昨日に引き続き、大日本帝国海軍航空母艦「飛龍」をご紹介します。
飛龍は、昭和9年度計画により「蒼龍」の二番艦として建造が開始されました。
しかし、ロンドン軍縮条約の失効が近づいてきていたため、蒼龍よりもさらに使い勝手をよくするべく船体の改良を盛り込んで建造することが決まります。
そのため、飛龍は蒼龍に遅れること約一年半後に竣工の運びとなります。
改良自体はそう大きなものではなく、飛行甲板の幅を増やしたとか船体を太くして居住性や使い勝手をよくしたとかなのですが、蒼龍に比べて一点だけ非常に大きな変更点がありました。
艦橋を左舷に配置したのです。
当時、航空母艦はまだまだ未知の分野の軍艦でした。
海上で航空機を発進及び着艦させるために、船体の上部を平らにして飛行甲板にすることは誰もが同じ考えでしたが、軍艦の動力源であるボイラーの排煙をどうするのか、また航海のための艦橋設備をどこにおくのかなど、各国は試行錯誤を繰り返します。
英国では飛行甲板の中央に上下する艦橋を作ってみたり(飛行機が飛ぶときは引っ込める)、飛行甲板の下に艦橋を設置してみたりしましたが、日本でも「鳳翔」や「龍驤」は飛行甲板の下に艦橋を置き、蒼龍は右舷に置きました。
ですが、蒼龍の右舷側には煙突も設置されていたこともあり、煙突と艦橋が右舷に集中することでバランスが悪いと考えられたようです。
また、着艦時の安全性や作業効率、指揮運用などの面からも艦橋は左舷の方がよいのではということになり、飛龍では艦橋を左舷に置くことが決まったのでした。
飛龍が完成したのは昭和14年7月5日。
改良によって基準排水量は蒼龍より約2000トン多い17300トン。
全長227.35メートル。
全幅22.32メートル。
最大出力153000馬力によって最大速度は34.59ノットの高速中型空母でした。
搭載機は蒼龍同様に戦闘機18、爆撃機18、雷撃機18を基本として搭載。
完成後は蒼龍とコンビを組んで第二航空戦隊を編成します。
着艦時の安全などを考慮した艦橋の左舷配置ではありましたが、完成後の運用によって、思わぬ不都合を生じることになりました。
右舷から出る排煙の熱気と左舷で風を切る艦橋とが船体後方に微妙な空気の乱流を生み出し、艦載機の着艦が難しくなるという事態が発生したのです。
さらに蒼龍と比べても艦橋の位置が左舷ばかりでなく後方にも下がったために、着艦時に艦橋に激突してしまうのではないかという恐怖心をパイロットが持ってしまうようになったとも言われます。
このように、蒼龍を改良し使い勝手をよくした飛龍ではありましたが、唯一の欠点として左舷に艦橋を置いてしまったことが悔やまれることになりました。
そのため、のちに日本海軍は雲竜型という中型空母の量産を計画しましたが、そのときにベースとして選ばれたのが蒼龍より使い勝手のよい飛龍ではあったものの、艦橋だけは右舷前寄りに配置するように設計が改められました。
これにより雲竜型は改飛龍型とも呼ばれることになるのです。
飛龍は蒼龍とともに太平洋戦争に参加。
真珠湾攻撃ののちインド洋へも出撃し、蒼龍とともに日本海軍空母機動部隊の中核として活躍します。
そして昭和17年6月5日、ミッドウェー海戦が起こりました。
索敵機の情報が何もないことから、ミッドウェー島の攻撃を行なうために陸上攻撃兵器を搭載するように命じられた日本の艦載機でしたが、発進が遅れていた索敵機より敵空母発見の報告が入ります。
このとき、飛龍に座乗していた第二航空戦隊司令官山口多門は、陸上用だろうが爆弾で敵空母に穴を開けてしまえば飛行機は飛べなくなるのだからすぐに発進させて敵空母を攻撃するべきだと具申したといいます。
しかし、機動部隊司令官南雲忠一は正攻法での攻撃を決断。
艦載機の兵器を対艦用に変更するように命じました。
艦載機の兵器の交換を行なっているじりじりした時間のうちに、ついに米軍の雷撃機が先に来襲してしまいます。
しかし、この攻撃は上空で警戒していた零戦の活躍と、各空母の回避運動のおかげで事なきを得ました。
ところが、この攻撃により零戦が低空に集中、さらに燃料補給のために着艦を余儀なくされてしまいます。
そして兵器の交換が終わり、零戦に燃料補給もし終わったまさにそのとき、米軍の急降下爆撃機が現れたのでした。
蒼龍、赤城、加賀が一瞬にして被弾。
その後蒼龍と加賀は沈没し、赤城は処分せざるを得ませんでした。
参加した四隻の空母のうち三隻がわずかの間に失われます。
飛龍はたまたま雲の陰になっていたらしく目標になりませんでした。
山口司令官はただ一隻残った飛龍で果敢に反撃。
米空母「ヨークタウン」に損傷を与えます。
のちにヨークタウンは日本の潜水艦に止めを刺されました。
しかし飛龍の奮戦もむなしく、米軍の攻撃が飛龍をも捕らえます。
四発の爆弾を受け満身創痍となった飛龍は、ついに放棄が決定。
総員に退艦が命じられました。
赤城同様に味方駆逐艦による処分が申し渡され、駆逐艦巻雲により魚雷を打ち込まれましたが、なおしばらくは浮いていたといわれ、あらためて本土へ曳航しようと駆逐艦を派遣したときには残念ながら海面より没しておりました。
山口司令官、加来艦長以下約四百名ほどが艦と運命をともにしました。
特に山口司令官の死は、空母司令官としての能力の高さからも惜しまれたといいます。
表題は、昨日に引き続きアバロンヒル社のウォーゲーム「ミッドウェー」スミソニアンバージョンの登場艦艇紹介より、艦名「HIRYU」:意味フライングドラゴンとあったことより。
ドラゴンフライ(トンボ)でなくてよかった。(笑)
それではまた。
- 2008/07/28(月) 20:32:05|
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| コメント:4
改飛龍型の件、ありがとうございます。長年の謎が解けました。
よくミッドウェー海戦では『多数のベテランパイロットを失い、航空戦力の回復に時間がかかった』とか書かれますが、パイロット自体は飛龍以外は大した空戦をしなかったこともあってそれほど多くの死者はでてないんですよね。
むしろ、この後のソロモン戦での損失が致命的でした。ずるずる戦ってずるずる減らしたわけですから。
>それともいなづまことで一つのお名前なんでしょうか?
一応『いなづまこと』なんですが、悪堕ちスレでの『178』の方が圧倒的に知名度が上なものでいっしょくたにしてます。
あと、自分は過去に178の名前で 何度か来てますのよ。ラジコン戦艦摂津の紹介とかで。
- 2008/07/28(月) 22:21:35 |
- URL |
- いなづまこと@178 #-
- [ 編集]
マイトガインに出たソニックバンバー(トランスフォーマーZ〈ゾーン〉)に似ているライバルロボの名前も飛龍でした。
SD戦国伝の武者仁宇(ニュー)ガンダムが変身する龍型モードの名前は武者飛龍でした。
飛龍って名前ってかっこいいですね!
- 2008/07/29(火) 20:48:42 |
- URL |
- いじはち #-
- [ 編集]
>>神代☆焔様
そうなんですか?
まあ、つけやすい名前でしょうからねぇ。
>>いなづまこと@178様
うわー、それは失礼いたしました。
今後ともよろしくです。
ソロモン海域での海空の消耗戦は日本の国力を大きく越えてましたからね。
何より資源は内地に運ばなければ意味がないという事実を認識していたかどうか首を傾げるほどの商船の損失も大きかったですよね。
消耗戦はつらいです。
>>いじはち様
飛龍はかっこいい名前ですよね。
だからこそあちこちで使われるんでしょうねー。
- 2008/07/29(火) 21:15:39 |
- URL |
- 舞方雅人 #-
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