シチュ抜き出しSSの第二弾です。
前回同様ナイトレディが出てきますが、前回より前の話的なものだと思って下さいませー。
それにしても・・・
また似たような話になっちゃったなぁ。orz
まあ好きなシチュを抜き出した話なので、似ているのはご容赦を。
「タァーッ!」
ナイトグリーンの見事な飛び蹴りがデモンズの怪物に命中する。
やったぁ・・・
物陰で隠れて見ている私にも、その蹴りがデモンズの怪物にかなりのダメージを与えたことは容易にわかる。
「ウインドスパーク!」
ナイトホワイトの手にした杖が白い光を発し、その光がいかずちのようにデモンズの怪物に突き刺さる。
「グギャァァァァァ」
体液を撒き散らし、苦しみのたうつデモンズの怪物。
女性のように滑らかなラインをしていて、丸い双丘が胸を表わしているものの、尖った口と背中に広がるトゲトゲがハリネズミを使った怪物であることを示している。
新聞の報道によると、どうやら地上の動物をあのような形にして使っているらしいけど、いつも女性の形をしているのはどうしてなんだろう・・・
突然現れた暗黒結社デモンズは、その矛先を日本に定めたらしく、この小さな島国を重点的に襲撃してきた。
警察も自衛隊も歯が立たないデモンズの怪物は日本中を恐怖に陥れたけど、そんな時救世主のごとく現れたのがナイトレディたちだった。
その正体は不明で、マスコミ各社が追跡していたけど、どうやら少女らしいと言うことしか発表されていない。
でも、私は知っている。
ゆらりと立ち上がるデモンズの怪物。
ふらつきながらも最後まで抵抗をやめない。
「まだ来るの?」
ナイトピンク、志緒里ちゃんの驚いたような声がする。
そうよ、もうぼろぼろなんだからあきらめて降伏しちゃえばいいのに・・・
でも、デモンズの怪物が降伏したなんて聞いたこと無いよね。
「とどめを刺すぞ! テラズアタックだ!」
「ええ!」
「うん!」
ナイトグリーンの掛け声に、ナイトホワイトとナイトピンクがうなずいた。
最強の決め技、テラズアタックがデモンズの怪物に向けられる。
決まり・・・よね・・・
私は肩に背負っていたバッグのファスナーを開けて、ピンク、グリーン、ホワイトのタオルを取り出す。
戦闘が終わったら真っ先に差し出してあげるんだ。
もちろん誰も見ていないところでね。
「「「テラズアターック!!」」」
三人の掛け声とともに光の玉がデモンズの怪物に向かう。
光の中に飲み込まれたデモンズの怪物は、そのまま消え去るように散っていった。
ハア・・・
すごいよ・・・
デモンズなんかいくら来てもナイトレディがいる限り日本は大丈夫だよね。
私はホッと胸をなでおろしながら、周囲の確認をする。
黒蟻型のデモンズ兵もいないようだし、マスコミもいないみたい。
私は三人のナイトレディの元に駆け寄った。
「志緒里ちゃん、お疲れ様」
周囲の確認をしてヘルメットを取った志緒里ちゃんたちに私はタオルを差し出した。
「わ、ありがとう奈苗ちゃん」
ナイトピンク、大伴志緒里(おおとも しおり)ちゃんが私のタオルを受け取ってくれる。
茶色のポニーテールの小柄な少女だけど、明るくてとても優しい。
私の大の親友だ。
「塩原。だめじゃないか、こんなところまで」
ナイトグリーン、波留蔵聖歌(はるくら せいか)さんが私を困ったような顔で見つめてくる。
都南高校の二年生で、私や志緒里ちゃんと同学年なのに年上のような感じがする。
背が高く運動神経抜群で、都南高校水泳部のホープらしい。
でも、最近はデモンズの怪物たちとの戦いで練習時間が取りづらいのが悩みとか。
黒いショートの髪の毛と少し日焼けした顔が精悍で、同性からモテモテだと言う。
それもよくわかるなぁ。
「今回は仕方ないですわ。志緒里さんと一緒のところを呼び出されたのですから。大目に見てあげてください」
白いタオルで丁寧に汗を拭いているナイトホワイト、水鳥野真悠(みどりの まゆ)さん。
苗字は字こそ違うけどみどりなのに、ナイトホワイトなのがちょっと気に入らないと言っていたわね。
水鳥野製薬のご令嬢で、聖神女子大付属の二年生。
でも高飛車なところとかはまったく無くて、一緒にカラオケに行ったりするすごく付き合いのいい人なの。
「ったく・・・仕方ないなぁ。危険なんだぞ」
そう言いながらも聖歌さんはタオルを受け取ってくれた。
嬉しいな。
私は何にもできないけれど、こうして少しでも三人の疲れを癒してあげられればと思う。
「奈苗ちゃん、怖くなかった?」
「ううん、ナイトレディの三人がいるんだもん。ちっとも」
これは嘘じゃない。
地球の力に導かれて、志緒里ちゃんがナイトピンクに選ばれちゃったおかげで、一時付き合いが悪くなっちゃんたんだけど、今はこうして三人のナイトレディとお友達になれたんだもん。
「でも、奈苗さんも気をつけてくださいね。デモンズに狙われてしまうかもしれませんわ」
アースパワーを解放して、白いバトルスーツから聖神女子大付属のセーラー服に戻る真悠さん。
「大丈夫。奈苗ちゃんは私がしっかりガードするよ」
いつものブレザーに戻り、ガッツポーズを取る志緒里ちゃん。
その言葉がとても嬉しい。
「ふふん。油断するなよ。大伴は時たま油断するからな」
聖歌さんが笑いながら言う。
悪意の無い冗談だわ。
聖歌さんだけがメンバーを苗字で呼ぶのは距離を置いているからではない。
一度、友人を名前で呼んだとき、翌日にはその友人が女子生徒たちの興味と怨嗟を一気に引いてしまい、いたたまれなくさせてしまったことがあるという。
それ以来どんな場合にも苗字で呼ぶことにしているとか。
もてるというのも苦労が絶えないものなんだなぁ。
「ひどいよ聖歌ちゃん。奈苗ちゃんを守るのに油断なんかしませんよー」
ぷんぷんと言う擬音が当てはまりそうな顔をしている志緒里ちゃん。
私は思わず笑い出しちゃう。
「私も充分気をつけるから大丈夫だよ、志緒里ちゃん」
私は三人からタオルを受け取り、バッグにしまう。
「それよりもお腹空いたね、メック行かない?」
「ハンバーガーですか? いいですわね」
真悠さんが賛成してくれた。
「いいね、行こうよ」
「ああ、お腹空いたね」
他の二人も賛成してくれた。
「行こう行こう」
私は志緒里ちゃんの手を取って、メック目指して走り出した。
今日は日曜日。
私は志緒里ちゃんとの待ち合わせ場所に向かっていた。
一緒にお買い物をして、そのあと聖歌さんと真悠さんも一緒にカラオケ。
いつものコースだけど、やはり楽しみ。
私はバスに乗って中心街へ向かう。
駅前に早めに行って志緒里ちゃんを待つの。
きっと志緒里ちゃんはぎりぎりになって走ってくるわ。
うふふ・・・
朝は弱いのよね、志緒里ちゃんは。
あれ?
急にバスの外が暗くなった。
お客さんもざわめきだす。
その時急ブレーキが私の躰をぐんと前につんのめらせた。
「キャーッ!」
「ウワーッ!」
お客さんの悲鳴が上がる。
何?
何がどうなったの?
私はポケットの携帯に手を伸ばす。
何かあったときには志緒里ちゃんに連絡をする。
それが約束だった。
「グワーッ!」
運転席で悲鳴が上がる。
窓ガラスが割れ、血がしぶき、扉が引き開けられる。
デモンズの怪物!
私は思わず悲鳴を上げそうになる。
運転手を殺し、悠々と入ってきたのはまさにデモンズの怪物だった。
柔らかい女性のラインをした躰だが、ぬめぬめと粘液に覆われ頭部からはゆらゆらと光る発光体がぶら下がっている。
「うふふ・・・私は暗黒結社デモンズのアンコウデモン。素体に相応しいものを確保する」
そう言って恐怖に震える私たちを見回してくる。
怪物の後ろにはデモンズ兵と呼ばれる黒蟻型の女性たちが立っていた。
「ふふふ・・・さあ、お前たち、私の提灯をごらん」
アンコウデモンの頭部から垂れ下がった発光体がゆらゆらと揺れている。
あ・・・
いけない・・・
あれを・・・見ては・・・
あれ・・・は・・・
ひんやりした空気。
暗い。
ここは・・・どこ?
「ほう、目が覚めたか」
私の方を振り向くがっしりとした体格の大男。
その額からは角が突き出し、トゲトゲのアーマーが躰を覆っている。
まるでペイントでもしたような青白い顔は、ところどころが赤黒い隈取りがなされていた。
「あ・・・あなたは・・・」
訊くまでも無い。
暗黒結社デモンズのグラドーンだわ。
私は思わず、あとずさる。
でも、突然電気が走ったように私の躰は痺れて動けなくなってしまった。
「うああっ」
「おとなしくしていろ。そこは力場に覆われている。逃げ出せはしない」
静かにそう言うグラドーン。
私はポケットの携帯を捜す。
あれ?
無い、無いわ。
ポケットのどこを捜しても携帯は見つからない。
どうしよう・・・
志緒里ちゃん・・・
助けて・・・
「俺の名はグラドーン。女、捜し物はこれか?」
差し出されたグラドーンの手に握られていたのは私の携帯だった。
「あ・・・」
私は思わず手を伸ばそうとする。
「ククク・・・」
さっと手を引っ込め、私の携帯を開くグラドーン。
「ククク・・・先ほど見せてもらったよ。どうやらお前はナイトピンクの知り合いのようだな」
「ええっ?」
確かに私の携帯の待ちうけ画面には志緒里ちゃんとのツーショットが映し出されている。
でも、どうして?
「ククク・・・我らとて情報は得る。この女こそがナイトピンクであろう。違うか?」
私は必死に首を振る。
両親にだって教えていない志緒里ちゃんの正体を教えたりできるもんか。
「ふふ、まあいい。これよりお前に面白いものを見せてやる」
グラドーンがパチンと指を鳴らす。
「イヤァッ!」
引き摺られるようにして両腕を掴まれた女の人が連れて来られる。
あのワンピース・・・バスに乗っていた人だわ。
両腕をあの蟻型のデモンズ兵に掴まれて、必死に逃れようとしているけど逃げられないでいるわ。
綺麗な人だけど、涙で顔がぐしゃぐしゃになっちゃっている。
「あ、あの人をどうするつもり?」
私は恐ろしかったけど、訊かずにはいられなかった。
「うん? ククク・・・あれを見ろ」
私は指差された先を見た。
「ええっ?」
そこには巨大な心臓のようなものがドクンドクンと蠢いていたのだ。
「し、心臓?」
「そうではない。あれは怪人製造プラントだ」
にやりと不気味に笑うグラドーン。
「怪人製造プラント・・・?」
「うむ、おとなしく見ていろ」
グラドーンの指が再び鳴らされる。
「イヤァッ!」
「ああっ」
私の目の前であのワンピースの女の人が心臓のような怪人製造プラントに飲み込まれていく。
「な、何なの? いったい」
「クックック・・・」
グラドーンは不気味に笑うだけだった。
ゴトン。
どのぐらいの時間が経ったのかな。
すぐだった気もするし、何時間も経ったような気もする。
その音はあの心臓のような怪人製造プラントから卵のような丸いものが吐き出された音だった。
「卵?」
そんなはずは無いわね。
だってあまりにも巨大すぎる。
まるで人が入って・・・いるか・・・のよう・・・
私はぞっとした。
「ククク・・・そんなようなものだな」
グラドーンは相変わらずニヤニヤしている。
ピキピキ・・・
ひびが入る音。
私の目の前で卵はゆっくりと割れ、中から怪人が現れる。
黒くぬめぬめした躰はやっぱり女性らしいラインを持っている。
口元の左右からは一本ずつの長い髭のようなものが伸び、お尻には魚のひれのようなものが付いていた。
「クックック・・・見ろ。あの女がこんな素敵な怪人になった」
「そ、そんな・・・」
私は息を飲んだ。
あの泣いていた女の人が・・・
デモンズの怪物になっちゃったの?
「うふふ・・・グラドーン様。私はナマズデモン。私の地震を起こす能力で地上を大混乱に陥れてやりますわ」
グラドーンに跪くデモンズの怪物。
怖い・・・
怖い怖い・・・
助けて・・・
志緒里ちゃん、助けて・・・
私は祈らずにはいられなかった。
「さて、塩原奈苗(しおはら ななえ)。ナイトピンクと親しいお前には、これからナイトレディに対する作戦の指揮を取ってもらおう」
「え?」
それはどういうことなの?
「ど、どういうこと?」
「お前にもあの怪人製造プラントに入ってもらうのだ」
「い、いや・・・」
いやだ・・・
いやだ・・・
「怪物になるなんていやだぁ!」
私は見えない壁に向かって這うように逃げて行く。
もしかしたら・・・
もしかしたら抜けられるかも・・・
でも、私の躰はやっぱり電気に撃たれたように痺れてしまった。
「あ・・・う・・・」
私は床に寝そべってしまう。
躰が痺れて動かない。
助けて・・・
お願いだから助けてぇ・・・
デモンズ兵に連れ出される私。
動けないままに私は怪人製造プラントに連れて行かれる。
「心配するな塩原奈苗。お前はただの怪人にはしない。お前には上級怪人としておれのそばにいてもらう」
いやだ・・・
そんなのいやだよぉ・・・
必死に躰を動かそうとするけど、痺れた躰は動かない。
さっきはすぐに動いたのに・・・
私の目の前には怪人製造プラントが口を開けている。
赤くうねうねと動く内部がよく見える。
まるで胃カメラで内臓を見ているみたい・・・
私はそんなことを考えてしまう。
躰は動かない。
もうだめだ・・・
私は怪人にされちゃうんだ・・・
志緒里ちゃんとは敵同士になっちゃうんだ・・・
いやだよぉ・・・
そんなのはいやだよぉ・・・
私の頬を涙が伝う。
大声で泣きたい。
泣いて泣いてこの悪夢から目覚めたい。
でもそれはかなわない。
私の躰は怪人製造プラントに入れられてしまった・・・
あれ?
温かいや・・・
なんだろう・・・
ふわふわして気持ちいい・・・
すごく気持ちいいや・・・
ああ・・・
眠くなっちゃう・・・
なんだかマッサージされているみたい・・・
躰が中から変えられていく・・・
気持ちいい・・・
今までのことが夢の中のよう・・・
夢・・・
あ・・・れ・・・?
私・・・
私って・・・
だ・・・れ・・・だ・・・っけ・・・
わ・・・
た・・・
し・・・
私はもどかしく殻を破る。
ひんやりとした外気がとても気持ちいい。
私はぬらぬらする液体を振り払い、殻を破った鋭い爪をぺろりと舐める。
うふふ・・・
素敵な爪。
鋭くて獲物を引き裂くには相応しいわ。
私は躰を震わせて、背中の羽を広げて見せる。
漆黒のコウモリのような羽が伸び、私の躰を持ち上げた。
「クククク・・・素敵な躰になったではないか」
腕組みをして笑みを浮かべているグラドーン様。
私は羽をたたんで彼の前にその身を立たせる。
黒いボンデージのように胸から股間までを外皮が覆い、お尻から伸びた尖った尻尾がくねくねと踊る。
両手と両脚は黒い長手袋とハイヒールブーツのように変化して、その美しさを際立たせている。
「クスッ・・・ありがとうございますグラドーン様」
私はグラドーン様の言葉にすごく嬉しくなって、その場でくるくると回って見せた。
「奈苗よ、これからは暗黒結社デモンズの女怪人ナナとして、我が命に従うがいい」
「はい、グラドーン様。私はナナ。おろかなナイトレディどもはこの私が始末してご覧に入れますね」
私は長く伸びた舌でぺろりと唇を舐める。
そう・・・私はナナ。
ナイトレディは私が倒すわ。
うふふふふふふ・・・
- 2006/12/04(月) 21:54:32|
- 怪人化・機械化系SS
-
| トラックバック:0
-
| コメント:6