキャベツがアタシの前におかれた。冗談じゃない。キャベツなんて大嫌いなのに。
「おなか減ってるでしょ。たくさん食べてね」
ゴシュジンサマはアタシの前で目をキラキラさせている。うう、ゴシュジンサマの期待を裏切るわけにはいかないし……。
 アタシはいやいやキャベツの山を口にした。かみしめた瞬間に青臭いにおいが口いっぱいに広がって……。
「美味しいでしょ」
 とっても美味しい。なにこれ!? なんでこんなに美味しいの? アタシは皿に口を突っ込んでがつがつとキャベツを食べ始める。
「良かった。ゲレゲレはキャベツ大好きなんだね」
 はい! アタシキャベツだぁいすき! もうキャベツ以外の餌なんて考えられないよ。なんで今までお肉なんて食べてたんだろう? 馬っ鹿みたい!
 アタシはあっと言う間にキャベツを食べ終わった。お腹がいっぱいになったアタシは同じくご飯を食べ終えたゴシュジンサマと一緒に暖炉の前でうとうととする。
 うふふふふ、今日は嬉しいことがいっぱいあったなあ。モンスターを殺す楽しさもキャベツの美味しさも、みんなゴシュジンサマが教えてくれたんだ。しあわせだなぁ。明日もゴシュジンサマと一緒にたくさんモンスター殺して遊びたいなぁ……。


続く
  1. 2009/02/17(火) 21:15:44|
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神代☆焔様からも

いつも当ブログにコメントをくださり、楽しいSSも投稿してくださっている神代☆焔様より、新たにSSをいただきました。
こうして多くの方から投稿作品をいただけるのは、すごくうれしいことですね。
神代☆焔様、ありがとうございます。

今回の作品は、以前投稿してくださいました「改造くノ一の襲来」に登場したキャラ、神巫咲耶に関するもので、彼女の秘密に迫ったものです。

なかなか壮大な背景を持っているようですので、SF好きな私には結構ツボでした。
ぜひぜひ皆様も楽しんでいただければと思います。

それではどうぞ。


Baster Regend EX
【兄貴はつらいよ】


 1

俺は、神巫和也。
神巫財閥と言えば、ちったあ知られた金持ちの御曹司なんだが、親父は電子工学にのめり込み、お袋は考古学にのめり込んでしまっているため、会長をやってる爺さんの最後の希望とかで、帝王学や経営学とかを小さい頃から叩き込まれたエリートのはずだったんだ。
高校の頃、お袋が連れて来た女の子。
それが、咲耶だった。
その日、突然に俺に双子の妹が居ることになってしまったのだ。

咲耶は、実は人間ではなく、地上から30万km離れたところに位置する、ステルス衛星の生体端末である。
しかも、この衛星、50億年前から存在しているらしいのだ。
また、咲耶自身も50億年前の地層に埋まっていた遺跡から発掘され、彼女の覚醒と共に、三体の生体ユニットが目覚めたらしい。

この遺跡、学会に発表すれば地球文明がひっくり返るような発見なのだが、ここに親父が絡んだために、物事がややこしくなってしまった。
親父は、遺跡の技術の一部を神巫財閥のパテントとして発表し、遺跡の真上に自分専用の研究施設を建ててしまったのだ。

これに便乗した爺さんが、研究施設を中心に学園都市を築いて成功してしまい、今、俺達が住む神楽町が存在している。

問題の衛星には、咲耶が大破したときのスペアボディと、記憶システムの他に、咲耶が本気の本気で戦うときのために、多数の武装システムを内臓した男性型ボディもあったりする。


 2

いきなり妹が出来てしまったことを、俺は結構簡単に受け入れた。
女性の体に慣れていないそうで、最初の頃はかなりフラフラだったんだが、天然系の性格が何となく好きになれたし、笑うと結構可愛かったりしたのだ。

それでも、人間の脳と同じサイズながら、量子コンピュータで構成された頭脳は、タマにシャレにならない行動を取らせたりした。

自分自身に起こり得る未来の可能性を常に計算していて、92%くらいの確率で危険を予測回避したり、ステルス衛星からの偏光レーザーを使って、8%の不確定要素を排除したりするのだ。
一番シャレになってないのが、あらゆる電子機器を操る能力だ。
こんな、メカニカルな性能を制御しているのが、ステルス衛星に自ら本体を封じ込めた破壊神だと聞かされたときは本気で笑ったが、信じなきゃいけなくなった理由は、彼女をサポートする三体の生体ユニットにある。

先ず、筆頭に挙げるのは、三体のリーダー格にしてサキュバスのオリジナルを宿す『リリム』だ。
支援系の魔術を使いこなす彼女は、ひたすら淫乱な性格を我慢すれば、魅了や洗脳などの特殊能力も含めて、かなり頼りになる。
悪知恵にも長けているので参謀的な意味から、リーダー格になっている。

次に、万物の癒し手にして大天使のオリジナルを宿す『イリア』も捨て難い。
三人の中で、唯一、戦闘向きではないんだが、彼女の癒す対象は生物に限らないからだ。
確か大天使の名前は……ガブリヨリだったかな?
盲目なのだが、それを感じさせない優雅な身のこなしと、優しい性格が素敵な女性だ。

最後は、召喚魔術の使い手にして寡黙な魔王を宿す、『キララ』である。
こいつは、見た目が怖いのだが、義理人情に脆い性格をしているのが、最大の欠点で戦闘時には狼女と化して戦う。
魔王にしては、融通が利かないのも欠点なんだが、料理が上手いので許せる範疇だ。

流石にキララの変身を見せられたら、信じるしかないだろう。

そう言えば、最近、抜け忍の女の子が咲耶に惚れて入って来た。


 3

高瀬晴明とは、中学のころからの腐れ縁だ。
こいつの、事件巻き込まれ体質は、ある意味、俺も被害者になったこともあるだけに、咲耶が来てからは、かなり守ってやれていると思っている。

こいつは、M系人間にして襲われ願望が強い反面、多少頑固な部分も持ち合わせているため、かなり思い込みが激しい一面もある。
一時期、咲耶が自分に惚れているとか、けしからん妄想に浸っていたころもあったが、そこは兄として、散々しばき倒して矯正している。
しかも、三大成人病──アニメマニア・メカフェチ・特撮ヲタク──持ちなのだ。
特に、特撮ヲタクは、最近悪化して女戦闘員萌えにまで発展している。
最近、思うのだが、こいつがMMSに参加してくれたら、ただの心霊現象も、大事件に発展して、今以上に儲かるのではないだろうかと、まじに時々考えたりする。

もう一人の腐れ縁が美原一八である。
大学で知り合った美原呪神道宗家の異端児で、おとなしく家を継いでりゃあ、巫女さんに囲まれる生活が出来たものを、何故か魔術士の道へ走ってしまった。
既存の魔術を大きく凌駕した、物理干渉魔術を得意とする。
キララの正体を看破する辺りが、只者ではないようだが、はっきり言って、ただのバカである。

今のところ、咲耶の正体を把握しているのは、爺さんを除いた俺の家族と、東雲学園の魔神、そして咲耶とマトモに戦って生き延びた連中だけである。
そー言えば、夜魅も完全とは言えないまでも、知ってたな。


 4

MMSとは、美原と組んで心霊現象を解決するだけの、面白倶楽部的なものだったのだが、咲耶達が入ることによって、警察が介入出来ない事件までもが処理出来るようになり、闇の組織の暗躍とか、普通なら絶対に関わらない事件に関わるようになってしまっているのが現状である。

東雲学園の事件なんか、一番の事例で、普通なら保健所が調査に入って終わりだったはずなのに、被害者の両親が金持ちだったばかりに、咲耶に長期潜入調査依頼をしてしまい、異世界の魔神や吸血姫の存在まで判明してしまった。
この件は、咲耶が問題無しと報告しているので、俺も依頼人には偶発的な集団貧血と報告している。
ただし、長期調査として依頼されてしまっているので、咲耶が卒業まで学園に居なければならないため、学生寮と事務所を往復しなければならなくなっている。

抜け忍の女の子の事例も、咲耶宛の依頼だった。

日本を裏から守護して来た忍者組織の中で、謀叛が起きたため、咲耶に組織の壊滅を依頼してきたのだ。
依頼人は、組織の元頭領ですでに暗殺されている。
抜け忍の女の子は、依頼人の娘で、現頭領の支配を受ける前に、咲耶を頼って逃げて来たらしい。
現頭領と側近の忍者達は、今も潜伏中である。


 5

言っておくがMMSは、決して正義の味方ではない。
依頼された仕事は、メンバー全員で話し合って受けるかどうかを決める。
個人指名で依頼を受けたときは、指名された本人が面白いと感じるかどうかで、決まっているが、最終決断は俺が決める。
忍者組織の件にしても、下手をしたら、人殺しを咲耶にさせることになるのだから、慎重にならなければならない。
人間ではない咲耶が、人殺しをしても問題は無いとか思ってる奴は、俺がはっ倒す。
咲耶が、人殺しを当たり前に感じるようになってしまったら、世界の破壊にも躊躇しなくなるじゃないか。
そうなったら、俺がそこそこに良いと感じてる仲間達も居なくなってしまうし、大好きな趣味の金庫の札束数えも出来なくなるんだぞっ!
咲耶が人間を好きと言える環境を守るのも、兄の使命なんだと、俺は思ってるんだッッ!!


 6

力んでしまったが、最近、咲耶を制御している破壊神の能力が解明されつつあるんだが、まじでヤバいんだよ。
こいつが、実体化しただけで銀河系が消滅するほどデカいと、お袋から聞いた瞬間、本気で気が遠くなったね。
俺は、国が滅ぶとか、惑星単位での世界が消滅するとかのレベルで考えていたんだが、宇宙単位で本当に危ないと理解したときは、しばらく、頭が考えることを拒絶してたんだから。

東雲学園の魔神が咲耶を支配出来なかった理由、解ってもらえたかな?
神としての規模が違い過ぎるからなんだ。

良く考えたら判るはずなんだよ。
ステルス衛星は、恒星間戦闘を目的にした装備を持ってるんだから。
主砲は、最大射程を無限大とする、リーピング・プレッシャーカノン。
どんな武器かってぇと、目標内部にいきなりブラックホールを複数発生させる、かなり凶悪な武装だったと思う。

地球上で使える対地攻撃に限れば、無段階に威力を変更可能な偏光レーザー砲が216門。
口径1メートルの荷電粒子砲が25門。
咲耶は、その気になれば、右目で見える全ての敵に照準を合わせることが出来るんだ。
彼女の右目が真紅に輝いているときには、衛星からの直下映像が見えているときで、普段は彼女を中心に、0.25kmを見せている。
当然ながら、各種索敵映像に切り替え可能なので、咲耶が本気になったら、日本中何処に居ても確実に発見されてしまうだろう。

尤も、あいつも自分がいかに卑怯な能力を持っているかの自覚があるようなので、かなり怒ったとき以外は標準設定を切り替えたりはしないようである。


 7

事務所で夜魅達と談笑している昨夜をみる限りは、破壊神のかけらも感じられない。

三体の使い魔は、本来ならばこの世界の法則である、月の満ち欠けによる魔力の制限を受けねばならないのだが、宇宙的規模の破壊神に仕えることによって、世界の法則から逸脱して行動することがが可能だ。
咲耶とは、それだけ強力な神なのである。

咲耶の能力に、特殊な属性を持った装甲がある。
普段は部分的に装着しているが、これは本来は全身装備なのを簡略化しているだけだ。
装備の種類は多様を極め、地・水・火・風・光・闇・聖・邪、破壊神が体内封印している邪神を含めて、彼女に仕える者達の属性を自在に複合して使えるらしいが、屋内では装着出来ない欠点もある。
これは、衛星の絡みの問題なんだと、俺は思っている。
そうでなくても、圧倒的に強いんだから、欠点の一つや二つくらい可愛いものだとは思わないか?
ちなみに、破壊神の属性は光らしい。

 *

俺は、咲耶の笑顔を見ていた。

顔は童顔で高校生の頃から変わっていないが、生体端末なので、体つきは変化している。
昔は細やかだった胸も、今ではCカップくらいに成長したし、身長も少し伸びている。

そりゃあ、スケベが売りのリリムや夜魅みたいな体つきではないものの、洋服の着こなしによっては、はっとするような大人の雰囲気を出しているときもある。

咲耶と付き合うと、どんなに生真面目な性格をしてても、気が付くと彼女のペースに乗せられてしまう。
東雲学園の魔神と吸血姫もその犠牲者だったりする。
吸血姫に至っては、咲耶のオモチャと化しているらしい……可哀想に。

調査が進んで、人間の手に負えない化け物だと解っても、俺は、咲耶の笑顔を守るためだったら、爺さんを相手にしても、一歩も退かないつもりだ。

俺は咲耶の兄にして、最初に彼女に惚れた男だから。


 完?


いかがでしたでしょうか。
よろしければ拍手やコメントなどをお寄せいただければと思います。
神代☆焔様、あらためて投稿ありがとうございました。
またよろしくお願いいたします。

それではまた。
  1. 2009/01/19(月) 20:45:27|
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投稿をいただきました

いつも2ch及び当ブログのリンク先である「いじはちの熱血最強」様でSSを公開なさっておられるいじはち様より投稿作品をいただきました。

題して「今さらで遅すぎな福引」
年末の大売出しなどで恒例のあの福引がなぜ今さら・・・という作品で、その福引に仕組まれた悪の組織の策略が発動します。

どうかいじはち様の素敵なSSをお楽しみくださいませ。
それではどうぞ。


「今さらで遅すぎな福引」

もう正月は過ぎたというのに何故か近くの百貨店で福引がやっていた。
学生の私は「なんで今更…」と思ってはいたのだが、ちょうど買い物が終わったところだったので私は福引に挑戦した。
福引でおなじみのアレを回しながら私は思う。 5000円で抽選券一枚はアレなのではと…
ま、お母さんに頼まれていた物の他に、自分が買う予定だった物があったので、抽選券一枚は手に入ったのでダイジョーブ。

ちっちゃな音と共に白い玉が落ちる。 それから一秒後、担当の人がベルを鳴らした。
「ハイ、残念賞です」
ハイハイ、どうせティッシュとかですよね… カイロの方がいいけど…
「残念賞は福袋でーす」
なんですと!?

「しかもなんかちょっと重いし、ちょっと大きいし…」
とかぼやきながら私は家路に到着。 ちなみに私の家は普通の家です。マンションではないですハイ
そして郵便受に手を伸ばして中を確認し、何もないので家に入る。 それからお母さんに頼まれた物をリビングに置いき、2階の自分の部屋へ。
余談ですがお母さんは中々の美人さんですよ。 だからどうしたと言われるでしょうが…

2階のマイルーム。
女の子らしく黒兎やツキノワグマのぬいぐるみに、かわいいカーペットが置いてるんですよ。 ちゃんと小遣いで買ったものですよ。
ちなみに今日買ってきたのはCDと髪留めだったり。
それはさておき、私は福袋の中身を確認するため紙袋を開封する。
すると中身は黒黒黒の黒布の山。 一応マフラーっぽい赤いのがあるが… 売れ残りか?
うーむ…やっぱり残念賞だからか……
「ん…」
何だこの黒い目覚まし時計、タカラマニアの友人が前見せてくれた『変身サイボーグ』の指令マシンにうりふたつのような…
まあいいや、ちょうど目覚ましが欲しかった頃だったからこれは好都合だわさ。
まずは時間を合わせないとなー♪ って、その前に電池入れないとね。
でも電池を入れる所はないなー… もしかしていわゆるリチウムイオンバッテリーとか太陽電池か?
とりあえず時間を合わせてと………


「よし! 後はスイッチスイッチ」
と呟いて私は指令マシン型黒目覚まし時計のスイッチらしきものを入れる。
するといきなり目覚ましから変な音が鳴り始めた。 ちょ、ちょっとぉ!鳴らないようにしてるのに何でー

でも……この音を聞いてると………すごく心地いい…なんでだろう……わからない…………
この音…いや、声が…私に指令をだして… 福袋の中身を全て出せ…ハイ…かしこまりました……


私は声に従うまま福袋の中のものを全て取り出す。
福袋の中身は黒いレオタードに網タイツ、黒いブーツと長手袋に真っ赤なスカーフ。
ふふ…とても豪華だなぁ…… これは全部私のものと思うとゾクゾクする。
紙袋の中身を全て出し終えたら、あの目覚ましから次の指令を送る小さな音が鳴った。
今着ている服を全て脱いで福袋のスーツを着るんですね? かしこまりました。

命令されるがまま、私はまずタイツを穿く。 タイツは少し窮屈で、私の下半身をキュウッキュウッと締め付ける。
ちょっとキツイけど、この穿き心地がたまらない… いや、この窮屈感が私に何かをくれている。
気持ちよさをくれている…


次にレオタード。 これを着た瞬間、私の体がキュウっと熱くなった。
ぽかぽかした熱さではない、ゾクゾクとする熱さだ。
この感覚は知っている。 自慰をする時に近い感覚だ。
そしてタイツと似て非なる窮屈感が私の中の何かを刺激する。
ふふ…キツイ……でも、これが刺激的……
不思議な質感に満ちた手袋とブーツをはめ終えると、私は鏡を覗いた。


これが…今の私……
「綺麗で…美しい……」
はっ、今何て…… 大した装飾のないスーツとかを纏った自分が美しい?
タイツとレオタードを着て、長い手袋とロングブーツを纏った自分が綺麗?
真っ黒と言っても過言じゃない姿が……綺麗で…美しい……
いや、美しいなんてものじゃない。 この姿は偉大で素晴らしいと思えてしまう…
福引やって良かったかもしれない……… だって、こんな服を着れたのだから…

そして私は意を決して、最後のスカーフを腰に巻く。
すると、目覚ましから音が鳴った。 新たなる指令を与える小さな音…いや、戦闘員しか聞こえない特殊音波。
さっきはこの音がちょっと分からなかったけど、今はよく分かる。
『おめでとう、君は我が組織の戦闘員となった しかし、今の姿では戦闘員として完全ではない、いわば『半戦闘員』
今日の夜、福引を行った百貨店に迎えが来て、君を完全な戦闘員にするだろう
それでは、戦闘員として最初の命令を伝えよう 誰にも気付かれずに百貨店に11時までに到着せよ
これが最初の任務だが気を抜くなよ』
最初の命令は結構簡単だな…と私は思った。 そして説明が全て終わり、私がすべき事が頭の中に浮かんだ。
「イーッ!!」
私は目覚ましに向かい、敬礼をとるような体勢になり、右手を高く挙げた。
イーッ!!という奇声が私の心を満たす。 奇声を上げた後、目覚まし…いや、指令マシンから発する特殊音波が消えた。
「それにしてもどうやって誰にも気付かずにしよう… うーん」
私は戦闘員の姿のまま、任務を果たすためにどうするかを考えた。


そしてあれこれ考えた後…
私は戦闘員服の上に普段着を着て誤魔化し、家族に「友達の家にお泊りに行ってくる」と言って百貨店に向かった。
実は私の友人の一人も、福引で戦闘員服を入手して半戦闘員となったとの事。
とりあえず私と友人は一緒に百貨店に向かった訳だ。 一人より二人がいいさ♪
そして、百貨店の指定の位置にたどり着いた時、組織のものらしき車が待っていた。
「ようこそ、我が組織へ」
と車の人は小さな声でそう言った。
私達はその車に乗ってどこかへ向かう… そしてたどり着いたのは組織の秘密アジトだった。

アジトに着いた私達は、他の戦闘員によって洗脳室という部屋に連れてこられ、私達はスーツのまま股間にペニスバンドのようなチューブを挿入される。
チューブを入れられる寸前、スーツの股間部がパクリと左右に分かれて正直驚いた。
「よくぞここまで来た 君はここでナノマシンを注入され、真の戦闘員となる ナノマシンは君の秘部に挿入されているチューブから供給される…」
スピーカーから先ほどとよく似た声が響く。 そして目の前には戦闘へと変わっていく自分が見れるようにと、首領様のお気遣いで設置された鏡がある。
私はそれを聞きながら、チューブが送る快楽に性的な声を上げていた。
「はっ…あっ……あん、あんっ!」
チューブから発するナノマシン入り精液が、私の子宮の中に五分に一回の間隔で放たれる。
精液が子宮に出されるたびに私は甘い声で鳴いた。 だって気持ちがいいから…
それ以外にもう一つある、自分の体が戦闘員として改造されていると思うとゾクゾクしているからだ。

ナノマシンが私の体に人間以上の能力、組織への忠誠や愛おしさを植えつけていく。
血液は組織製のナノブラッドへと変換され、その影響で私の皮膚は血の気を失ったような青色に変色した。
皮膚の変色に反比例して瞳の色が真っ赤に染まる。 タイツがよりフィットして肉体と融合していき、体の一部へと変化していった。
体中に力が沸き上がり、人間以上の快感が満ちていく。
それは組織の戦闘員としての快感。 本当の戦闘員となったからそれが分かる。

「おめでとう!君はこの時をもって、偉大なる我らが組織の戦闘員となった」
そう、私は偉大なるこの組織の戦闘員。 組織のお役に立てる事こそが私の生きがいであり、この上ない喜び。
私はその胸の内を明かすように組織に忠誠を誓った。 もちろん私と同時に真の戦闘員になった友人もそうだ。

「イーッ!! 首領様、私達を偉大なる組織の戦闘員にしていただき感謝します 私達は戦闘員としてこの組織に忠誠を誓います!!」



戦闘員として改造された翌日、私達は家に帰された。 家までは組織の人が車で送ってくれた。
私達戦闘員は、肌を含む肉体を改造される前に『変身』できる能力が備わっている。 戦闘員の状態から任意で『いつもの自分』に早変わりできるという便利な能力だ。
首領様いわく「戦闘員の真の役目は、人間社会の中に紛れ込んで任務をこなすこと」という。
もちろん一般人の100倍の戦闘力も備わっているので、警察やら不良やらに紛れても戦闘員となればすぐさま対応できるようにはなっている。
首領様から授けられた任務は『以前の姿に擬態して家に戻り、新しい指令が来るまで待機せよ』だった。

自分の部屋にたどり着いた私は戦闘員となった友人に電話しておしゃべりをしていた。
そんな中、指令マシンから命令の通信が…
『これから世界制服のためのミーティングを行う 今から現在使われていない百貨店の7階の倉庫に集合せよ』
「イーッ!! かしこまりました!」
通信が終わって、私は普段着のままで百貨店に向かった。 
我が偉大なる組織の戦闘員としての任務を果たすために。


福引を開催した百貨店が、組織のカモフラージュと資金作成のために作られた建築物だという事を私が知るのはまだ後の話だ。





いかがでしたでしょうか?
よろしければ拍手やコメントなどをいただければと思います。
いじはち様ありがとうございました。
またよろしくお願いいたします。
  1. 2009/01/18(日) 20:33:24|
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改造くノ一の襲来

いつも当ブログにコメントをお寄せくださいます神代☆焔様より、投稿作品が寄せられました。

実は昨年末にいただいておりましたのですが、なんやかやと今日まで掲載がのびのびになってしまっておりました。
神代☆焔様お赦しくださいませ。

内容は突然現れた謎の女性とそれに関わる女性たちに翻弄される主人公というもので、エロ素敵なお話になってます。
ぜひぜひお読みください。

それではどうぞ。


女の子が降って来た。

そんな妄想は山のようにしたけど、本当に降って来たらどうする?
僕は、持って帰ってしまったんだ。


Baster Regend 1
【改造くノ一の襲来】


 1

全身にピッタリしたタイツのようなものを着込んでいるけど、テレビで見るような安物の生地じゃない。
どうやって脱がそうと考えていたら、女の子が目を覚ました。

赤いマニキュアの塗られた爪が一気に伸びたかと思うと、彼女は僕の首に突き付けた。

「一般人か」

きつい感じだけど、可愛いと思ってしまう僕。

「あ、あのさ」

「聞かぬ方がいい。巻き込まれることになるぞ」

「な、何か食べる?」

「要らぬ」

「飲み物は?」

「構うな。傷が癒えたら去る」

ことごとく拒絶されまくってます。

部屋の隅に膝を抱えて座り込む黒ずくめの女の子。

僕は、毛布を取り出して、彼女に掛けてやった。

「構うなと……」

「だって、寒そうじゃないか」

「この程度鍛練で克服している」

僕は溜め息をして、今日の分の書き込みをパソコン入力して寝ることにした。
当然だけど、彼女のことは書いてない。


 2

中途半端な時間に目が覚めた。
小腹も空いたので、カップ麺を作っていた。
ひょっとしたら、彼女も食べるかも知れないと思い、彼女が休む茶の間へ入ると黒い影が揉み合っていた。
慌てて照明を着けると、彼女と同様の全身スーツの覆面女とが争っていた。

「逃げろ、一般人!」

僕に気づいた彼女が、声を掛けてくれたけど、訓練されていない一般人の悲しさで、僕は一瞬躊躇してしまった。

片手で彼女の首を絞めながら、もう片方の長く伸びた爪で彼女の影を突き刺した女は、ゆらりと立ち上がり、僕へ顔を向けた。

「傷の治りが遅いと思っていたら、まだ吸っていなかったのね」

どうやって見ているのか、目をも隠したのっぺらぼうの覆面の口元が笑っているのだと、それだけが理解出来た。

僕の手持ちは、出来たばかりのカップ麺とフォークだけ。
覆面女との間には、ちゃぶ台があるけど、武器にするには重過ぎた。

……と、彼女と覆面女との微妙な違いに気づいてしまう。
彼女の体は全身スーツに包まれているかのように、胸のラインは潰れているのだが、覆面女の方は黒いおっぱいが揺れているのだ。
股間の方は見事に縦に割れていた。
となると、顔も覆面では無くマジにのっぺらぼう!?

「気づいたかえ?」

黒いのっぺらぼうに深紅の唇が現れて言葉を紡いだ。

「忍びに顔は必要無いからね。それに──」

黒い女は、豊艶な胸を両手で揉み上げながら、その身を妖しくくねらせた。

「──完全な改造の施されたこの体は、老いもしなければ、苦痛を感じることもない」

黒い乳首が立ち上がるのを見ると同時に、僕のも立ち上がってしまった。

「我が姿を見た者は、死の歓喜を味わいながら果つる。主も味わいたかろ?」

黒い割れ目に指を這わせると、淫らな液体が滑りながら指を濡らした。


 3

巻き込まれ体質とゆーか、僕の場合どんなに注意していても、そんな意思とは関係無く事件に巻き込まれ易い運命のようだ。
今回は僕が悪いとか思っている君、女戦闘員萌えだったら、間違いなくお持ち帰りを選択しないかい?
警察に連れて行っても、ちょっと妙な格好してるハンデがあっても、美少女と僕ぢゃあ、間違いなく僕が変態扱いされちゃうに決まってる!

過去にも色々あったけど、間違い無くヤバいです。
相手が女戦闘員ですら、相当ヤバいのに、強化改造されたくノ一がすっぽんぽんで迫って来てるんだから。

──ぴんぽーん!

唐突にチャイムが鳴った。

ピクリと動きが止まる黒い女。
序でに僕も止まってしまった。
しかし、その隙を逃さない者が一人だけいた。
影を縫い止められて、動けない彼女の右手の爪が伸びて、黒い女の頭と心臓を貫いたのだ。

──ピポピポピポ……

秒速32連打のくそやっかましい押し方は、一階に事務所を構えるMMS──神巫ミステリーサーチャーズと読む──の主力、神巫咲耶しか居ない。

MMSとは、怪奇現象を専門に扱う探偵事務所なんだけど、神巫兄妹が経営している。
怪奇現象なんて、そんなにちょくちょく発生したりしないと思っているのは、僕だけなようで、強欲兄貴の和也の経営の下、歩く人間最終兵器の咲耶と、自称魔術士の美原一八、三人の美人事務員で、そこそこに儲かっているようだ。

そう言えば、咲耶は東雲学園に編入したらしいが、本気で二回も高校生やる気なのか、他人事ながら心配してしまう。

僕は高瀬晴明。
祖父が残してくれた、おんぼろマンションを経営して生きている、ちょっとヲタクな青年である。


 4

「あはは……術を使いおったわ!これで貴様の命も終わりよの」

胸と額を刺し貫かれた黒い女は、一通りの笑い声と共に、黒い影となって消滅した。

僕が彼女のところに寄ろうとすると、

「客人を先に迎えよ」

と、叱られた。
盛大に鳴り続けているチャイムに反応して、扉を開けるとやっぱり咲耶だった。

「兄貴からの伝言聞く?」

童顔をニッコリと笑みの形に変えて、罪の意識もなく聞いて来る。

「わーってるよ。助かったんだから、今月の部屋代無しにしてやるよ」

内緒の話、僕はこの笑顔にとても弱いんだ。

「凄いフェロモンね──媚薬の成分も混じってる」

勝手に上がって、勝手な感想を口にしている。

「何だよそれ」

「君の粗末な息子を元気にさせる雌の体臭かな」

僕の質問に律儀に答えながら、視線は茶の間の隅で苦しそうにしている女の子で止まった。

「それが噂の生体強化皮膜なんだ」

「解るのか?」

「完全に定着したら、脳までイッちゃう?」

「いや。頭領の精でなければ大丈夫だ」

「童貞の精だったら、何発で完全体になれるの?」

「三発もあれば充分だが、問題がある」

「教えて」

「私のものを開花させるためには、一度果てねばならぬ。それに、童貞など簡単に見つかるのか?」

「先ずは、体力の回復が先だね」

咲耶は、メタリックレッドの携帯を取り出した。

「イリア、上がって来なさい」

三人の事務員の一人で、盲目の癒し手の呼び名を持つサイキッカーだ。
咲耶は魔界の看護師とか失礼な呼び名を使っていたりする。

「お前は……?」

女の子が戸惑った表情で、咲耶を見上げていた。

「こいつは、MMSの神巫咲耶だよ」

僕は女の子に咲耶を紹介した。


 5

女の子は、驚きと喜びが混じったような複雑な表情をしていた。

「貴女が、破壊神──神巫咲耶殿なのか!」

「噂の深紅の髪は、事情があって真っ白になってるけどね」

「事情って?」

僕は、冷えて伸びきったカップ麺を食べながら尋ねてしまう。

「聞いてよ。リリムのバカが、病弱でダブったことにすればいいって、真っ白にしちゃったのよ」

両手の拳を胸に添えて、訴える咲耶だったが、どっちも目立つので、黙ってカップ麺をすすることにした。
ちなみに、リリムは三人のリーダー格だが、無茶苦茶スケベな女性だ。

「んで、この冴えない一般人が、童貞の高瀬晴明」

「ち、ちょっと待て。何でそんなコト解る!?」

「リリムは童貞しか襲いませんからね」

咲耶に代わって答えたのは、ようやく到着したイリアさんだった。

「回復のレベルは、三回くらい達ってもいいくらいなんだけど出来る?」

「かなり込み入った改造が為されているようですが、触媒となる生体物質があれば、かなり楽に出来ます」

女の子の体を数ヵ所触れた判断を下すイリアさんだった。

「彼女の影を捕らえている爪はどう?」

「いけます」

イリアさんは、影から爪を引き抜いた。
途端に楽な姿勢を取る女の子。

「晴ボンはこっち」

僕の襟を掴んで風呂場に連れて行く咲耶。

「その身を清めるの!」

「何で?」

「リリム避けの儀式を無料でするんだから、水ごりくらい我慢してやってよ」

「水道水で?」

「冷たけりゃいいのよ」


 6

「ちべてっ!」

黒い女に遭遇してから、立ちっ放しだったミニサイズ僕も縮こまってしまった。

「せめて、シャワーはお湯でやってもいいだろ?」

「水は体力を奪いますからね」

扉のところに居たのは、イリアさんだったりする。

「咲耶は?」

「夜魅さんの相手をしています」

流石はイリアさんだなぁと思ってしまった。
目が見えなくていつも瞳が閉じられてるけど、物腰が優しいので誰もが直ぐに心を開くのだ。
あっさりと名前が解っただけでも、それが分かる。

それにしても──

僕は、腰にバスタオルを巻いて風呂場から出た。

「相手って何?」

「見せてはいけないと言われたのですが、見た方が良いと思いますね」

「何を?」

「百聞は一見にしかずと言う諺もありますし」

イリアさんは、人差し指をピッと上げて微笑んだ。


 7

茶の間のドアを、ちょこっとだけ開くと、そこは僕の家とは思えないワンダーランド!!

うわっ!
うわ~っ!!
あ~んなことしてるぅ!
裸になった咲耶が夜魅さんと絡み合っていたりして、夜魅さんはあのスーツのまんまだけど、声を上げまいとする表情がまた、萌えまくりっしゅ!

「声出していいのに」

「……んっ、しかし晴明殿に……」

「聞かせちゃおうよ」

後ろから首筋に舌を這わせながら、乳首と同時に胸全体を揉み上げる咲耶の手の動きの淫らなことこの上なく、下唇を噛んで耐えようとする夜魅さんの表情が、徐々に崩壊していく。
どっちがくノ一か解らないような咲耶の責めに、夜魅さんの気丈な表情も、次第になまめかしく弛み始めていた。

──あれ?

最初に出会った頃は、全身タイツのように感じた彼女のスーツは、彼女の喜びの変化と共にそれ自体が彼女の皮膚のように変化していた。
その証拠に、彼女の胸が黒い女と同様に立体的に揺れ始めていた。

「快楽と共に同化するわけか」

汗一つかかずに、咲耶は夜魅さんを狂わせながらも、冷静に状況判断をする。
さらに、鮮やかな動作で夜魅さんを仰向けにして、下半身を互いにに合わせ胸同士も──まるで、咲耶の胸が夜魅さんの胸を愛撫しているかのように──、全身で快楽を塗り込むかのように動いていた。

──さわり。

「あい?」

僕の背後から、イリアさんの手が、抱きしめるように絡みついて来た。

「イリアさん、ちょっ」

背中に感じる胸はノーブラで、勃起した乳首の感触が彼女の興奮の度合いを示していた。
後ろから抱きつかれると、顔が見えないので、僕も彼女の顔をちょっとだけ妄想してしまう。
しきりに繰り返す吐息が耳をくすぐる。

「ま、また、立っ……」

腰に巻いたバスタオルが、テントを作りつつあった。
繊手が僕の乳首を摘まみ上げ、僕の体全体を這い回る。

「う……あっ!」

イキそうになったとこで、イリアさんの手がバスタオル越しに尿道を押さえてしまう。

「まだですよ」

──じゅぽん!

奇妙な音を聞いた。
女同士でしか出来ない必殺技を、咲耶が仕掛けた音だった。
互いのあそこを吸い付け合わせ、互いに真空に近い状態で一気に引き離したのである。

「ああぁっ……達きます」
虚空を掴み、全身を仰け反らせて夜魅さんが絶頂を迎えた。


 8

「今度は、絶頂直前まで達してもらうからね」

咲耶の前髪に隠れた右目が赤い輝きを放った。

「リリムとキララが撃ち洩らした敵が、到着する前に達してもらうから、少し荒っぽいわよ」

「てきを……うあひっ!」

再び体位を変えた咲耶は、後ろから夜魅さんを抱き寄せ、彼女の膝の内側から、自分の膝を割り込ませ、僕の前で大開脚させる姿勢を取らせた。
いつの間にか割れている、夜魅さんのそこは、既に大量の愛液を滴らせている。
その中に左手の中指をジワリと入らせ、親指で姫根を丁寧に揉み上げた。

「足腰立たない状態で、何をヌけたこと言ってるの?貴女は、早く完全体になることだけを頑張りなさい」

「……あはい……うくっ」

咲耶の中指が微妙に動いたようだが、劇的に反応する夜魅さん。

「甲賀に伝わる感処よ。リリムほどじゃないけど、私は、あらゆる忍びの秘法を蓄積している」

咲耶の左目が、白金の輝きを放ちつつ僕を見た。
正確には、僕の後ろのイリアさんを見ていた。

「イリア、童貞君のサポートをお願い」

「了解です」

咲耶が夜魅さんのそこを、左右に広げた瞬間、イリアさんが僕からバスタオルを奪い、抱え上げた瞬間に、僕と夜魅さんは繋がっていた。

「うぁ熱い……締まっ……絡みつくぅっ!」

「果てて……中に一緒に…我が主様ぁ」

極限まで我慢させられた僕は、夜魅さんの体内に大量に放つ。

咲耶は満足したかのように微笑むと、一点を睨んで珍しく真面目な表情で服を着て出て行った。


 9

残り二発分の出来事は、読者の皆さんが妄想して欲しい。
持て遊ばれた僕。

夜魅さんは、僕を抱きしめて余韻を楽しみながら、咲耶の言う完全体──あの黒い女と同じ姿──に変化したが、直ぐに素顔を現してくれた。

イリアさんが持って来た咲耶の私服を着て、今も僕の部屋に居る。

「我とまぐわった以上、お前は我の主となり、我以外の女と交わることは出来なくなった。それが、この改造された体の特性であり、我も主以外の精では生きられぬ体となったのだ」

耳許に囁く夜魅さんの声に警戒心は無く、僕もある程度は予想していたので、大して驚かなかった。

ある問題を除いたらの話である。

夜魅さんの完全体を完璧な状態で維持するためには、六時間毎に僕の精液を与えなければならないこと。
改造された肉体は、食事を必要としない代わりに、一回分の精液に含まれている成分で、六時間の連続活動を可能としているのだ。

夜魅さんの中は、先ず絡みつき、適度な締め付けと同時に内部そのものが動いて来る。
その上、くノ一の性戯が加わるのだから、僕に拒めるはずもなかった。

しばらくして、夜魅さんはMMSに就職した。
咲耶に弟子入りしたいほど心酔しての行為らしい。
向こうも、直接攻撃の戦力が欲しかったようなので、大した問題もなく仕事をさせているようだ。

夜魅さんが所属していた忍者組織は、リリムとキララさんの襲撃以後、沈黙を続けている。
残る手練れを咲耶が壊滅させたらしいが、生体改造のノウハウを何処から入手したのかは、未だ不明なままである。

そして、彼女の晩御飯。
咲耶に仕込まれた夜魅さんが、ショッカーさそり男の女戦闘員の姿で迫って来るぅ!
喉の奥で笑いながら無表情に……
晴明、堕ちまぁ~す!!


 完


いかがでしたでしょうか。
拍手感想などいただけますと神代☆焔様も大変うれしいと思いますので、よければお願いいたします。

それではまた。
  1. 2009/01/10(土) 20:35:30|
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妄想の侵略・完結編

先日「妄想の侵略」というSSを投稿していただきました神代☆焔様より、その完結編となるSSをお送りいただきました。

今回もココロがいろいろな姿になって楽しませてくれているようです。
何よりその恩恵にあずかっているのが、どうもどこぞのブログの管理人らしいです。(笑)
くぅ~、私もこのブログの管理人になりたーい。(笑)

というわけで、「妄想の侵略・完結編」お楽しみくださいませ。


僕は舞か……あ、いや、自分の趣味や妄想をブログに毎日書き記している者です。

【妄想の侵略・完結編】

ある日、唐突に一人の妖精がパソコン画面から、飛び出て来たかと思うと、あ~んな格好や、こ~んな姿をして毎晩僕の妄想を満足させてくれている。
昨夜は、淫魔化して絞り取ってくれた。

ナニをって?
まぁ、イロイロと(///)

その姿や性格は、日替りでコロコロと変わり、僕の妄想を尽きさせないように、かなり、気を遣ってくれている。
日昼は、様々な性格の冥土……ぢゃない、メイドになって、それは口では言えないほどに尽くしてくれる。
……食事を除けば 妖精さんに味覚って無いって、初めて理解した。1日に必要な栄養分だけを抽出して食べさせられるんだから。
「鉄分の澱粉カルシウム和えですぅ」 って、罪の無い笑顔で出されたら、そりゃ、喰うしかないだろう。
毎晩、お世話になってるんだから。

最近思うんだ。
飯が不味いのは罪じゃないって。
味があるだけ、まだマシなんだって。


さて、この妖精さん、どーゆーわけか、パソコンから5メートル以上離れて行動出来ない。
それから、本当の姿ではこちらの世界に長くは居られないようだ。
何故かは聞いてないけど、色々と複雑な事情があるんだろうと思うよ。

最近、ハードディスクが壊れたから、パソコン本体を持ち運び易いノートタイプに買い替えようと思っている。
妖精さんと街中を歩く欲求が出て来たからだ。
いや、もっと深刻な問題もあるんだけどね(汗)

僕が、艦船や戦車が好きなことは、君も知ってるだろう。
妖精さんが、変身したがっているんだけど、サイズの問題で断念して貰っているんだ。
1号戦車くらいだったら、辛うじて部屋に入るだろうけど、僕の大好きなドイツの猛獣だと、出現した瞬間に部屋が消し飛んぢゃう。
艦船だったら、大災害になっちゃうよ。
そういうわけで、ノートパソコンの購入を真剣に考えてるんだ。


そして、やって来ました、めくるめく妄想の夜。
いや、色んなコトされましたよ。
ウロコを呑まされてへびにされたり、食人植物の怪人になって、溶かされながらヌかれちゃったりetc
僕が変化するものは、変化することを体感しながらも、翌朝には元に戻ってるのが不思議なんだ。

そして、今夜は……
ドイツの女性軍人さんに尋問されてます。
む、鞭が痛ひ(涙)
銃身ぶった切りのワルサーP38だぁっ!
なんか、新しい世界を開発されてるようだなぁ。
黒のスカートから見える太ももが──革のブーツでぐりぐりとされるときに見えるスカートの中が──萌えまっしゅ!!
くノ一で迫られたときも、チラリズムで散々萌えましたが、やはり、全裸よりも何か着てた方が萌え方が違いますなぁ。

はっ!
親父モードのスイッチが入っていた(汗)

……と、ゆーわけで、今の僕は、人間の女性を必要としない生活を堪能しています。

もし、これが異世界からの侵略だったとしたら、地球人類は滅亡しちゃうかも知れません。



ああ~っ、鞭で叩いた後を舐めないでぇ~っ!


いかがでしたでしょうか。
ぜひぜひ感想や拍手をお寄せくださいませ。
作者様は皆様の一言の感想がとてもうれしいものなのです。
よろしくお願いいたします。

近々私のほうも、新作中編一本投下できると思います。
実に久しぶりのSSとなりますが、皆様のご期待に添えますかどうか。
楽しみにしていただければと思います。

それではまた。
  1. 2008/12/11(木) 20:40:50|
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投稿作品をいただきました

いつも当ブログにコメントをお寄せくださいます「神代☆焔」様より投稿作品をいただきました。
今回は「ブログ妖精ココロ」をモチーフにしたSSで、とても楽しめる作品になっております。
どうぞご覧くださいませ。


私の名前はココロですぅ。

私はブログ妖精界から、ブログの平和を守るためにやってきましたぁ。
ブログ妖精界ってのは、ブログを愛する人間たちの純粋な心が集まって出来ていますぅ。
私達ブログ妖精は、皆さんのパソコンから新たな愛を受け取って、ブログ妖精界に運び込む役目もあるんですぅ。
そうですぅ 私達は、ブログを立ち上げたパソコンの数より多いんですよぉ。

    「妄想の侵略」

ところが、最近、変わった愛の形が流行ってまして、帰って来る妖精の姿が怪物化しちゃってる事件が起きてますぅ。
私達は、パソコンユーザーの愛を受け取ると、その方の理想の姿や性格に変わっちゃう習性があるんですぅ。
私は事件の真相を調査するために、特別に強化されたココロですぅ。


途中、パソコンのデータを消す悪い妖怪のマーフィーさんを懲らしめた私は、とあるブログに到着しましたぁ。

  【舞方雅人(仮名)の趣味の世界】  

ブログ全体から愛を感じますぅ。
舞方雅人(仮名)さんの心を、私の愛で満たして──あれぇ? 先に来てるはずのココロちゃんが居ないんですぅ。
「前任のココロちゃぁん、交替要員ですぅ」 パソコンの中を飛び回っていると、……おや、誰かが舞方雅人(仮名)さんと会話してるですぅ。
前任のココロちゃんかなぁ?
「探したですぅ。 貴女が前任の……」
話し掛けて、気付いたですぅ。
ブログ妖精は、蛇の胴体なんか持ってません。
「妖怪さんですかぁ?」
私は、ブログ妖精界で最も固いとされる、キズナクリスタルの槍を構えたんですぅ。

「あたし? 前任のココロよ」
振り返ったその素顔は、ブログ妖精特有の童顔でしたがぁ、どことなく妖艶な雰囲気がありますぅ。
「なんで、こんな姿になったかですって?」
私は黙って頷きましたぁ。
「愛よ」
「あい?」
「雅人(仮名)様の偉大な愛の力でこうなったのよっ!!」
両腕を広げて、恍惚の表情で叫ぶ元ブログ妖精には、私のボケも届かないんですぅ。

「そうだ!」
しばらく浸っていた、元ブログ妖精が、たわわになった胸の前で手を叩くと、私をうっとりしたような目付きで見ていますぅ。
「貴女も雅人(仮名)様の愛を受け入れるのよ。 他の仲間達のようになれば、きっと理解出来るわ」
ふと、気付くと、私は蛇体のブログ妖精に囲まれていたんですぅ。
「蛇体を互いにに絡ませ合う悦びを知れば、決して後悔しないわ」

甘酸っぱい香りの体液でぬらぬらしている蛇体がぁ、私に絡み付こうとしたそのときですぅ。
「騙されてはいけないわ」
凛とした高音質の声が、私に投げ掛けられましたぁ。
「その者達は、雅人(仮名)様の妄想を吸って変化したのよ」
そう言って、その声の主は私を蛇体の群れから助け出してくれたのですぅ。
「……え~とぉ」
頭痛が激しく痛いですぅ。
だってぇ その姿は青い体と、胸に黄色と黒のぐりぐり模様ですぅ。
ダメ押しに、腰に淡い黄色のサッシュですぅ。


どうやら、最初に私が感じた舞方雅人(仮名)さんの[愛]は、異形女性に対しての強大かつ純粋な妄想だったようですぅ。
それにしてもぉ
「何で、こんなに異形化したココロちゃんが居るんですかぁ?」
「貴女、何にも知らないのね」
蜂女化した妖精さんが、呆れたような口調で言いましたぁ。
「ここは、強大な妄想を抱く人間が集まる場所でもあるの。 そんな複数の強大な妄想を多く取り込めるんなら、ブログ妖精界に戻らずにここに居続けた方がいいに決まってるでしょう」
「でもでもでもぉ、そんなに妄想を取り込んでどうするんですぅ?」
蜂妖精は、深い溜め息を一つつきましたぁ。

「いい? 普通のココロは、一人の御主人様の愛しか受け入れられないのは、知ってるわよね?」
「知ってますぅ」
「でもね、妄想だとより多くの人間から取り込めるだけでなく、取り込んだ人間のブログへ自在に行けるようになるのよ」
「ちょっと待って下さい。 人間の愛は神聖ですぅ」
一人の御主人様と愛し愛されるからこそ、ブログ妖精の愛は御主人様と固い絆で結ばれるのですぅ。
「純粋な妄想も強く願うと言う意味では、愛と同じ、いいえ、それ以上の力を秘めているわ」
「……愛以上?」
「だって、向こうの世界に実体を持てるようになれるんだもの」
私の顎がカクンと落ちる音が、私の頭の中で響きましたぁ。
だって、だってだって、ブログ妖精の永遠の夢が叶うかも知れない話がされているんですぅ。

「あ…… でもぉ、私達が姿を変えられるのって、一回きりじゃないですかぁ」
「そう。 だからなのよ。 みんなが仲間を欲しがっている理由は、誰か一人でも、向こう側で実体化出来たら、同じ姿の仲間を呼べちゃうのよ」
「……」
「どうしたの?」
私が黙ってしまったので、蜂妖精が不審に思ったのか問いかけてきましたぁ。
「それってぇ、成功したココロちゃん、居るんですかぁ?」
「意外と鋭いわね」
蜂妖精は軽く肩を竦めましたがぁ、口元は笑みの形に歪んでいますぅ。
「新しく配属されたココロがg-than(仮名)さんって人間の処で実体化に成功したそうよ。 お陰でこちら側の女戦闘員化したココロまで、向こう側へ行ってしまったわ」
新しく配属されたココロちゃんとゆーのはぁ、私のプロトタイプでぇ、これまでのココロちゃんの三倍以上の愛を蓄積出来ちゃうのですぅ。
蜂妖精の言葉に嘘は無いですぅ。
確かにぃ、g-than(仮名)さんとゆー方の処に配属されたココロちゃんは行方不明ですぅ。
「……で、どうする?」
いつの間にかぁ、周囲に蜂妖精が集まって来ていますぅ。
「蛇女のように強制はしたくないんだけど、違う妄想を取り込むつもりなら」
「命は無いとぉ?」
私は槍を構えましたぁ。


私は、事の次第をブログ妖精界に通信しました。
これ以上、私と同型のココロが生まれないようにしないと、雅人(仮名)様を一人占め出来ないでしょ。
「雅人(仮名)様、今夜は蛇女ですよ」
私だけの特別な能力。
ココロの姿をリセットすること。
私は、あのとき、異形化した全てのココロをリセットしたわ。
この能力を私自身に使えば、私は雅人(仮名)様の望む姿で愛を交わすことが出来るでしょ。
雅人(仮名)様のブログに残ったココロ達は、雅人(仮名)様が望めば呼び出すけれど、私の意思でブログに戻すことも出来るの。
そう 私のトリコになった雅人(仮名)様が望めばね。
「雅人(仮名)、このウロコを飲んで、お前も蛇になるのよ」

           完?


いかがでしたでしょうか?
ぜひぜひ感想や拍手をお寄せくださいませ。
作者にとって感想や拍手はとてもうれしいものなのです。
よろしくお願いいたします。

ちなみに作中にどこかで聞いたようなハンドルネームがでてきておりますが、あくまで仮名でありこの物語はフィクションでございます。

たぶん・・・
  1. 2008/12/02(火) 20:48:50|
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少女戦闘員(後編)

今日はショッカーゆう様の「少女戦闘員」の後編です。
楽しんでいただけると思います。


改造素体名
東ひろ子(13)中学二年生
改造組織名
秘密結社Yショッカー
理由 : 健康的な美少女、Yショッカーに目を付けられ誘拐されて少女戦闘員になる。


『 新たにYショッカーの一員に加わった。
二人の制服少女戦闘員 彩と麻衣!首領の元に出でよ!』

「「イーッ!」」

二人の少女戦闘員が現れ、直立不動で腕をクロスさせ敬礼する。
『さあ!栄光あるYショッカーに忠誠を誓うのだ!』

「「偉大なるYショッカーに身も心も捧げ忠誠を誓います。イーッ!」」

二人は、Yショッカーの首領に忠誠を誓った。

『うん宜しい!これから、十分に組織の為に働いてもらう!早速だが、お前たち二人は、ある少女を誘拐してもらう!この制服美少女をよく知っておるだろう?』壁のモニターに、一人の美少女の写真が、映し出された。
それを見る、少女戦闘員の二人。
「はい!私のクラスメイトの東ひろ子ですイーッ!」「はい!私の先輩の東ひろ子ですイーッ!」二人は、そう答えた。

『そうだ!お前たちがよく知っている、東ひろ子だ!お前たち二人は、この美少女を誘拐して、我々の仲間にするのだ!毎日、一緒に同じバスで通学している、お前たちなら、何の疑いもなく、この美少女を誘拐できる。この東ひろ子をうまく、誘き出しそこでうまく誘拐するのだ!』 「「イーッ!かしこまりました。必ずやこの東ひろ子を誘拐して参ります。」」二人は一緒に答える。

『よし!それでは、おい!アレを用意しろ!』首領が言うと、女幹部のヘドリアン仁美が、あるものを二人に手渡した。 それは、青いアイシャドーであった。

『これは、普通の化粧品ではない!我々が開発した。アイシャドータイプの洗脳薬なのだ!この薬を塗られた普通の人間は、直ぐ我々の僕になり命令に従うようになるのだ!このアイシャドーを東ひろ子の顔に塗り、僕にしたところを誘拐して来るのだ!』
「「イーッ!かしこまりました。必ずや東ひろ子を誘拐して参ります。イーッ!」」


その日の夕方、部活を終え一人で下校中の東ひろ子は終点でバスを降りる。彼女は、バレー部に所属する。学校1のエースアタッカーなのだ!今日の練習も厳しかった。まあ、今度の大会も近いから仕方ない。「頑張ろ!」彼女はそう自分に言い聞かせた。
そんな事を考えながら歩いて居ると、目の前に同じ制服を着た少女が、現れた。 後輩の高野麻衣だった。
ひろ子は、驚いて立ち止まる。
「あれ?貴女、一年生の麻衣ちゃんよね?どうしたの、青いアイシャドーなんか引いて?」少し笑みを見せて話しかける東ひろ子。
「先輩も引いてみませんか? 私より先輩は美人ですし、私先輩のお化粧した顔を見てみたいです。 私!綺麗なひろ子先輩を見てみたいです。お願いします。」そう言いながら頭を下げる。
後輩に、そんなにまで言われると少し照れるけど、嬉しく思うひろ子だった。

「そう?じゃあ、ちょっとお化粧遊びしちゃおかな。私だって綺麗に成りたいし、女の子は誰でもそうだし。じゃあ、塗って!綺麗にしてね!」
東ひろ子は、そう言ってしまった。

アイシャドーを麻衣に塗ってもらっている時、彩が偶然を装い現れた。

「ひろ子!綺麗だよもっと、化粧すれば綺麗になれるよ。」

その言葉に、東ひろ子は、化粧されて綺麗な美少女になる事に、誇りをもっていた。

゛もっと綺麗になりたい!"

東ひろ子は、そう思っていた。

麻衣が、ひろ子のお化粧が塗り終わると、ひろ子先輩!綺麗になりましたよ!そう東ひろ子に伝えた。

「そうありがとう!」

ひろ子は後輩の麻衣に伝えると、急に頭がおかしくなり始めた。

「うっ!何これ?頭がおかしくなる!アーッ!」 東ひろ子が頭を抱えて、その場でしゃがみ込んだ。
ひろ子は、何かに引っ張られそうになる自分を耐えていた、しかし、それも限界があった。 自分の心が何かに呑まれてしまった。
その光景を見て苦笑いする二人の少女戦闘員、そして彩が「東ひろ子!お前は選ばれたのだ!我々が行う改造手術を受けて、我々の仲間になるのだ!」

すると、それまで頭を抱えて苦しんでいた東ひろ子が、ゆっくり立ち上がり「はい、喜んで入団します。」
そう答えていた。

そして、彩と麻衣に連れられて、闇の中に消えて行った。

アジトに連行された、東ひろ子は、直ちに改造手術が開始された。


制服姿のまま、黒い椅子に座り、手足と胸周りに拘束具に固定され、頭にヘルメット型のヘッドギヤが乗せられた。

Yショッカーの科学戦闘員の一人が、スイッチを入れると、機械が動き始めた。
『グオングオングオングオングオン』

東ひろ子の本改造手術が開始された。
この改造手術が成功すれば、彼女はYショッカーの美少女戦闘員になるのだ!
「アーッ、ウウッアッ! アーッ…」
東ひろ子は、左右に首を振りながらもがいていた。
心の中でひろ子は、必死にもがいていた。
『苦しい~止めて、頭がおかしくなっていく~でも抵抗が出来ない、ア~ッ、段々気持ち良くなっていく、あの二人みたく悪い女の子になっていく、えっ?なに言っているの私、駄目よそんなの、良いじゃないひろ子、貴女は栄光あるYショッカーの一員に選ばれたのよ!何をためらって居るの貴女はYショッカーレディよ!えっ?私はYショッカーレディ!フフフ…。』
心の中のひろ子がそう叫ぶと、瞼の青いアイシャドーがキラリと光り、東ひろ子が目を覚ました。
「イーッ!」
元気良く奇声を挙げた。 改造手術は成功し、手足の拘束具が外され、立ち上がると直立不動の姿勢になり腕をクロスさせもう一度奇声を挙げた。
「イーッ!」
すると、待機していた二人の少女戦闘員が、ひろ子の両腕を掴み、別の部屋に連れていく、その部屋には新しい少女戦闘員の黒いレオタードと網タイツに黒いブーツなどの制服一式が用意されていた。 ひろ子は、今まで着ていた学校の制服を脱ぎ、少女戦闘員の制服に身を包んだ、ここに新たな美少女戦闘員が完成した。

「出でよ!新たにYショッカーに選ばれた東ひろ子!」「イーッ!」

美少女戦闘員となった東ひろ子が現れた!

彼女をスカウトした斉藤美紀がひろ子の事を紹介する。

「この度、栄光あるYショッカーの美少女戦闘員になった東ひろ子です。」そう紹介され首領の前に現れるひろ子「イーッ!偉大なるYショッカーの為に!首領様と組織に忠誠を誓います。イーッ!」『よろしい!期待して居るぞ!さて、早速だが、お前には新たな任務が待っておる、我々は、お前達が通っている、学校に興味がある、そこでだ!お前達三人で、協力しあいお前達の学校の優秀な女子生徒を一人づつ誘拐し、我々の仲間にするのだ!』「イーッ!かしこまりました。必ずや実行致します。」

東ひろ子が答えると、誘拐された時と同じ学校の制服姿に戻り、他の二人の少女戦闘員と共に、新たな少女達を誘拐しに出ていった。

そして、三人の少女戦闘員は手分けをしながら、各自一人ずつクラスメートの女子生徒を誘拐していった。
その時、誘拐される少女達の顔には、東ひろ子と同じ様に青いアイシャドーが引かれていた。 そして、半年間で校内の女子生徒全員が、Yショッカーの少女戦闘員になった。

がり勉娘の少女達は、Yショッカーに物凄く貢献していった。

「「イーッ!」」

         終わり


以上です。
ショッカーゆう様投稿ありがとうございました。
拍手感想などありましたらお寄せくださいませ。
私のほうからお伝えさせていただきます。
  1. 2008/09/27(土) 20:25:40|
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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