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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ふたりはイヴィルシスターズ (2)

ふたりはイヴィルシスターズの二回目です。
ふたりがもがくありさまを楽しんでいただければと思います。

それではどうぞ。


「うああー! 遅刻するー!」
バタバタと教室に駆け込んでくる茉莉。
昨日絵美に待っているなどと言ったくせに、その本人が学校に来ていないのでは待っているも何もあったものではない。
これというのも、昨晩は妙に目がさえて明け方近くまで眠ることができなかったからである。
そして目が覚めた時にはとっくに起きていなくてはならない時間だったのだ。

「ふう・・・セーフ」
なんとかギリギリ始業前に駆け込むことができて、思わず安堵する茉莉。
見ると、いつもの席に絵美が座っている。
「よかった・・・黒坂さん、来てくれた」
自分の席に着き、後ろの方の絵美に向かって小さく手を振る。
すると、それに気が付いた絵美も笑顔で小さく手を振り返してくれた。
それだけでもう茉莉は嬉しかった。

「黒坂さん、親には言ってみたの?」
授業が終わった後の休み時間を待ちかね、茉莉はすぐに絵美のところへ行く。
「うん・・・」
絵美の表情が曇るのを見て、茉莉はすぐに昨日の警官と同じ反応だったのだろうと察した。
実際茉莉自身、昨晩兄に冗談めいて話してみたものの、バカにされるだけで終わったのだ。
なので、茉莉は両親には昨日のことは話していない。
おそらく信じてもらえないだろうから。

「ママには笑い飛ばされただけだった。パパは真面目に話を聞いてくれたんだけど・・・」
「うん」
「人間は災害の力には勝てない。だから、昔から人間は災害があると誰かが何か悪いことをしたからじゃないかと思った。いわゆる天罰というやつだな。その誰かを自分に置き換えてしまう人もいるんだ。自分が何か悪いことをしたから天罰が起こった。あまりの衝撃に絵美はそう思い込んでしまったんだろう。絵美は優しいし、何せあの教会はこの街では有名だったからね・・・だって・・・」
「ああ・・・なるほど」
茉莉はうなずきつつも、絵美が苦い表情をしていることに気が付いた。
「私・・・ちっとも優しくなんかないのに・・・」
絵美が吐き捨てるように言う。
親の見る自分と自分自身との差があるのだろう。
茉莉にもそれはよくわかる。

「紅倉さんは?」
「あー、私はお兄ちゃんにちょこっと話したけど、バカにされて終わった。だからお父さんにもお母さんにも話してない」
「そう・・・」
ふうとため息をつく絵美。
自分の家族は無理だったものの、茉莉の家族は茉莉の話を信じてくれたのではという淡い期待もあったのだ。
「ねえ、由華先生に相談してみようか」
「鷹紀先生に?」
茉莉の提案に驚いたように顔を上げる絵美。
「うん。ほかの大人はダメだったけど、由華先生なら・・・由華先生なら相談に乗ってくれないかな」
確かに鷹紀由華はまだ若いこともあり、お姉さん感覚で生徒たちに慕われているというのはある。
彼女であれば生徒の相談にも親身になって聞いてくれるかもしれない。
それに・・・
「そういえば・・・確か・・・先生が私たちにあの倉庫の片付けを指示してからあの事があったのよね。先生は何か知っているかも」
「うん。私もそう考えていた」
絵美の言葉に茉莉も大きくうなずいた。

「茉莉ー」
「昨日はごめーん。でもさぁ、あのあと大変だったんだよぉ」
棚本希美と与瀬場唯が茉莉を呼ぶ。
どうやら昨日の話を茉莉に聞かせたいようだ。
「あ、それじゃ黒坂さん、放課後先生に相談してみるってことで」
「ええ」
笑顔で応じる絵美。
その笑顔に茉莉はうなずき、二人の友人のところへ向かうのだった。

                   ******

放課後。
二人は休み時間に話していた通り、担任の鷹紀由華のところへと向かう。
職員室にいる先生を見つけた二人は、すぐに彼女に声をかけた。
「あら、どうしたの、二人して。何か用?」
いつものように笑顔で二人を迎えてくれる先生。
「はい。実は先生に昨日のことで相談があって・・・」
「昨日のこと? ああ、倉庫の片付けのこと? あの事ならもういいのよ。しなくてもいいことになったから」
茉莉が昨日のことと言ったことから、由華は倉庫の片付けのことだろうと見当をつけたらしい。
「違うんです。倉庫のことじゃなくて・・・その・・・」
「あの・・・できれば他の先生方のいないところでお話はできませんか?」
茉莉が言いよどむと同時に絵美が場所の変更を申し出る。
茉莉にしてもこの職員室の中で昨日の話をするのは気が引けたので、絵美の申し出はありがたかった。
「そう・・・何かの悩み事なのね? いいわ。場所を変えましょう」
そう言って由華は鍵のケースのところへ行き、進路相談室の鍵を取る。
「進路相談室に行きましょう。あそこなら静かだわ」
「はい」
由華の後について二人は職員室を出て、進路相談室へと向かった。

三人だけの静かな進路相談室。
外からはグラウンドの運動部の部活の声が聞こえてくる。
「それで・・・その毛むくじゃらのワルピーとかいう魔物が、あなたたちを操ってあのようなことを起こさせた・・・というのね?」
二人の話を聞いた由華が腕組みをしながら確認をするように話の内容を繰り返す。
「はい、そうなんです」
「信じられないと思いますけど、本当のことなんです」
信じてほしいとばかりに由華の目をまっすぐに見つめてくる二人。
「あの教会が崩れたのは、竜巻のような突風と落雷によるものだと報道されているわ。でも、そうではないというのね?」
「はい。あれは・・・私たちがやってしまったことなんです」
「黒坂さんと私が、そのワルピーとかいうやつにイヴィルシスターズとかいうものにされて、思いっきり暴れてしまったんです。本当なんです!」
ぐっとこぶしを握り締める茉莉。
夢だったと思いたいことだったが、あの感触は今でも思い出せるのだ。

「そう・・・そうだったの・・・」
由華の言葉にちょっと驚く二人。
今まで警官にも両親にも兄にも信じられないとしか言われなかったのだ。
そうだったのと肯定してもらえたことが一瞬信じられなかったのだ。
「あれはあなたたちが・・・ねえ・・・」
「そうなんです。だから・・・その・・・どうやって償ったらいいのかと」
「警察に言っても信じてもらえなくて。先生に相談したら何かいい考えをもらえるかなと」
例えば由華と一緒に警察に行ってみるというのはどうだろう。
担任教師と一緒なら、警察も話を聞いてくれるかもしれないと茉莉は思う。

「ねえ・・・二人とも」
由華の口がニタリと笑みを浮かべる。
「はい」
「はい?」
「どうだった?」
「はいぃ?」
「えっ? どうだったとは?」
予想外の質問に戸惑う二人。
どうだったとはいったい?
「気分よ。あの教会を破壊した時、どんな気持ちだったの? 興奮した?」
由華は笑顔を見せているはずなのに、それがどことなく冷たさを感じさせる。
「えっ?」
「こ、興奮したって・・・」
茉莉も絵美もドキリとする。
それは二人ともお互いに言わないで来たことだったのだ。
気持ちよかった・・・
茉莉も絵美もそう思う。
あの教会を破壊していた時、確かに二人は気持ちよさと興奮とを感じていたのだ。
力を思うままに振るう気持ちよさ。
目の前のものが崩れていく興奮。
デモンオー様の目障りなものを排除できた喜び。
そういったすべてのことが、まざまざと思い浮かんでくる。
だが、それは感じてはいけないことのはずなのに・・・

「ねえ、どうだった? 気持ちよかったでしょ?」
「そんなこと・・・ない・・・」
絵美が絞り出すような小さな声で返事をする。
「えっ?」
茉莉は思わず絵美の方を見る。
「気持ちよくなんかありません!」
「黒坂さん」
突然大きな声できっぱりと否定する絵美に驚く茉莉。
絵美はわかっていた。
自分がとても気持ちよかったことを。
だが、それを認めてしまっては自分が邪悪と闇に染まってしまったことになってしまう。
だから否定するしかない。
「そうでしょ? 紅倉さんだって気持ちよくなんかなかったでしょ? お願い! そうだって言って!」
すがるような眼で茉莉を見つめる絵美。
それを見て茉莉はうなずく。
「ええ。気持ちよくなんてなかったです。絶対に気持ちいいはずがない!」
茉莉も力強くそう言い切るのを見て、絵美の顔に笑顔が浮かぶ。
そうだよ。
あんなことが気持ちいいはずなんてないんだ。

「あら残念。きっと二人とも気持ちよかったんじゃないかと思ったんだけど・・・でもよかったじゃない。デモンオー様の目障りなものを排除できたんだもの」
椅子を少しずらし、タイトスカートからすらっと伸びたストッキングに包まれた脚を組んで邪悪な笑みを浮かべる由華。
「えっ?」
「先生、今なんて?」
二人はワルピーのことは口にしたが、デモンオーのことは言ってなかったはずなのに。
「うふふふ・・・あなたたちはデモンオー様のお役に立てたのよ。喜びなさい」
「そんな・・・」
「先生? いったい?」
「あなたたちはもう“正しい心と力を持つ者”じゃなくなったの。二人は邪悪と闇の王であるデモンオー様のしもべとして選ばれたのよ。光栄に思いなさい」
「先生! 何を言ってるんですか!」
茉莉が机をバンと両手でたたくようにして立ち上がる。
今日の先生はいつもの由華先生じゃない!

「ケケケケ・・・その女はもうわれの忠実なしもべだピー。われの力で心を邪悪と闇に染めてやったんだピー」
聞き覚えのあるやや甲高い声が進路指導室に響く。
茉莉も絵美も聞きたくない声だ。
「その声は!」
「ワルピー!」
二人が声の出所を探すと、由華の肩のあたりに小さな黒い球体が現れ、その中から黒い毛むくじゃらの小悪魔が現れた。
その小悪魔を肩に乗せ、愛しむように手をのせる由華。
その表情はうっとりとしているようだ。
「先生! そいつが! そいつがさっき言ったワルピーです!」
「先生! 早くその悪魔から離れて!」
ワルピーの姿を見て、思わず絵美も椅子から立ち上がる。
「ええ、知っているわ。だって・・・私はもう身も心もワルピー様にささげたしもべなんですもの」
肩にちょこんと乗るワルピーをなでながら、由華は冷たい笑みを浮かべる。
「ケケケケ・・・いい娘だピー。お前をわれのしもべにして正解だったピー」
「ああ・・・ありがとうございます。ワルピー様」
ワルピーの言葉にうれしそうな由華。
もはや完全にワルピーに支配されてしまったのだ。

「そ・・・そんな・・・」
「先生が? 由華先生が心を邪悪と闇に染められちゃったなんて・・・」
愕然とする二人。
明るく優しく生徒たち思いだった女性教師はもういなくなってしまったというのか?
「ちょうどよかったピー。またデモンオー様の目障りになりそうなものを見つけたピー。お前たち、排除してくるんだピー」
ニタッと赤い口に笑みを浮かべ、矢じり型の先端をした尻尾に二本の黒い鍵を巻き付けて取り出すワルピー。
「い、いやっ! もうイヴィルシスターズになるのはいやぁっ!」
自分の躰をかき抱くようにして抱きしめ首を振る絵美。
「そんなことさせない!」
ガタッと椅子をはねのけ、ワルピーに飛び掛かっていく茉莉。
「うるさいピー! お前たちが完全なイヴィルシスターズになるまで、何度でも繰り返すんだピー!」
飛び掛かってきた茉莉の手をさっとかわし、またしても宙に浮いて二人を見下ろしてくるワルピー。
「卑怯者! 降りてこい!」
「お願い! やめてぇ!」
叫んでいる二人を無視してワルピーは黒い鍵をかざす。
「イヴィルキーよ、二人の心を邪悪と闇に染めるんだピー!」
再び二本の黒い鍵からそれぞれ一筋の黒い闇が伸び、二人の胸に黒い鍵穴を作り出す。
「いやぁぁぁぁっ!」
「やめろぉぉぉぉ!」
二人が必死で拒絶しようとしても、躰がまるで金縛りにでもあったように動かない。
そしてその鍵穴に、黒い鍵がすうっとはまり込んでいく。
「オープンロックだピー!」
ワルピーの声に呼応して黒い鍵が回転してカチッと音がし、二人の胸に丸い黒い穴が開く。
「ダークネスインだピー!」
「きゃぁぁぁぁぁ!」
「うあぁぁぁぁぁ!」
轟音が響いて二人の足元から闇が湧き起こり二人の胸の穴に吸い込まれていく。
そして入りきらない闇が二人の躰を包み込み、黒い球体を形作っていく。
やがて二人の躰は闇の中に見えなくなり・・・
赤と黒の衣装に身を包んだ少女たちが闇の中から現れた。

「赤の邪悪! イヴィルマリィ!」
ぐっとこぶしを握り締めて力強いポーズをとる赤の少女。
「黒の邪悪! イヴィルエミィ!」
すっと右手を胸に当てて握る黒の少女。
それぞれがそれぞれの色のつややかなエナメルチックのボンデージタイプのレオタードに身を包み、二の腕までの長手袋と、太ももまでの長さのロングブーツを身に着けている。
目元には黒いアイシャドウが引かれ、唇には真っ赤な口紅が塗られているのは共通だ。
そしてイヴィルマリィの燃え立つような赤いショートヘアには黒いカチューシャが、イヴィルエミィの漆黒のロングヘアには赤いカチューシャがはめられていた。
「「ふたりはイヴィルシスターズ!」」
二人の声がハーモニーを奏でる。
「世界を邪悪と闇に染めるため!」
「デモンオー様の目障りなものは!」
「「私たちが排除します!」」
背中合わせに立ってお互いにファイティングポーズを決めるイヴィルマリィとイヴィルエミィ。
それはまさに邪悪と闇の魔女たちだ。

「ああ・・・またこの姿に・・・」
変身が終わったことで自我が戻ったイヴィルエミィが両手で顔を覆ってしまう。
「ああ・・・また・・・」
イヴィルマリィも悔しそうに唇をかみしめる。
もう二度とこんな姿にはなりたくなかった姿なのに、またしても変身させられてしまったのだ。
だが・・・
二人とも気が付いていた。
昨日に比べ、この姿に違和感を感じなくなっていたことも。
それどころか、どこかこの姿に誇らしさすら感じていたことを。

「ケケケケ・・・やはり素晴らしい姿だピー。まさに邪悪と闇の魔女にふさわしい姿だピー」
「そ、そうですか?」
ふさわしいと言われ、あらためて自分の格好を見直すイヴィルエミィ。
つややかなボンデージレオタードが確かに見栄えがしているといえばいえる。
「SMの女王様みたいだけど、確かにかっこいいといえばかっこいいかも・・・」
イヴィルマリィも、自分の格好がどこか誇らしい。
それに褒められてうれしくないわけはないのだ。
「うんうん。とてもよく似合っているピー」
「ええ、本当に素敵ですわ。デモンオー様のしもべにふさわしい姿よ、二人とも」
二人の姿を冷たい笑みを浮かべて見ている由華にそう言われ、ハッとする二人。
そうなのだ。
この姿はデモンオー様のしもべとしての姿。
そんなものになるつもりは二人にはない。

「ケケケケ・・・さあ二人とも、デモンオー様の目障りなものを排除してくるんだピー!」
「それとこれとは話が別です!」
「そうだよ! この格好が気に入ったからって、私たちはデモンオー様に従う気なんてないんだからね!」
キッとワルピーをにらみつけるイヴィルマリィ。
「えっ? イヴィルマリィはこの衣装が気に入ったの?」
思わずイヴィルマリィを見るイヴィルエミィ。
「えっ? うん・・・まあ・・・かっこいいかなって。イヴィルエミィは?」
「うん・・・まあ、私も嫌いじゃないかも・・・」
漆黒のエナメルボンデージ姿を愛しむように胸に手を当てるイヴィルエミィ。
「でも、デモンオー様に従ったりはしません!」
「むぅ・・・まだ邪悪に染まり切っていないのかピー! ならば!」
ワルピーの目が輝く。
しかし、イヴィルエミィもイヴィルマリィも素早く目を閉じてワルピーのほうから顔をそらしてしまう。
「なっ、お前たちこっちを見るんだピー!」
「絶対見ません!」
「見るもんですか!」
固く目を閉じて首を振る二人。

「きゃあっ!」
その時由華の小さな悲鳴が響く。
「先生!」
「ワルピー! 由華先生に何を!」
担任の悲鳴に、思わずイヴィルマリィもイヴィルエミィも目を開けてしまう。
「あっ!」
「しまった!」
気が付いた時にはもう遅く、二人の目がワルピーの目をとらえてしまい、とろんとうつろになってしまう。
「ふう・・・うまくかかったピー。由華、よくやったピー」
「アン・・・ありがとうございます、ワルピー様」
お褒めの言葉をいただきうっとりとする由華。
「うふふふ・・・普段聞きなれた声が悲鳴を上げれば、誰でも何があったのかと気になってみてしまうものですわ」
由華の口元を冷酷な笑みがゆがめる。
「ケケケケ・・・すっかり心が邪悪に染まったようだなピー。教え子を罠にはめるのもためらわないとはピー」
すっと由華の肩に降りてくるワルピー。
「私はワルピー様の忠実なるしもべ。ワルピー様のためでしたら教え子をだますことなど造作もないことですわ」
目の前でうつろな目をして立ち尽くすイヴィルマリィとイヴィルエミィを見つめる由華の目には邪悪な輝きが光っていた。
「ケケケケ・・・いい娘だピー。あとでたっぷりとかわいがってやるピー」
ワルピーの矢じりのような先端をした尻尾がそっと由華の頬をなでる。
「ああ・・・ありがとうございます。ワルピー様ぁ」
思わず頬を染めてしまう由華。
「われは彼女たちを連れてデモンオー様の目障りなものを排除させるピー。二人がいなくなった後の学校のことはお前に任せるピー」
「はい、かしこまりました。ワルピー様」
由華がこくんとうなずくと、ワルピーは二人を連れ、自らが作り出した闇の球体の中へと消え去った。

街の中心部にある大きな音楽堂。
休日ともなれば、何らかのイベントやコンサートの類が開かれ、大勢の人間が利用する場所だ。
その音楽堂の上空に、黒い闇の球体が現れたことに、周囲の人々はざわめいていた。

「ふたりともあれを見るピー」
ワルピーの言葉に従いうつろな目で音楽堂を見るイヴィルシスターズの二人。
「あれは音楽とかいう音で人間どもに楽しさや喜びなどの感情を湧き起こさせるための施設だピー。そのようなものは邪悪と闇の世界には必要ないピー。デモンオー様の目障りなあの施設を排除してくるがいいピー」
「デモンオー様の目障りな施設・・・」
「私たちが排除・・・」
ワルピーの言葉に無表情にただ反応しているだけのように見える二人。
だが・・・
イヴィルマリィの舌がぺろりと唇を舐める。
その目が生気を取り戻していき、口元に邪悪な笑みが浮かんでいく。
「世界を邪悪と闇に染めるため・・・」
イヴィルマリィがそう口にすると、隣にいたイヴィルエミィの目にも生気が戻ってくる。
「デモンオー様の目障りなものは・・・」
イヴィルマリィに続いて言葉を紡いでいくイヴィルエミィ。
「「私たちが排除します!」」
そして二人は力強く声を合わせる。
「行こう、イヴィルエミィ! デモンオー様のために!」
「ええ、行きましょうイヴィルマリィ! デモンオー様のために!」
二人はガシッと手をつなぎ合うと、そのまま闇の球体を飛び出していく。
「ケケケケ・・・じょじょに心が邪悪な闇に染まってきたようだピー」
二人の後ろ姿を見送ったワルピーは、その様子に自らの思い描いた通りに事が進んでいることを感じていた。

「あはははは・・・ええーーーい!」
イヴィルエミィは楽しかった。
力を思うままに振るうことが。
建物がどんどん崩れていくところが。
人々が瓦礫の下敷きになっていくことが。

「うりゃあああ! あっはははは・・・」
イヴィルマリィは気持ちよかった。
誰にも邪魔されないことが。
建物の崩れていく轟音が。
人々の上げる悲鳴を聞くことが。

「レッドウィップ!」
「ブラックウィップ!」
二人は嬉しかった。
デモンオー様の目障りなものが消えていくことが。
世界を邪悪と闇に包むことができることが。
お互いの息がぴったりと合っていることが。
とてもとても嬉しかったのだ。

やがて音楽堂は跡形もなく瓦礫と化す。
人々の悲鳴やうめき声が周囲に満ちる。
その様子を二人は笑みを浮かべながら見て、黒い闇の球体の中へと戻っていった。

                   ******

「ハッ」
教室の自分の席で目を覚ます絵美。
前のほうではやはり自分の席で茉莉が机に突っ伏している。
「あ・・・私・・・また」
言いようのない絶望感が押し寄せる。
またしてもイヴィルエミィとなって暴れてしまったのだ。
「・・・どうしたら・・・」
苦悩しつつも席を立って茉莉を起こしに行く。
「紅倉さん」
「ん・・・あ・・・」
ゆっくりと目を開ける茉莉。
その目が絵美をとらえると同時に、その表情が曇ってしまう。
「黒坂さん・・・私たちまた・・・」
「うん・・・やってしまったんだと思う・・・」
絵美はスマホを取り出してニュースサイトを確認する。
そこには速報で音楽堂の崩壊が取り上げられていた。
「これ・・・やっぱり・・・」
「うん・・・私たちね・・・」
がっくりと肩を落とす茉莉。
もうあんなことは二度とごめんだったはずなのに・・・

「どうする? 警察に行く?」
茉莉の言葉に絵美は首を振る。
「無駄でしょう。昨日と同じことになるだけだと思う・・・」
「そっか・・・そうだよね・・・」
茉莉もそのことは理解する。
どうせたわごとと切り捨てられるのが落ちなのだ。
「どうしたらいいんだろう・・・先生も・・・」
「うん・・・もう先生はワルピーに支配されちゃっているんだわ」
「それってヤバくない?」
「でも・・・でもどうしたらいいのか・・・」
絵美も茉莉もどうしたらいいのか全く分からないのだ。
大人は誰も助けになってくれないどころか、頼みの綱の先生までがあのワルピーのしもべになっちゃったのだ。

「何かできることはないのかな・・・」
「わからない・・・とにかく二人きりの時に先生に会ったりしない方がいいと思う。みんなのいるところでは、さすがにあのワルピーが出てくることはないんじゃないかしら」
確かに昨日も今日も二人だけの時にワルピーは現れた。
だとしたら、できるだけ他のクラスメイトたちと一緒にいるのがいいのかもしれない。
「それ以外今は思いつかないの。ごめんなさい」
「謝ることないよ。私なんか何も思いつかなくて・・・」
「ううん、そんなことない。紅倉さんがいてくれるだけでどんなに心強いか・・・」
「黒坂さん・・・」
「とにかくここにこうして二人きりでいたら、またワルピーに狙われてしまうかもしれないわ。早く学校を出ましょう」
「うん、そうだね」
二人はうなずき合い、とにかく学校を出ることにして教室を後にした。

                   ******

「ふう・・・」
なんだか寝付けない。
絵美はベッドの中で何度も寝返りを打つ。
帰り道では特に何もなかった。
家に帰ってきても、今日はなんだか両親と話をする気にもなれなかった。

もちろんニュースは音楽堂の崩壊事件で一色だった。
昨日の教会に続き、今日は音楽堂が崩壊したことで、気象庁は大気が極端に不安定になっており、竜巻や落雷がいつ起こるかわからないためにここ数日は注意が必要との警報を発表していた。
その警報が当たるか外れるかは、ひとえに二人の少女にかかっているのだったが。

パパもママもまた自分が昨日と同じことを言いだすのではないかと案じているような感じだった。
どこか気を使っているようなよそよそしさを感じていたのだ。
それが何だか絵美には非常にむしゃくしゃする。
だから、さっさと自分の部屋に戻ってきて一人で本を読んでいたのだが、今日に限っては内容が全く頭に入ってこず、本すらも彼女をいらだたせる役にしか立たなかった。
結局早めにベッドに入るぐらいしかできなかったのだった。

「ふう・・・ダメだわ」
目が冴えてしまっている。
しばらく眠れそうもない。
絵美はベッドから起きると、枕元に置いた眼鏡をかける。
カーテンを開けると月明かりが差し込んでくる。
「きれい・・・」
なんだかすごく夜がきれいだ。
ちょっとドキドキする。
どうせ寝られないのなら夜のお散歩でもしてみようかしら。
絵美はそう思うと、パジャマを脱いで普段着に着替えていく。
そしてそっと部屋を出ると、玄関まで足音を忍ばせて歩いていく。
どうやら両親は起きてこないようだ。
全く気付いていないのだろう。
いい気なものだわ・・・
なんだかムカついてくる。
私がどんなに苦しんでいるかも知らずに眠りこけているなんて・・・
ふふっ・・・
突然笑みがこぼれてくる。
あなたたちなんて・・・デモンオー様がこの世界を支配した暁には・・・
ふふふっ・・・
そこまで考えてハッとする絵美。
わ、私は今何を?
何を考えていたというの?
慌てて靴を履いて外に出る絵美。
なんだか今の自分を他人には知られてはいけないような・・・そんな気がしたのだ。

「はあ・・・」
外に出たことで少しは落ち着いてくる。
さっきの私は何を考えていたというのか・・・
もしかして・・・
もしかして私はもう心を邪悪と闇に染められてしまっているのだろうか・・・

だが、そんな不安も満天の星空が拭い去ってくれる。
「きれい・・・」
星空なんて眺めるのはいつ以来だろう?
太陽のない世界はこんなにも素敵だったなんて・・・
気持ちいい・・・
夜のひんやりした空気が頬をなでていく。
まるで闇がやさしく抱いてくれているみたいだ。
夜がこんなに気持ちよかったなんて知らなかった。

「うふふ・・・」
夜の道を歩き始める絵美。
なんだろう。
自分がこんなに夜が好きだなんて思いもしなかった。
星空を眺めながら裏通りの方へと入っていく。
そっちの方がより暗闇を感じられそうだ。
表通りはこんな夜中でも照明で明るすぎる。
少しでも暗い方がよかった。

闇に沈んだ小さな公園。
ぽつんと街灯が一つあるだけの誰もいない深夜の公園。
昼間はこんな公園でも子供たちが結構遊んでいるところだったが、今は誰もいない。
絵美は公園に入り、ブランコに腰を下ろす。
街灯の明かりから少し陰になるので、足元はだいぶ暗い。
それがなんだかとても心地よかった。

ザリッと誰かの足音が聞こえた。
「えっ?」
絵美が顔を上げると、そこにはこの二日間でとても見慣れた少女の顔があった。
「紅倉さん? どうして?」
「黒坂さんこそ、こんな時間にどうして?」
茉莉もまさか絵美がこんな時間にここにいるとは思わなかったのだろう。
とても驚いた表情をしている。
「私は・・・なんだか眠れなかったから。それに、なんだか夜が気持ちよくて、歩いているうちにここへ」
「あ、私も眠れなかったんだ。ここ、うちの近くなんだよ」
茉莉はそう言って絵美の隣のブランコに腰掛ける。

「紅倉さんも眠れなかったの?」
「うん。なんだか目が冴えちゃってさ。はあ・・・気持ちいい・・・」
「えっ?」
「夜風が気持ちいいなぁって。夜こんなふうに出歩くことなんてなかったから、夜がこんなに気持ちいいなんて思わなかったわ」
少しずつブランコを揺らし始める茉莉。
それを見て、絵美も少しブランコを揺らす。
「私も。なんだかとっても気持ちいい」
「だね。ねえ、見て。星空がきれい」
「ほんと・・・きれい」
空には銀河が横たわって輝いていた。
「このまま朝なんて来なければいいのに・・・そうしたら学校に行かなくて済むでしょ?」
「うふふ・・・そうね」
「ああ、でもそうなると唯や希美と会えなくなっちゃうか・・・それはちょっと嫌かな」
ちょっと寂しそうな表情が浮かぶ茉莉。
確かに友人と会えなくなるのは寂しいかもと絵美も思う。
でも・・・
でも・・・
こうして隣に彼女がいてくれるなら・・・
紅倉さんと一緒なら・・・

「でも・・・黒坂さんがいてくれるならいいかな・・・」
「えっ?」
茉莉の言葉に驚く絵美。
「唯も希美も大事な友達だけど・・・なんだか黒坂さんとはとてもしっくりくる感じがするんだ。やっぱりイヴィルシスターズ同士のせいかな?」
視線は星空に向けたままの茉莉。
どことなく気恥しいのだろう。
でも、絵美は茉莉も同じ気持ちと知って嬉しかった。

「ねえ、紅倉さん」
「何?」
「今日のこと・・・ご両親には?」
「言ってない」
ふるふると首を振る茉莉。
「そう・・・」
「今日はなんだかお父さんともお母さんとも話したくなくてさ。だからさっさと部屋に引きこもりしちゃった」
「私も」
なんだか二人とも似たような状態なことに思わず笑みが浮かんでしまう。
「いい気なもんだよね。娘が教会や音楽堂を破壊しまくったっていうのにさ、のうのうと日常なんかしちゃってさ。デモンオー様がこの世界を支配したらあの人たちなんて・・・」
「えっ?」
「あっ、い、今のは忘れて。何でもない。何でもないから」
自分でも何を言ったのか気が付いて愕然とする茉莉。
なんてことを言ってしまったのか・・・

「でも・・・もうこのまま朝が来ないで、二人でここでずっとおしゃべりしていたいな・・・」
「そうね」
でもそうもいかないだろう。
明日も学校がある。

「黒坂さん」
「何?」
「今日は学校へ来てくれてありがと。もしかしたら来てくれないんじゃないかと思った」
朝、茉莉は本当にうれしかったのだ。
学校に絵美が来ていたことが。
「それを言うなら私こそ。紅倉さんが来てくれてよかった。ちょっと心配したんだから。あんまりにもギリギリに来るんだもん」
絵美にしても茉莉が教室に来た瞬間、とてもホッとしていたことを思い出す。
「明日も学校で会おうね」
「ええ。学校で」
それが別れの合図だった。
二人はブランコから立ち上がり、それぞれの家に向かう。
今からでも少しは寝ておかなくてはならないだろう。
でも、明日、時間的にはすでに今日だけど、学校に行けばまた会える。
そう思うだけで、二人はなんだか嬉しかった。

                   ******

  1. 2018/11/16(金) 21:00:00|
  2. ふたりはイヴィルシスターズ
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ふたりはイヴィルシスターズ (1)

昨日予告しました通り、今日からSSを投下いたします。

はい。
もうね、タイトルを一見しても本文を一読していただきましてもすぐにおわかりになります通り、先日来舞方がはまっておりますあの某黒と白のプリティでキュアキュアなお二人のお話に影響を受けて書いたSSです。
すでにリスペクトとかオマージュという域を超えてパロディになってしまっているかもしれません。
ですので、登場する二人のキャラ、紅倉茉莉(べにくら まり)と黒坂絵美(くろさか えみ)もどうしてもあの二人をイメージされてしまうと思いますし、作者自身そういう面がなきにしもであることは否定しませんが、あくまで別キャラと思っていただけましたら幸いです。

今日から四日間、この茉莉と絵美の二人が邪悪と闇に染まるまでの四日間をリアルでも四日間かけて投下しようと思います。
今日はその初日です。
長さとしては一番長くなりましたが、よろしければお楽しみいただければと思います。

それではどうぞ。


ふたりはイヴィルシスターズ

闇・・・
漆黒の闇・・・
何も見えず何も聞こえない。
目を開けているのか瞑っているのかもわからなくなるほどの闇。
だが・・・

「ウーム・・・ここがいい」
その奥から声が発せられる。
聞く者の腹に響き渡りそうな重々しい声。
そして、聞く者に何か恐怖心を感じさせるような声だ。

「ワルピー! ワルピーはおるか?」
その声が闇の中に声をかける。
すぐに闇の一部が動いたような気配がし、闇の中に一つの実体が現れる。
「ハッ、ここにおりますピー!」
ポフンという感じで実体化した闇は、黒くもこもこした小悪魔の姿をしていた。
毛むくじゃらの小型犬ぐらいの大きさをして、背中には蝙蝠のような羽をもち、尻尾の先が矢じりのようにとがっている。
「ワルピーよ。この世界が気に入った。余はこの世界が欲しい。この世界を手に入れてくるのだ」
闇の中にボウっと浮かび上がる青い球体。
それは宇宙空間から見た地球の姿。
闇の声はこの世界を手に入れよと命じているのだ。

「は、はっ! かしこまりましたピー。な、なれど、前の戦いで我らの手勢はすべて失われ、ご自身もほとんどのお力を失われたと。このワルピー一人ではいささか手に余りまするピー」
無理難題を押し付けられたかとやや困った声を出す小悪魔。
「案ずるな。これを授ける」
闇の声とともに、小悪魔の前に黒い鍵が現れる。
「これは?」
「この鍵はイヴィルキー。この鍵を使って忌々しい“正しい心と力を持つ者”の心をこじ開け、漆黒の闇を流し込むのだ。そうすれば、その者の心と力は邪悪と闇に染まり、わが忠実なる手駒となるであろう」
その言葉に応えるかのように、黒い鍵が鈍く輝く。
「このようなものが。これを使って闇のしもべを作り出し、そのしもべを使ってあの世界を支配するのですねピー?」
「その通りだ」
「かしこまりましたピー」
黒い鍵を尻尾で巻き付けて引き寄せる小悪魔。
心なしかその鍵を持つだけで力が湧いてくるような気がしてくる。

「それでは行ってまいりますピー」
「うむ。余も間もなく力を回復できよう。その祝いにあの世界を余に差し出すのだ」
「お任せくださいピー、デモンオー様」
鍵を手にした小悪魔は闇に向かって一礼すると、そのまま姿を闇の中へと消していった。

                   ******

「うーん・・・今日もいい天気ー。学校行くのなんてもったいないなぁ・・・あーあ・・・」
学校への道を歩きながら、思わずため息をついてしまう少女。
焦げ茶色のショートヘアが春の風に揺れている。
気候のいい今時期、教室で授業を受けているなんてつらすぎると思うのだ。
せめて校庭の木陰ででも授業してくれれば・・・
そんなことを思いながら、少女は重い足取りで学校へと向かっていく。
周囲には彼女と同じように学校へ向かう生徒たち。
皆同じ制服を着て同じ方向を向いている。
また今日も一日学校生活が始まるのだ。
もちろん友人としゃべったり遊んだりするのは大好きなので、学校に行くのは嫌いではないのだが・・・
「あーあ、授業さえなければなぁ・・・」
と、どうしても思ってしまうのが、この少女だった。

「キャッ!」
「わっ!」
突然前につんのめりそうになる少女。
歩く先にしゃがんでいた女子生徒がいたことに気が付かなかったため、そのままぶつかるような形になってしまったのだ。
幸い彼女のほうは転ばずに済んだのだが、背後から押すようになってしまったため、しゃがんでいた女子生徒のほうは前に転んでしまう。

「ご、ごめんごめん。大丈夫?」
慌てて手を差し出し、転んだ女子生徒を助け起こす。
「あ、はい、大丈夫です。こちらこそスマホを取り出したときに財布が落ちちゃって、それを拾おうとしゃがんでいたから」
助け起こされた女子生徒がにこやかに笑顔を見せる。
栗色のやや長めの髪をして、くりくりしたかわいい目に眼鏡をかけている、どちらかというとおとなしそうな少女だ。
「あ、同じクラスの? 黒坂(くろさか)さんだっけ?」
少女は助け起こした女子生徒に見覚えがあることに気が付いた。
「はい。黒坂です。あなたは紅倉(べにくら)さんでしたよね?」
「うん。紅倉茉莉(まり)。ごめんねホント。今日も授業やだなーって考えて歩いていたものだから気が付かなくて」
思わず頭をかく茉莉。
焦げ茶色のショートの髪がスポーティな雰囲気を出している。
「あ、その気持ちわかります。こんないい天気じゃ授業なんてやってられないって感じですよね」
「でしょでしょ。やってらんないよね。あ、遅れちゃう。行こう行こう」
「はい」
始業時間に遅れそうになり、少し小走りで学校に向かう二人の少女。
それを校舎の屋上から眺めている姿があった。

「むぅ・・・ここからこの街の様子を確認しようと思ったけど、まさかこんな早々に“正しい心と力を持つ者”が見つかるとは。しかも二人とも女の子だピー。あんな少女が“正しい心と力を持つ者”とはピー」
黒い毛の塊のようなものに蝙蝠の羽と矢じりのような先端の尻尾を持つ小悪魔が、女性教師の肩に乗っている。
今しがた校舎に入っていった二人の少女たち。
その少女たちが“正しい心と力を持つ者”であることを、小悪魔ははっきりと感じ取ったのだ。
「あの娘たちはお前の知っている娘たちかピー?」
「はい・・・私のクラスの子たちです・・・」
やや生気のない声で返事をする女性教師。
若く美人だが、その目はぼんやりとうつろだった。
「それはちょうどよかったピー。あとはあの娘たちにこの鍵を使うだけだピー」
黄色い目を輝かせ、ニヤッと笑みを浮かべる小悪魔。
やがて小悪魔は姿を消し、うつろなまなざしの女性教師は校舎の中へと消えていった。

「起立! 礼!」
一日の授業が終わり、終業のホームルームも終えて、教室内にはホッとした空気が流れていく。
「終わったー」
思わずそう口にしてしまう茉莉。
やっと授業が終わり、これから楽しい放課後である。
すでに今日の予定は昼休みの間に決まっていた。
「唯(ゆい)、希美(のぞみ)、したくできたら行くよー」
「うん!」
「ええ!」
茉莉の声に二人の少女たちが返事をする。
これから三人でお茶をしに行くのだ。
そのあとは流れでカラオケというのもあるかもしれない。
そう思うと茉莉の心は浮き立ってくる。

「あ、言い忘れてたわ。黒坂絵美(えみ)さん、紅倉茉莉さん、二人とも放課後ちょっと残ってちょうだい。やってほしいことがあるから」
その時教室の扉が開き、ホームルームを終えて出て行ったはずの担任の鷹紀由華(たかのり ゆか)が戻ってきて声をかける。
「あ・・・は、はい」
鞄の中身を確認し帰り支度をしていた絵美が、驚いたように顔を上げる。
「え、ええええ?」
一方の茉莉は突然のことに思わずそう声を上げていた。

「あ、あの、先生。今日は私用事があって・・・明日とかじゃいけません?」
すでに予定を入れていた茉莉が、何とかならないかお願いしてみる。
「ダメです。あなたたち二人にやってほしいことがあるの。残りなさい。いいわね」
いつになくきつい声で言い放つ由華。
だが、その目はどこかうつろで遠くを見ているような感じもする。
「は、はぁい・・・とほほ・・・」
がっくりと机に突っ伏してしまう茉莉。
「あちゃー、災難だったね、茉莉」
「先に行って待っているから、終わったら来てね」
茉莉に声をかけられていた二人が、今度は逆に茉莉にそう声をかけて手を振って去っていく。
「うー、なんで私がぁ・・・」
手を振りながらうらやましそうに二人を目で追うが、残れと言われたものは仕方がない。
さっさと先生の用事とやらを済ませて帰るしかない。
「しょうがないなぁ・・・」
ぶつくさ言いながら席を立つ茉莉を見て、思わず絵美は顔がほころんでいた。

校舎のはずれにあるほとんど使われていない倉庫の前に二人は立っている。
「なんでぇ? なんでこんな使っていない倉庫の中の片付けを、私と黒坂さんの二人でやらないといけないのぉ? 私何か悪いことしたかなぁ? あっ、もしかして、今朝黒坂さんを突き飛ばしちゃったから?」
目の前にある重々しい倉庫の扉を前に、がっくりと肩を落とした茉莉が自分に何か落ち度があったのかと自問自答している。
「いや、それなら突き飛ばされた私も一緒というのはおかしいと思うから違うんじゃないかな?」
もうさっきからこの調子でぶつくさと文句を言っている茉莉が、絵美は面白く感じて仕方がない。
紅倉さんってこんなに表情豊かで面白い人だったんだ・・・
と、絵美は思う。
二年生になってクラス替えがあってまだ日が浅く、クラスの半分ぐらいの人とはまだよくわかりあえていない。
だから、普段元気いっぱいで活動的に見える茉莉が、こうしょげかえっているのは新鮮で、言葉は悪いが面白く感じていたのだ。

「そっかぁ・・・そうだよねぇ。でも今朝はホントごめんね」
「ううん、もういいですから。あれは私も突然しゃがみこんだのがいけなかったし。おかげでこうして紅倉さんとお話しできるようになったし」
笑顔を見せて茉莉を安心させる絵美。
「あ、そういえば私も黒坂さんとこうやってお話しするのは初めてだ。よろしくね」
同じクラスとは言えども、タイプの違う絵美に対しどことなく遠いものを感じていた茉莉だったが、今朝の一件でなんだか一気に距離が縮まったような感じがする。
「こちらこそよろしく、紅倉さん」
絵美もぺこりと頭を下げる。
お互いクラスメイトではあるものの、なんだか初対面同士の挨拶のようだ。

「と、とにかく早く済ませてしまいましょう。紅倉さんは棚本(たなもと)さんと与瀬場(よせば)さんを待たせているんでしょ?」
なんだか倉庫の前で頭を下げあっていることに気恥しくなった絵美が扉に向かう。
「あっ、そうだった。早くしなくちゃ」
茉莉もポケットから担任に預かった倉庫の鍵を取り出し、扉の鍵穴に差し込んで鍵を開ける。
重たい扉を二人でこじ開けて中に入ると、埃臭い空気のにおいが広がった。

二人が入り込んだ倉庫の中は真っ暗だった。
「暗いね、電気電気」
茉莉が扉の横にある照明のスイッチをオンにする。
だが、倉庫の中は闇のままだ。
「あれ? おかしいね。故障かな?」
茉莉が何回もスイッチを入り切りしてみるが、照明が灯る気配はない。
「ダメだぁ。電気点かないや」
「おかしいわ・・・」
つぶやくように言う絵美の言葉に茉莉が振り向く。
見ると、暗い中でもわかるぐらいに絵美の顔が青ざめていた。
「黒坂さん?」
「おかしいわ」
「うん。どっか故障しているんだと思う。この暗さじゃ片付けは無理だね」
「ううん・・・そうじゃないの。いくら倉庫の中でも、扉が開いているのに外からの光が全く入らないなんてことがあると思う?」
「えっ?」
茉莉も気が付く。
確かに倉庫の中は薄暗いどころか、漆黒の闇なのだ。
いくらなんでも確かにおかしい。

「いったん出よう」
「ええ」
状況のおかしさに気が付いた二人が入り口から出ようとした瞬間、倉庫の扉が音を立てて勢い良く閉まる。
「わぁっ!」
「きゃあっ!」
はじかれるようにして尻餅をついてしまう二人。
「あいたたた」
「だ、大丈夫?」
茉莉に声をかけつつ自分もお尻をさすりながら立ち上がる絵美。
「うん、大丈夫。それにしてもいったい?」
茉莉も立ち上がって、倉庫の扉を開けに行く。
「あ、あれ? 開かない」
「う・・・ほ、ほんと・・・開かない」
両開きの扉の逆側を開けようとする絵美。
だが、二人がどう力を込めても、倉庫の扉はびくともしない。

「だ、ダメだぁ、おーい! 誰かぁ! 開けてぇ!」
「どなたかいませんかぁ! 出られなくなっちゃったんですぅ!」
ドンドンと扉をたたいて声を上げる二人。
だが、もともと校舎のはずれにある倉庫なので、めったに人も通らない。
外から開けてもらえる様子はなかった。
「こうなったら・・・」
茉莉が持ってきていたスマホを取り出す。
「これで誰かに連絡を・・・って、電波来てない? ウソ・・・」
「私のもだわ」
絵美も自分のスマホを確認するが、電波が届いてないことがわかる。
「スマホもダメなんてどうしよう・・・」
がっくりと肩を落とす茉莉。
「誰かぁー! お願いです。ここから出してください。閉じ込められちゃったんですー」
絵美がもう一度扉をたたいて外に向かって呼びかけるが、外からの返事はなかった。

「無駄だピー。ここはすでに閉ざされたピー。もうお前たちは外には出られないピー」
倉庫の奥の闇の中から声がして、黄色く輝く二つの目が二人を見つめてくる。
「な、何?」
「な、何なの?」
二人が驚いていると、黄色い目が近づいてきて、闇の中だというのに姿が見えるようになってくる。
それは黒い毛でできた毛玉のようなものに、蝙蝠のような羽と先端が矢じりのようになった尻尾を持つもこもこした物体で、それが闇の中で浮いているのだった。
「ぬ、ぬいぐるみ? ぬいぐるみがしゃべっている?」
思わず茉莉がそう言ってしまうのも無理はなく、外見だけで言えばぬいぐるみに見えないこともない。

「ぬいぐるみじゃないピー。われは邪悪と闇の世界をつかさどるデモンオー様にお仕えする使い魔で、ワルピーという名があるピー!」
もこもこしたぬいぐるみのような小悪魔が自分の名を告げる。
「柿ピー?」
「ちょ、ちょっと」
茉莉の返しに思わず苦笑する絵美。
こんな状況なのによくそんな返しができるものだと思うのだが、おかげで恐怖心がいくらか和らいだのも事実だ。
「柿ピーじゃないピー! ワルピーだピー!」
どうやら名前を間違えられて怒っているようではあるが、外見がぬいぐるみのようなので、あんまり凄みは感じない。
「そ、そのワルピーさんが私たちを閉じ込めてどうしようというのですか?」
「わ、私たちなんか食べてもおいしくないんだからね!」
キッとワルピーをにらみつける茉莉。
食われるにしたってただで食われるつもりはないのは明らかだ。

「食べないピー! われはお前たちをデモンオー様のしもべにするべくこの世界に来たんだピー!」
「デモンオー様のしもべ?」
「デモンオー様のしもべに?」
思わず茉莉と絵美の言葉が重なる。
「な、何よそれ! デモンオーだか海賊王だか知らないけど、そんなののしもべになるなんて願い下げだわ!」
「私もです! 邪悪と闇の世界の王のしもべなんて冗談じゃないわ!」
茉莉も絵美も強い口調で否定し、首を振る。
邪悪と闇の王のしもべなんて、考えただけでもぞっとすると二人は思うのだ。

「やかましいピー! お前たちをそのままにしておくわけにはいかないんだピー! お前たちはあの忌々しい“正しい心と力を持つ者”なのだピー! いずれお前たちは覚醒し、その力でデモンオー様の目障りな存在になるんだピー!」
「“正しい心と力を持つ者”?」
「それが私たちだっていうの?」
思わず顔を見合わせる茉莉と絵美。
自分たちが“正しい心と力を持つ者”だなんて思ったこともなかったのだ。

「な、何か間違ってませんか? 私、別に“正しい心と力を持つ者”なんかじゃないと思いますけど」
「そ、そうだよ。私なんてお母さんにお手伝いしろって言われても、宿題があるからってごまかしてしなかったりとか、お兄ちゃんとしょっちゅうケンカしてはお母さんに怒られたりとかしてるし・・・」
「あ・・・そうなんだ」
茉莉が自分は違うという否定の根拠として上げたことに、なんだか笑いがこみあげてくる絵美。
知り合ったばかりといえるような状況だったが、何となく紅倉さんらしいと思ってしまう絵美だった。

「間違いじゃないピー! われにもお前たちの力を感じるピー。お前たちはそのまま放っておけば、きっと手ごわい相手になるピー。だから今のうちに心を邪悪と闇に染めてしまうんだピー!」
「心を邪悪と闇に?」
「そ、そんな・・・いやです! そんなのいや!」
「私だっていやだ! 冗談じゃない! ふざけるな!」
絵美は思い切り首を振り、茉莉はさらに強くワルピーをにらみつける。
「お前たちの意志など関係ないピー! それに心が邪悪と闇に染まれば、お前たちは喜んでデモンオー様のために働くようになるんだピー!」
もこもこの小悪魔が赤い口にニィッと笑みを浮かべる。

「ふっざけるなぁっ!」
「あっ、紅倉さん!」
絵美が止めようと呼びかけるのも構わず、ワルピーにつかみかかっていく茉莉。
おそらく家ではいつも兄と言い合いになったりしたときには、こうして手が出てしまうのだろう。
だが、その突進をひょいとかわして、茉莉の手の届かない高さに浮かび上がるワルピー。
「このぉ! 好き勝手なことばかり言って! 降りてきなさいよ!」
「いやだピー! 今からこれでお前たちの心を邪悪と闇に染めてやるんだピー!」
そう言ってワルピーは尻尾を使ってデモンオーにもらった黒い鍵を取り出す。
「えっ?」
「何? 鍵?」
突然現れた黒い鍵に戸惑う二人。
だが、ワルピーは構わず黒い鍵を宙に浮かせる。
「イヴィルキーよ! この二人の“正しい心と力を持つ者”の心をこじ開け、邪悪と闇を注ぎ込むんだピー!」
ワルピーの呼びかけに応えるように、黒い鍵から二筋の闇の筋が二人の胸へとのびていく。
「えっ?」
「きゃぁっ!」
闇の筋は二人の胸に届くと、そこに黒い鍵穴を作り出す。
「な、なんなの?」
「ええ?」
自分の胸に現れた黒い鍵穴に驚く二人。
そして、その鍵穴に呼応するかのように、黒い鍵も二つに分裂したかと思うと、そのまますうっと二人の胸の鍵穴にそれぞれがはまり込んだ。

「オープンロックだピー!」
ワルピーがそう叫ぶと、二人の胸に差し込まれた黒い鍵がくるりと回転する。
そしてカチッという音とともに、二人の胸に黒く丸い穴が開く。
「ダークネスインだピー!」
突然轟音とともに二人の足元から黒い闇が湧き起こり、胸の穴へと吸い込まれていく。
「うわああああ!」
「きゃああああ!」
闇が入り込んでくる衝撃に思わず悲鳴を上げてしまう茉莉と絵美。
それと同時に、穴に入りきらない闇が二人の躰を包み込み、黒い球体へと化していく。
「ケケケケ・・・さあ、闇に包まれて生まれ変わるのだピー」
二人の姿が闇に包まれて見えなくなったのを確認し、満足そうにそうつぶやくワルピー。

やがて闇の球体がしぼみ始め、二人の姿が現れる。
一人は赤い衣装を、そしてもう一人は黒い衣装を身に着けていた。
「赤の邪悪! イヴィルマリィ!」
「黒の邪悪! イヴィルエミィ!」
「「ふたりはイヴィルシスターズ!」」
「世界を邪悪と闇に染めるため!」
「デモンオー様の目障りなものは!」
「「私たちが排除します!」」
二人は声を合わせて名乗りを上げ、ぐっとこぶしを握り締めてファイティングポーズのような姿勢をとる。
それは先ほどまでとは全く違った茉莉と絵美の姿だった。

「えええええ? 何これ何これ? 私何を言ってるの?」
「きゃあああ、な、なんなんですか? なんで私こんな格好を?」
ふとわれに返り、思わず今の自分の姿に驚いてしまう二人。
それも無理はない。
今の二人は学校の制服姿ではない。
首から下はノースリーブタイプのエナメルのようなつややかなボンデージレオタードで包まれ、二の腕から先を長手袋で覆い、太ももから下は膝上まで覆うロングブーツを履いている。
二人とも同じデザインの衣装ではあるが、イヴィルマリィのほうは赤、イヴィルエミィのほうは黒だった。
そして髪の色もそれに合わせて変化しており、焦げ茶色だった茉莉の髪は燃え立つような赤いショートに、栗色だった絵美の髪はカラスの濡れ羽のような漆黒のロングに染まっている。
さらにその髪を押さえるようにカチューシャが付けられていて、こちらは衣装とは逆にイヴィルマリィが黒、イヴィルエミィが赤だった。
ふたりに共通なのは冷たさを持ちやや吊り上がった目に付けられた黒のアイシャドウと、唇に真っ赤に塗られた口紅のみ。
イヴィルエミィは絵美の時にはかけていた眼鏡も消えていた。

「これはとても素敵だピー。まさに邪悪と闇の魔女にふさわしい姿だピー。デモンオー様もきっとお喜びになるに違いないピー」
闇の中から現れた二人の魔女の姿にワルピーは満足する。
「そ、そうかなぁ? 魔女というよりもこれってSMの女王様みたいだよぉ」
「えすえむのじょおうさまって?」
自分の姿を見下ろしてついつぶやいてしまったイヴィルマリィに、イヴィルエミィが問いかける。
「あ、その・・・えと・・・男の人をいじめて喜ばせる職業の女性・・・かな?」
「ふーん・・・イヴィルマリィったらよく知ってるのね」
「え? あ・・・いや、お兄ちゃんだから。お兄ちゃんの持っていた本に出てただけだから。お兄ちゃんの本で知っただけだから!」
慌てて首をぶんぶんと振るイヴィルマリィ。
「うふふ・・・そんな慌てることないのに」
くすっと笑ってしまうイヴィルエミィ。
邪悪と闇の魔女の姿に変わったとはいえ、全体的な面影は茉莉と絵美そのものである。
そのため、その笑みは邪悪さよりもかわいらしさを感じさせるものだった。

「よし、それではこれからお前たちにデモンオー様のために働いてもらうピー」
二人のイヴィルシスターズを前に指示を下そうとするワルピー。
これからこの二人を使って、この世界を邪悪と闇に染めなくてはならないのだ。
「ふっざけるなぁ!」
「ピ?」
いきなりイヴィルマリィに怒鳴りつけられ、目を丸くするワルピー。
「誰がデモンオー様のためになんて働くか!」
「そうよ! いくらデモンオー様のためとはいえ、世界を邪悪と闇に染めるなんてできるわけないじゃない! そんなことより私たちを元に戻しなさい!」
イヴィルマリィだけじゃなく、イヴィルエミィもキッとワルピーをにらみつけてくる。
先ほどまでの二人とは違い、今の二人には凄みがあった。

「むむっ? これはどうしたことだピー? 二人とも邪悪と闇に心を染められたはずじゃなかったのかピー?」
心を邪悪と闇に染められたのであれば、デモンオー様に喜んでお仕えするはず。
だが、今の二人はそうではないようだ。
「私たちは邪悪と闇になんか染まってない!」
「私たちは私たち。私もイヴィルマリィも簡単に染められたりはしないわ!」
きっぱりと言い放つ二人。
「むぅ・・・自分たちのことをイヴィルマリィやイヴィルエミィというあたり、全く染まってないわけではないようだが・・・さすが“正しい心と力を持つ者”ということかピー。となれば、何度か繰り返して染めていくしかなさそうだピー」
何度か繰り返すことで二人の闇も広がっていくはず。
そうなれば、やがては心が邪悪と闇に染まり、完全なるイヴィルシスターズとして完成するだろう。

「ならばこうするまでだピー!」
ワルピーの黄色い目がギラッと輝く。
「あ・・・」
「え・・・」
とたんにワルピーをにらみつけていた二人の目から輝きが失われる。
「ケケケケ・・・これでいい。さあ、お前たち、われの命に従うんだピー」
「はい・・・」
「命令に従います・・・」
うつろな目でワルピーに返事をするイヴィルマリィとイヴィルエミィ。
ワルピーによって精神支配されてしまったのだ。
「さあ、こっちに来るんだピー」
「はい・・・」
「はい・・・」
ゆっくりとワルピーのもとへ向かう二人。
やがて二人はワルピーとともに闇の中へと姿を消した。

この街の郊外にある大きな教会。
礼拝堂には休日ともなれば多くの人がやってくる。
教会自身も西洋風の見栄えのする建築物で、観光でやってくる者も多い。
その教会の塔の上、その上空に黒い球体が現れる。
まだ夕暮れには時間があるため通りを通る人も多く、人々はいきなり現れた黒い球体に驚いていた。

「あれを見るピー」
黒い闇の球体の中、ワルピーが外の光景を映し出す。
そこには人々が驚きの表情で上空を見上げる中、大きな教会が映っていた。
「この世界における信仰心ある連中の集まる場所だピー。この近郊では一番大きなものだピー」
ワルピーの言葉をうつろな表情で聞いている赤と黒の二人の少女。
おそらく二人がいつもの状態であれば、その教会が学校の近くにあっていつも見慣れているものだったことに気が付いただろう。
「あれを壊すんだピー」
無言でこくりとうなずく二人。
「あのようなものはデモンオー様にとっては目障りだピー。世界で崇拝されるべきはデモンオー様お一人であるべきだピー。そのほかのものを信仰する場所など必要ないピー。わかるな?」
再び二人がこくんとうなずく。
「それじゃ行くんだピー! デモンオー様の目障りなものをお前たちで排除するんだピー!」
「デモンオー様の目障りなものは・・・」
「私たちが排除します・・・」
抑揚のない口調でそういうと、赤と黒の少女たちは闇から外へと飛び出した。

「ううううあああああああああああ!」
「えええええええええいいいいい!」
それは突然荒れ狂った赤と黒の稲妻だった。
人々のみている前で、黒い球体から突如現れた二筋の赤と黒の稲妻が、教会を直撃したのだ。
「あはぁ・・・あは・・・あははははは」
「はぁん・・・ああん・・・あん・・・」
頬を紅潮させて教会の建物を破壊していく二人の少女。
殴り、蹴るごとに教会は崩壊していく。
二人のまとった赤と黒の闇のオーラが、逃げ惑う人々の目にはまるで稲妻のように映っていたのだった。

「行くよ、イヴィルエミィ」
「ええ、イヴィルマリィ」
二人が顔を見合わせてうなずき合う。
「レッドウィップ!」
「ブラックウィップ!」
二人の右手に赤と黒の闇の鞭が現れ、二人はそれを振り回す。
まるで竜巻でも通ったかのように、二人の通った後には瓦礫の山ができていく。

「よし、もういいだろうピー。戻ってくるピー」
宙に浮いている黒い球体からワルピーの声が二人に届く。
「はい・・・ああ・・・」
「はい・・・あふぅ・・・」
二人は崩壊した教会の残骸を見て、頬を赤く染めながら黒い球体内へと戻っていく。
「ご苦労だったピー。これで一つデモンオー様の目障りなものが消え去ったピー」
「はい・・・デモンオー様の目障りなものは排除します・・・」
「はい・・・デモンオー様のため・・・」
ほうっと吐息を漏らす二人。
それはまるで今まで官能を味わっていたかのようですらある。
「どうだピー? 気持ちよかっただろうピー?」
「はい・・・気持ちよかったです・・・」
「とても気持ちよかったです・・・」
相変わらず表情はうつろだが、それでも気持ちよさそうな二人だった。
「またお前たちには働いてもらうピー。とりあえず元に戻るピー」
「はい・・・」
「はい・・・」
二人の胸から黒い鍵が現れてワルピーの元へと戻っていく。
それと同時にすうっと二人の姿が元の紅倉茉莉と黒坂絵美に変化する。
そしてそのままくたっと倒れこんだ。
「まだ躰が適応していないから消耗が激しいみたいだピー。だが、これを繰り返していけば、二人は身も心も完全なるイヴィルシスターズとなり、デモンオー様に自らお仕えするようになるんだピー」
先端が矢じりのようになった尻尾を二本の黒い鍵に巻き付け、ワルピーはにやりと笑みを浮かべていた。

                   ******

「う・・・うーん・・・」
ゆっくりと目を開ける絵美。
気が付くと、かなり日が傾いた空が目に入る。
「あれ? 私・・・」
躰を起こすと、そこは片付けるように言われた倉庫の扉の前で、そばにもう一人倒れているのが分かった。
「べ、紅倉さん。紅倉さん」
倒れている茉莉を揺さぶってみる。
躰は温かく、命に別状はなさそうだ。
「紅倉さん!」
「う・・・うーん・・・お兄ちゃん・・・それは私のだってばぁ・・・」
絵美が少し声を大きくすると、茉莉が寝言のようなことを言う。
どうやら何かの取り合いをしているのかも知れない。
「紅倉さん、起きて!」
「ん・・・あ?」
絵美がまた少し強く揺さぶると、茉莉がゆっくりと目を開ける。
「あれ? 黒坂さん? なんでうちに?」
「うちじゃないです。まだ学校です」
「えっ?」
慌てて起きて周囲を見る茉莉。
確かにここは学校で、しかも片付けを言いつけられた倉庫の前だ。
なんでこんなところで寝ていたのだろう?

「私・・・なんでこんなところで寝てたんだろう?」
「わからない。なんだか悪い夢を見てたような気がする」
ゆっくりと首を振る絵美。
「うん・・・でも・・・でもなんだか気持ちよかった気もする」
「あ・・・うん・・・私も・・・」
二人は思わず顔を見合わせる。
もしかして二人とも同じ夢を見ていたのだろうか?

「あなたたち、何をしているの?」
「ひえっ」
「キャッ」
突然声をかけられて驚く二人。
見ると、校舎のほうから担任の鷹紀由華がやってくるところだった。
「鷹紀先生」
「す、すいません。ま、まだ何もやってなくて」
慌てて立ち上がり、頭を下げる茉莉。
自分たちが倉庫の片付けを言いつけられていたのを思い出したのだ。
「す、すみません」
絵美も茉莉と同じように頭を下げる。
それにしても、どうして二人して眠り込んでしまったりしたのだろうか・・・

「ああ、それはもういいわ。早く帰りなさい」
「えっ?」
「えっ?」
二人はきょとんとする。
だってまだ何もやっていないのだ。
倉庫の片づけはしなくていいのだろうか?
「で、でもまだ何も」
「いいのよ。もう用は済んだとの仰せなの」
無表情で二人を見る由華。
その目はどこかうつろだ。
「仰せ?」
「いいから帰りなさい」
やや強めの口調で言い放つ由華に、絵美も茉莉もおとなしく従うしかなくなってしまう。
「帰ろう、黒坂さん」
「え、ええ・・・」
まだ何か言いたげにしていた絵美の手を取り、茉莉は校舎のほうへ歩き出す。
やがて二人が校舎に消えると、由華の肩にワルピーが姿を現した。

「それでいいんだピー」
「はい・・・ワルピー様・・・」
小悪魔が肩に乗っているにもかかわらず、全く表情を変えない由華。
「あの二人もいずれデモンオー様の忠実なしもべとなるピー。お前がわれのしもべになったように」
「はい・・・ワルピー様」
「お前の心はもう一度くらいかわいがってやれば完全に闇に染まる。そうなれば、お前は自らわれに従うようになるピー。うれしいかピー?」
「はい・・・もちろんです、ワルピー様」
そう答える由華の目は、先ほどとは違って冷たい輝きを見せ始めているのだった。

「はあ・・・なんだったんだろうね、結局」
釈然としないものを感じはするものの、帰れというからにはとっとと帰ろうと思うのが茉莉である。
「何がどうなっているのかしら・・・」
絵美も茉莉同様にもやもやしたものを感じながら、学校の校門を出る。
「まあ、倉庫の片付けをしなくてよくなったからラッキーじゃない?」
「それはそうだけど・・・」
そういいながら、二人は通りへ通じる道を歩いていく。

通りに出たところで、二人の前をけたたましくサイレンを響かせながら、消防車や救急車が走り去っていく。
それも数台が続いており、何かあったらしい。
消防車や救急車だけではなく、パトカーも混じっている。
「何か、あったのかしら?」
絵美が消防車の向かった方向を見てみるが、現場が離れているのか、特に煙などが見える様子はない。
「さあ・・・」
茉莉も同じ方を見るが、やはり何もわからない。
とはいえ、消防車などが向かった方向は家へ向かう方角でもあるので、いずれ何か見えてくるかもしれない。
「あ、私家がこっちなんだけど、黒坂さんは?」
「あ、私もこっちよ」
「えっ、そうなんだ? 私7丁目なんだけど」
「私6丁目」
「あ、近いんだ」
「ホントね」
お互いの家の近さに驚く二人。
もしかしたらこれまでも気が付かなかっただけで、道ですれ違っていたりしていたのかもしれない。

「じゃあ、近くまで一緒に帰ろ」
「ええ、それはいいけど・・・紅倉さん、棚本さんと与瀬場さんと約束があったんじゃ?」
「あ!」
言われて気が付く茉莉。
そうだった。
希美と唯と遊ぶ約束していたのだ。
すっかり忘れていたことに青ざめる。
茉莉はすぐにスマホを取り出してLINEを送信する。

しばらくスマホとにらめっこしていた茉莉だったが、やがてその手が震えてくる。
「紅倉さん?」
何となくさよならを言いそびれてその場に残っていた絵美が、茉莉の様子にただならぬものを感じ、思わず声をかける。
「黒坂さん・・・」
「はい?」
わなわなと震えるように青ざめた顔をしている茉莉。
どう見てもただ事ではない。
「何かあったの?」
「来て!」
突然絵美の手をつかんで走り出す茉莉。
「キャッ! ど、どうしたの?」
絵美もそれに引っ張られるように一緒に走り出す。
「いいから来て!」
「う、うん」
何かただ事ではないと思いながら絵美は茉莉と一緒に走っていく。
その行先は、先ほど消防車や救急車が向かった方向だった。

「そ・・・んな・・・」
「う・・・そ・・・」
人だかりをかき分けて規制線のところまでたどり着いた二人は、目の前の光景に絶句する。
そこにはいつも見慣れていた観光名所ともなっていた教会が跡形もなく崩れ去り、瓦礫の山となっていたのだ。
「唯がLINEで言ってた通りだ。教会が崩れて大変なことになっているって・・・」
「な、何これ?」
絵美も目の前の光景に愕然としている。
規制線の中では大勢の警官や消防士たちが必死で救助作業に当たっている。
おそらく瓦礫の下にまだ多くの人が埋まっているのだろう。

「そんな・・・あれは夢じゃなかったの?」
「やっぱり・・・黒坂さんもこの教会を壊す夢を?」
「えっ? 紅倉さんもなの?」
二人はお互いの顔を見合わせる。
さっきまで妙な悪夢を見たように感じていたものが、夢ではなかったというのか?
「夢じゃ・・・なかったんだ・・・」
「そんな・・・これを・・・私たちが・・・?」
がっくりと膝から崩れ落ちる絵美。
赤色回転灯の光が時々彼女の眼鏡に反射していた。

「黒坂さん・・・」
支えるようにして彼女を立ち上がらせる茉莉。
彼女自身も相当にショックを受けていたが、それ以上にショックを受けたように見える絵美を放っておけないのだ。
「とりあえずこっちへ」
絵美に肩を貸して人ごみの中から連れ出す茉莉。
「ねえ・・・教えて・・・」
「えっ?」
「ねえ・・・教えて・・・あれは私たちがやったことなの?」
茉莉の肩に身を預けながら、絵美がポツリとそうつぶやく。
「あれは・・・私たちが・・・やったことなの?」
茉莉は違うと言いたかった。
だが、そういうにはあの夢はあまりにも生々しく記憶に残りすぎていた。
むしろ夢じゃなかったというほうが正しいのだろう。

「ねえ! 教えてよ! あれは私たちがやったことなの?」
思わず口調がきつくなる絵美。
わかっているのだ。
あれが夢ではなかったことが。
わかっているのだ。
あの惨劇は自分がやったことなのだと。
だが、認めたくはない。

「たぶん・・・そう・・・」
茉莉の言葉に息をのむ絵美。
それは聞きたくない言葉だったが、正しい言葉でもあった。
「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁ!」
絵美の悲鳴が響く。
「どうして? どうしてよ? 私たちがどうしてあんなことをしなくちゃならないの? 私たちが何か悪いことでもした? ねえ、どうして?」
絵美が泣きながら茉莉の肩をつかんで揺さぶる。
それははからずも倉庫の前で片付けを言いつけられた茉莉が言っていたのと同じセリフだ。

「どうしてって・・・」
そんなこと茉莉にもわかるはずもない。
わかっているのは、自分たちが何か得体のしれないものに操られてあの教会を破壊し、多くの人を傷つけてしまったということだけ。
「教えてよ、紅倉さん!」
泣きながら揺さぶってくる絵美に対し、茉莉は自分こそ泣きたいのだと言いたかった。

「・・・ごめんね」
茉莉を揺さぶるのをやめ、眼鏡をはずして涙をぬぐう絵美。
「ごめんね。紅倉さんだって私と同じように巻き込まれただけだもん、わかんないよね。ごめんね」
「黒坂さん・・・」
「あー、泣いたら少し落ち着いた。あれ、やっぱり私たちがやっちゃったんだよね」
少し笑顔を見せる絵美に茉莉は心を痛める。
相当に無理をしているのだろう。
それはたぶん自分もなのだ。
「悪いことしちゃったんだから、責任は取らないといけないよね・・・」
「責任?」
責任とはいったい?
「うん。私・・・警察に自首してくる」
「警察に?」
「うん。教会を壊したのは私ですって自首する。あっ、紅倉さんは付き合わなくていいよ。あくまで私一人でやったことにするから」
「えっ?」
茉莉は驚いた。
彼女は・・・黒坂さんはあの破壊を自分一人で背負い込むつもりなのだ。
そんな・・・

「黒坂さん・・・それはダメだよ」
茉莉はゆっくりと首を振る。
「紅倉さん・・・」
「それはダメだよ。あれは私たち二人がやったことだもの。責任は二人で取らないと・・・」
「で・・・でも・・・」
「あーあ・・・お父さんやお母さんに怒られちゃうなー。お兄ちゃんには何言われるか・・・」
努めて明るく振舞う茉莉。
そうしないと自分でもおかしくなってしまいそうだ。
「紅倉さん・・・」
「さ、行こう。黒坂さん」
絵美の手を取る茉莉。
「ええ。行きましょう」
絵美も茉莉のその手をぐっと握りしめた。

トボトボと肩を落として道を歩いていく二人の少女。
警察に行った結果は散々だった。
まともに取り合ってもらえなかったばかりか、子供のたわごととして追い払われてしまったのだ。
あの教会の倒壊は、竜巻のような局地的な暴風とそれに伴う落雷によるものであり、人為的なものとは思われていないらしい。
そのため、二人の訴えは全く取り上げられなかったのだ。
それはそうだろう。
台風や地震で大きな被害が出たとして、その台風や地震は私がやったものだから捕まえてくださいなどと言ったって信じてもらえるはずがない。
なおも詰め寄ろうとする絵美だったが、茉莉はそれを制し、結局二人は交番を後にするしかなかった。

「ダメ・・・だったね・・・」
ぽつりとつぶやく茉莉。
「うん・・・」
絵美も力ない声で返事をする。
「仕方ないよ・・・自分自身のことだからまだ信じられるけど・・・そうじゃなかったら私だって信じられないもん」
「でも・・・でも・・・あんなことになって大勢の人がけがをして・・・死んだ人もいるかもしれないのに・・・赦されることじゃないわ」
「そうだけど・・・」
自分の手を見る茉莉。
感触がまだ残っている。
教会の壁を殴り壊したときの感触。
赤い鞭をふるった感触。
全部思い出すことができる。
そして・・・
そして・・・
それがとても気持ちよかったことも・・・
でも・・・
そんなこと感じるなんてどうかしている・・・

「あ、あのさ・・・この近くにおいしいドーナツのお店があるの。食べに行かない?」
少し空気を変えたくて、茉莉は絵美を誘ってみる。
甘いものでも食べれば、少しは気分も変わるだろう。
結局今日は唯や希美と遊ぶことはできなかった。
あの騒ぎで二人も早々に切り上げて帰ったらしい。
巻き込まれなかったのはよかったと思うけど、二人の顔を見られなかったのは残念だ。

「ううん。今日は家に帰ります。ごめんなさい」
茉莉の誘いに絵美は首を振る。
今は何も食べたくないのだ。
「そう・・・」
ちょっとがっかりする茉莉。
「家に帰って、パパとママに相談してみます。どうなるかわからないけど・・・明日学校に行けないかもしれないけど・・・」
「そんな・・・来てよ、学校。待ってるから」
茉莉は同じ体験をした者として、彼女が学校に来なかったらと思うと心細くて仕方がないのだ。
「うん。ありがとう紅倉さん。それじゃ今日はここで。さようなら」
少し寂しげな笑みを見せて手を振る絵美。
「さよなら。明日、待ってるから。待ってるからねー!」
背を向けて去っていく絵美に向かって茉莉も手を振り声をかける。
「うん」
絵美が最後に振り向いて笑顔を見せてくれたことが、茉莉は何とも言えず嬉しかった。

                   ******

  1. 2018/11/15(木) 21:00:00|
  2. ふたりはイヴィルシスターズ
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そろっちゃった

今日、仕事終わって帰ってきましたら、間もなく郵便屋さんが大量の郵便物を届けに来ましたのです。

Dr70F6NVAAAJZ9O.jpg
いったい何事? Σ(°ω°)

中身を確認。

Dr70U74U8AIig4F.jpg
あっ! (°ω°)!!

先日アマゾンに注文していた奴がまとめてドカッとやってきました。

Dr70f6gU0AARvfn.jpg
なんと、これで「ふたりはプリキュア」のDVD(レンタル落ちのではありますが)13巻すべてそろいましたー。ヽ(´▽`)ノ
セット売りのものではなく、単品販売のものだけで13巻そろうとは思いませんでしたー。

それにしてもまさかこの作品をDVD全巻そろえるほどにはまるとは・・・
とりあえず、レンタル落ちのDVDなので、問題なく再生できるかどうか、順次視聴していこうと思います。
再びのプリキュア視聴マラソン始まりー。(笑)

今日はこんなところで。
それではまたー。

追伸:この作品をモチーフにした二人の少女悪堕ちSSを書いちゃいました。
明日から四日間連続で投下しようと思いますので、お楽しみに。
  1. 2018/11/14(水) 18:11:56|
  2. アニメ
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残留決定! しかも

今日は嬉しいニュースが入ってきました。

北海道日本ハムファイターズの中核、中田翔選手が本日記者会見を行い、今季FA権を行使せずに残留することを表明いたしましたのです。
しかも、単年契約ではなく総額10億円ほどでの3年契約とのこと。
これで来季だけでなく3年間は日本ハムの選手としていてくれそうです。
ありがたやー。ヽ(´▽`)ノ

先日は宮西投手も2年契約で残留が確定しており、これで二人とも残ってくれたことに。
あと微妙なのはレアード選手ですが、どうなりますかねー。

今日はほかにも阪神の上本選手がFA権を行使せずに残留するという発表があり、こちらもやれやれです。
来季は怪我無く頑張ってほしいですね。

今日は短いですがこんなところで。
それではまた。
  1. 2018/11/13(火) 18:44:36|
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久しぶりにモ子ちゃん

月刊モデルグラフィックスさんの12月号が、タミヤ1/35ミリタリーミニチュアシリーズ50周年ということで、表紙に「プラモのモ子ちゃん&ラビ君」を持ってくるということをなさってました。

それを見まして、思わず懐かしくなり、まだ保存してあったはずと思って引っ張り出してきたのがこちら。

DSC_0049.jpg
「プラモのモ子ちゃん模型講座」の保存版1から4までです。
1と4とでは、モ子ちゃんの顔も結構違いますねぇ。
私が持っているのはこれだけなんですが、5以降も出たんですかね?

DSC_0050.jpg
基本的にはその時々の模型の紹介や、デカールの貼り方、塗装の仕方などをマンガ形式で描かれたものですけど、懐かしいですね。
価格なんかも載ってますので、当時のタミヤパテが32グラムチューブ150円だったとかがわかりますね。
(現在はタミヤホワイトパテ32グラム280円プラス消費税)

ということで、引っ張り出してきましたので、寝る前にでも読もうかなと思います。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2018/11/12(月) 18:13:13|
  2. タミヤニュース
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11月11日はショッカーの日

今日11月11日は「靴下の日」だとか「ポッキー・プリッツの日」だとか様々な記念日であるわけですが、どうも「ショッカーの日」でもあるらしいです。
たぶん「1111」が「いい いい」になって、「\(^o^)イーッ \(^o^)イーッ」ってことなんだと思うんですけど、まあ、由来はどうあれ、「ショッカーの日」ということで一本SSを書いてみました。

タイトルは「女戦闘員37号」です。
今回はちょっと悲しいお話です。
それではどうぞ。


女戦闘員37号

「イーーーーーーッ!」
気が付くと、私は変な奇声を上げながら地面にたたきつけられていた。
頭に猛烈な衝撃が走り、一瞬何が何だか分からなくなる。
な・・・何?
いったい何が起こったの?
私はいったい?

全身に耐えがたいほどの痛み。
まるで躰がバラバラになってしまったかのよう。
「ゲホッ」
打ち付けたショックで一瞬呼吸が止まり、肺が空気を求めてあえいでいる。
「あ・・・」
ここは・・・どこ?
私はなんでこんなところで地面に寝転がっているの?
目を開けると遠くにコンクリートの天井が見える。
薄暗く広い空間は、ところどころに照明がついている。
排気ガスのにおいもする。
そうか・・・
ここは地下の駐車場か何かなんだ・・・
でも・・・
でも、なんでこんなところに私はいるの?

私はゆっくり手を動かしてみる。
よかった・・・
まだ手は動く。
私は右手を上に上げる。
あれ?
何この袖。
真っ黒ですべすべしてて、まるでナイロンのタイツみたい。
それに黒い手袋をしている。
こんな手袋、私持っていたっけ?
私は痛みを我慢しながら、首を動かして躰を見る。
袖からつながった黒いタイツのような服が私の躰を包んでいる。
えええええ?
右手で躰を支えて少し起こすと、それがまるで水着のような衣装であることに気が付いた。
なんで?
なんで私はこんな服を着ているの?
脚も網みたいなタイツを穿いているし、私はいったいどうしちゃったの?

「イーッ!」
「イーッ!」
「とうっ!」
「たあっ!」
「シュシューッ! シュシューッ!」
「ライダーーーキーーーック!」
「グギャァァァァッ!」

なんだかよくわからない声が遠くでする。
あれは何?
いったい何が起こっているの?
私はどうしてこんなところにいるの?

帰ら・・・なきゃ・・・
うちに帰らなきゃ・・・
お母さんが・・・お父さんが心配しちゃう・・・
なんか躰があちこち痛い。
まるで高いところから地面にたたきつけられたみたい。
なんで・・・なんでこんなことに・・・

ようやくの思いで立ち上がった私がふらふらと歩き出すと、その先には何かがいた。
人のようだけど、赤くて大きな丸い目が光っている。
全身も黒い姿で腰には大きな太いベルトを巻いているようだ。
あれは・・・何?

「まだ生き残りがいたか!」
私の方に近づいてくるその人影。
天井からの明かりがその人影を照らし出す。
「ひっ!」
私は思わず声を上げた。
だって・・・
それは人ではなかったんだもの。

それは人のような姿をしていたけど、明らかに人ではなかった。
大きな赤い丸い目を輝かせ、額には二本のアンテナのようなものが伸び、全身を黒いスーツのようなもので覆っていて、胸には昆虫の腹を思わせるような分厚い皮膚が付いていた。
裏切り者のバッタ男・・・いや、仮面ライダー・・・
なぜ?
なぜ私はそんなことがわかるの?
バッタ男って何?
裏切り者って何?
私はいったいどうしてしまったというの?

「ショッカーの女戦闘員! お前たちを生かしておくわけにはいかん!」
ショッカーの・・・女戦闘員・・・
私は・・・ショッカーの女戦闘員・・・
そう・・・だわ・・・
私は・・・ショッカーの・・・

すっとバッタ男の・・・いや仮面ライダーの手が振り上げられる。
あれを私に向かって振り下ろすつもりなのだろう。
それを理解した瞬間、私は悲鳴を上げていた。
「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!」
それを聞き、なぜかライダーの腕が一瞬止まる。
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。赦してください。殺さないでぇ!」
頭を抱えるようにしてうずくまってしまう私。
でも、予想していた手の一撃はなかなか来ない。
恐る恐る私は顔を上げる。
すると、そこには、何やら難しそうな表情をしている青年の姿があった。
これが・・・本郷・・・猛?
なんて・・・なんてかっこいい人なんだろう・・・

「悲鳴を上げ、ごめんなさいという。それに顔のフェイスペイントも消えているし・・・もしかして、君は正気に戻っているのではないか?」
「えっ?」
正気?
私が正気?
「ど、どういう?」
「ショッカー戦闘員は脳改造を受けていて、ショッカーのためには自分の命すらも惜しまないようにされている。なのに君は悲鳴を上げて赦しを請うた。君は脳改造から抜け出したのではないのか?」
かがみこんで私と目線を合わせてくれる本郷さん。
「わ、わかりません。気が付いたら私、ここで倒れてて、躰中が痛くて死にそうで・・・」
「そうか・・・俺がさっき投げ飛ばしたショックが、君の脳改造を解除したんだ」
そんなことが?
でも、本郷さんの言葉で私は思い出していた。
私は・・・そう・・・ショッカーに改造されちゃったのだ。

私、三羽礼子(みつわ れいこ)はあの日学校から友人の幸子(さちこ)と一緒に帰る途中、黒服の男たちに囲まれ、薬を嗅がされて気を失ってしまった。
気が付いた時には、私は台の上に寝かされていて、両手両足を固定されていた。
台を見下ろすような位置にはワシのレリーフがはめ込まれ、そのお腹のところにあるランプが光り輝くと、室内に重々しい声が流れてきたのを覚えている。

『三羽礼子。お前はこれより脳改造を受け、ショッカーの女戦闘員となるのだ』
「えっ? 何ですか、いったいそれは? 私を家に帰してください!」
『もう遅い。すでにお前の躰は強化され、プロレスラーや鍛えぬいた軍人とも互角以上に戦えるような力を持った。あとは脳改造が済めば、お前はショッカーの女戦闘員となり、ショッカーのために働くようになるのだ』
「いや! いやです! いやぁっ!」
私は必死でもがいたけど、すぐにまた薬を嗅がされて気を失った。
それから後のことは・・・
なんだか自分が自分ではなかったような気がする。
でも、私はショッカーの女戦闘員として活動し、こうして仮面ライダーに倒されてしまったというわけだ。

「私・・・私・・・」
「落ち着きたまえ。今は躰のダメージとショックで混乱しているんだ。とりあえずここを出よう。また奴らが来るといけない」
そう言って本郷さんは着ていたブレザーを私の躰にかけてくれる。
そういえば、私・・・とんでもない恰好をしているんだった・・・
思わず顔がほてってしまう。
おそらく相当に赤い顔をしているに違いない。

私は本郷さんのブレザーに腕を通し、とりあえず上だけは隠すことができた。
でも、下は今はどうしようもない。
網タイツにブーツなんてなんていやらしい恰好なんだろう。
でも、脳改造されていた時には、そんなことは思い出しもしなかった。
この躰で男を誘惑し、ショッカーの思い通りに操ることしか考えていなかった。
なんてことなのだろう。

私は本郷さんのバイクの後ろに乗り、腰に手を回してしっかりと握って振り落とされないようにする。
「ん・・・大丈夫だ、そんなに強くしなくても、君の力は強化されている。振り落とされる心配はない」
本郷さんに言われて私は少し力をゆるめる。
そうだ・・・
私はもう普通の人間じゃなかったんだ・・・

本郷さんのバイクは地下駐車場を抜け、外に出る。
そのまま通りを走っていくけど、やっぱりすごく恥ずかしい。
私は顔を隠すようにして本郷さんの背中に密着する。
本郷さんの広い背中が温かい。
若い女性が男のバイクに二人乗りして、足元は網タイツにブーツだなんてお母さんが知ったらなんて言うことか・・・
でも・・・
怒られてもいいからお母さんに会いたい。
もちろんお父さんにも。
会いたいよ。

スナックアミーゴ。
本郷さんと立花藤兵衛さんが拠点としている場所。
私にはそう記憶がある。
ショッカーから与えられた記憶だ。
私も何度かこの前を通って仮面ライダーの動向を監視していたことがあった。
「とりあえずここで君をかくまおう。君一人しか残っていなかったから、おそらく君が生き残っていることはショッカーには知られていないとは思うが、しばらく様子を見た方がいい。それに君の躰の回復も待たなくては」
「は、はい」
確かに私の躰はあちこち痛い。
でも、幸い骨折したり内臓に問題があるようなことはなさそうだ。
コンクリートの床にたたきつけられてこの程度なのだから、強化された躰に感謝しなくてはいけないのかもしれないけど・・・

「いらっしゃい・・・と、猛か、その娘は?」
店にはパイプを片手に新聞を読んでいた立花藤兵衛さんが一人だけ。
バーテンさんはまだ来ていないようだ。
「立花さん・・・実は、この娘を一時預かってほしいんです」
「預かる? それは構わんが、どうしてだね?」
パイプをふかしてはいるものの、厳しい表情は崩さない。
さすが仮面ライダーの協力者としてショッカーを手こずらせているだけのことはある。
「それは・・・君、上着を脱いでもらってもいいかな?」
「あ、はい」
恥ずかしいけれど仕方がない。
私は上着を脱いで、黒い水着・・・じゃないレオタードっていうんだっけ、女戦闘員の衣装姿を立花さんに見せる。
「おい、猛! この娘はこりゃあショッカー!」
立花さんが目を丸くする。
無理もないわ。
普段敵であるショッカーの女戦闘員が目の前にいるんですもの。

「立花さん。確かに彼女はショッカーの女戦闘員です。いや、でした。でも、どうやら脳改造がショックで解除されたようなんです」
「なんだって? 脳改造が?」
「ええ。私がショッカーの生き残りだと思って攻撃しようとしたとき、悲鳴を上げてごめんなさいと言ったんです。ショッカーの脳改造が機能していれば、そんな言葉を言うはずがない」
本郷さんが再び私の肩に上着をかけてくれる。
なんて優しいのだろう。
「なるほど。確かに猛の言う通りだろう。あいつらがごめんなさいなどと言うはずがないからな」
うんうんとうなずいている立花さん。
「君、名前は?」
先ほどとは違い、立花さんが笑顔で私に尋ねてくる。
「あ、はい。私は女戦闘員37ご・・・ちがっ、み、三羽礼子って言います。三羽は数字の三に鳥の羽の羽です」
私は思わず女戦闘員37号と答えそうになった自分に驚いた。
まだ脳改造の影響が残っているのだろうか。
「三羽さんのご両親にも連絡をした方がいいだろう。おそらく娘さんがいなくなってずいぶん経つだろうから心配していると思うからな。すぐにというわけにはいかないだろうが、いずれはご両親のもとに」
「そうですね。奴らがもう彼女が死んだものとみなして放っておかれるようになれば安心でしょう。幸い奴らは死ねば躰が溶けてしまう。死体を確認するわけにはいかないから好都合です」
顔を見合わせて相談している立花さんと本郷さん。
親子ほど年齢が離れているにもかかわらず、お互いを心から信頼していることがうかがえる。
なんだかうらやましい感じ。

「さあさあ、そうと決まれば奥の部屋で休みなさい。まずは躰を休めることだ。ご両親にはあとでわしの方から連絡しよう。電話番号は覚えているかい?」
「ええと・・・はい、覚えています」
私が電話番号を言うと、立花さんがそれをメモに書き留める。
「よし、猛、表に行って怪しい奴がいないかどうか確かめてこい。この店はショッカーに見張られているかもしれんからな」
「そうですね。行ってきます」
すぐに本郷さんが出ていこうとしたので、私は呼び止めて上着を返す。
「ありがとう。じゃあ、ゆっくりと休んで」
「こちらこそありがとうございます」
にこやかな笑顔で私に礼を言う本郷さんに、私も思わず頭を下げる。
こんないい人なのにショッカーはこの人を狙っているんだわ・・・

                   ******

私はそれから三日間ほどアミーゴでお世話になった。
女戦闘員の衣装の代わりに緑川るり子さんが用意してくれたパジャマや服に着替えると、なんだか以前の自分に完全に戻れたような気がして嬉しかった。
強化された躰のおかげでケガの回復も早く、三日目にはもうほとんど動きには問題がなくなっていた。
こういう部分だけは強化されていてよかったとは思う。

お父さんお母さんとも連絡が付いたらしい。
二人とも私が無事だったことをとても喜んでくれたと立花さんが言っていた。
本郷さんもとても喜んでくれて、安全が確認でき次第送り届けてくれるという。
その安全も、どうやらショッカーは別の行動に専念しているらしく、このアミーゴを見張っているような気配はないらしい。
別の行動というのが気がかりではあるがと言いながらも、まずは私の安全が確保できたのは喜ばしいと言ってくれた。

私はと言えばちょっと残念だ。
せっかく本郷さんや立花さん、バーテンの史郎さんやるり子さんとお知り合いになれたのに、お別れしなくちゃいけないんだもの。
ううん・・・そんなことないよね。
家に戻って、学校にも行き、生活が落ち着いたらいつでも来てくれて構わないって言ってくれたもの。
私、ここのみんなにはまた会いたいし、きっとまた来ることに決めているんだから。

最後に私の全快祝いと称してアミーゴではパーティをやってくれた。
ささやかなものと立花さんは言っていたけど、おいしい食事やケーキも出してもらって、本当にうれしかった。
私はこの人たちの敵として、この人たちを殺そうとしていた女戦闘員だったのに、こんなにしてもらえるなんてありがたすぎる。
本当にいい人たちだ。
どうかショッカーがこの人たちの手で消し去られますように。
そのためには私も覚えていることとか協力しないとね。

「それじゃお世話になりました」
私は皆さんにお礼を言って、本郷さんのバイクの後ろに乗せてもらう。
来た時もそうだったし、立ち去るときも同じというのは、なんだか感慨深い。
ここへ来た時には私は本郷さんの上着を羽織った以外は女戦闘員の衣装だった。
でも、今はるり子さんのおかげで普通の同じ年代の女子と同じような格好をしている。
過去の私、女戦闘員だった私はもういないんだ。

「それじゃお願いします」
「しっかりつかまっているんだよ」
「はい」
私は本郷さんにしっかりつかまって身を預ける。
やっぱり本郷さんの大きな背中がたくましくて温かい。
ずっとこうしていられたらいいのにな・・・

しばらく走ると見慣れた景色が増えてくる。
そして懐かしの我が家の姿が・・・
帰ってきた・・・
本当に私は帰ってきたんだわ。

なんだかドキドキする。
本当に入っていいのだろうか?
お父さんお母さんに怒られたりはしないだろうか。
思わず足が止まってしまった私を思いやり、本郷さんが先に玄関の呼び鈴を鳴らす。
すぐに玄関が開いて、お父さんとお母さんが現れる。
「礼子!」
「礼子!」
お父さんもお母さんも本郷さんの背後にいる私にすぐに気づいて声をかけてくれる。
懐かしい、思い出のままの声だ。
いったい何日この声を聴いていなかったのだろう。
「お父さん・・・お母さん・・・」
涙がこぼれる。
「礼子」
「礼子」
お父さんが、お母さんが手を広げて迎えてくれる。
「お父さん・・・お母さぁん」
私はお母さんのところに行き、その胸に飛び込んだ。
「まあ、この子ったら」
「本当によく無事で・・・心配したぞ」
「本当によく帰ってきてくれたわ」
お母さんが私を抱きしめ、お父さんの大きな手が私の頭をなでてくれる。
よかった・・・
私はやっと帰ってこられたんだ・・・

「本郷さん・・・」
私は母から離れ、にこやかに私たちを見ていた本郷さんのところへ行く。
「本当にありがとうございました」
「しばらくはまだ外をうろつかない方がいい。たぶん大丈夫とは思うが、万一ということがある。充分気を付けて」
「はい、本郷さん」
「それじゃまた。いつでもアミーゴに遊びに来て」
「はい。絶対に行きます」
本郷さんの大きな手が差し出され、私は本郷さんと握手する。
「本当にこの度はなんとお礼を言ってよいか」
「この娘がお世話になり、本当にありがとうございました」
お父さんとお母さんも本郷さんにお礼を言う。
「礼子ちゃんのお父さんお母さん、彼女は本当にいろいろと大変な目に遭ったんです。どうかゆっくりと休ませてあげてください」
「はい。それはもう」
「ゆっくりと休ませてやります」
お父さんが私の肩に手を置く。
本郷さんにはかなわないけど、大きくて力強い手だ。
「それじゃ失礼します」
本郷さんがバイクにまたがり、走り去っていく。
私はその姿が見えなくなるまで手を振っていた。

本郷さんが立ち去って、私たちは家に入る。
ああ・・・全然変わってない。
すごく懐かしく感じる。
「礼子」
お母さんが居間に入った私を後ろからそっと抱きしめてくる。
もう、お母さんたら・・・
でも、お母さんも私がいなくなって寂しかったのかもしれないな。
「お母さん」
「本当によく帰ってきてくれたわ。ありがとう。女戦闘員37号」
「えっ?」
私の首筋に鋭い痛みが走り、急速に力が抜けていく。
「お・・・かあ・・・さん・・・なに・・・を?」
「うふふふ・・・それは改造人間にも効果がある毒物よ」
「躰の自由が利かなくなってきただろう? ふふふふ」
床に倒れこんだ私を冷たい目で見降ろしてくるお父さんとお母さん。
「おと・・・さん・・・ど・・・して」
だんだん言葉が出なくなってくる。
「お前には感謝しているよ、女戦闘員37号」
「ええ。お前がまだ生きていることを確認した偉大なるショッカーは、お前がいずれここに戻ってくると見込んで私たちを改造してくださったの」
「お前のおかげで俺たちは生まれ変わることができたのさ。俺たちはもうお前の親などではない。ふふふふふ・・・」
「うふふふふ・・・」
躰がどんどん麻痺していく私を見つめながら笑っているお父さんとお母さん。
そんな・・・そんなことって・・・

「イーッ!」
「イーッ!」
二人が服を脱ぎ捨てる。
そこには、黒く躰にぴったりとしたタイツのような服で全身を覆ったお父さんと、以前私が着ていたような黒いレオタードと網タイツを身にまとったお母さんがいた。
二人とも顔には赤と青のペイントが塗られ、お父さんはベレー帽をかぶって腰にショッカーのマークの付いたベルトを、お母さんは赤いサッシュを巻き付けていた。
「そ・・・な・・・」
「イーッ! 俺はショッカー戦闘員143号」
「イーッ! 私はショッカー女戦闘員42号。私たちはショッカーを脱走した女戦闘員37号の処刑を命じられたのよ」
アジトで見慣れたショッカーの戦闘員と女戦闘員。
それが今私の目の前にいるなんて。
「お前がのこのこと帰ってきてくれたおかげで、俺たちは任務に成功し、意気揚々とアジトに戻ることができる」
「礼を言うわ、37号。うふふふふ・・・」
お母さんのブーツが私の脇腹を蹴る。
「ぐっ」
「普通の人間ならもうとっくに死んでいるのに、さすがにショッカーに改造された肉体は死ぬまで時間がかかるわね」
「なに・・・どうせもう助からんさ。ふふふふ」
お父さんがそう言って笑った時、居間のガラスが突然割れた。

「遅かったか! まさかすぐに手を出してくるとは!」
ガラスを破って飛び込んできたのは・・・本郷さん?
目がかすんできてよく見えない・・・
でも・・・声は間違いなく本郷さん・・・
「イーッ! 本郷猛!」
「帰ったのではなかったの?」
「あまりにもアミーゴ周辺にショッカーの気配がなくなったのが不自然だったのでな。アミーゴではなくこっちで彼女を襲うものと思って周囲を警戒していたのだが・・・まさかご両親がとは・・・」
本郷さんの言葉に苦いものが混じっているような感じがする。
でも・・・これは本郷さんが悪いんじゃない・・・
ショッカーが狡猾すぎたのよ・・・

「くそっ! この毒をお前もくらえ!」
「やぁっ!」
お父さんとお母さんが・・・ううん、ショッカーの戦闘員と女戦闘員が本郷さんに飛び掛かっていったみたい。
でも、本郷さんは強いわ・・・
負けたり・・・しない・・・

「とうっ!」
「イーッ!」
「たぁっ!」
「イーッ!」
遠くで何か聞こえてくる。
もう目の前が真っ暗で何も見えない。
なんだか最初に本郷さんと会った時のよう・・・

「しっかり! しっかりするんだ礼子ちゃん!」
私の躰がふわっと浮く。
あ・・・
私は本郷さんに抱きかかえられているんだ・・・
嬉しい・・・
本郷さんに抱いてもらえた・・・
「ほ・・・ご・・・ん」
「いいからしゃべるな。すぐに病院に連れていく」
本郷さんの声だ。
私は本郷さんに抱かれ、本郷さんの声を聞きながら死んでいける。
なんて嬉しい・・・
本郷さん・・・
好きでした・・・
私の・・・バイクに乗った王子様・・・

END
  1. 2018/11/11(日) 18:24:39|
  2. 洗脳・戦闘員化系SS
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猫の写真かわいかった

今日は父の施設に妹と一緒に行ってきました。

いつものように待ち合わせて話をしながら行き、父の顔を見てくるというパターン。
今日も父は元気そうで何よりでした。
施設にあった猫の写真集などを一緒に見てお話ししてきたのですが、以前うちで猫を飼っていたこともあり、猫の写真を見るのは結構楽しそうでした。
ただ、どうも食事の時以外は入れ歯を外しているのか、歯が入っていなかったのが気になりました。
今新しい入れ歯を作っているので、それができれば普段から入れるようになってくれるといいのですが。

その後は近くのコメダに行ってコーヒーを飲みながらまたおしゃべり。
この時間が楽しみですわ。(*´ω`)
なんだかんだと楽しい時間です。

そして先ほど帰還。
また今月後半に行く予定です。

今日は短いですがこんなところで。
それではまた。

PS:明日11月11日は「ポッキーの日」ならぬ「ショッカーの日」だそうですので、それにちなんだSSを一本投下しようと思います。
今回はちょっと悲しいお話かも。
お楽しみにー。(´▽`)ノ
  1. 2018/11/10(土) 18:05:00|
  2. 日常
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ハートキャッチとスマイルの一話も見ました

「ふたりはプリキュア」の全話見終わりましたけど、ユーチューブでは東映公式で第一話だけ無料公開されているんですねー。
なので、「ハートキャッチプリキュア」と「スマイルプリキュア」の第一話を見てみました。

どちらも主人公がプリキュアになるまでの第一話ですけど、面白いですねぇ。
続きが見たくなりますです。

スマイルプリキュアはおそらくしっかり見始めた最初のプリキュアだと思うので、この一話は何となく記憶にあったんですけど、ハートキャッチの方はほとんど見ていなかったので、第一話でダークプリキュアが登場したんですけど、高山みなみさんの声がどうしてもコナンを思い起こさせてしまって笑ってしまいました。

他にも第一話だけ公開されているプリキュアがあるようなので、見てみたい気もしますね。
何から見ましょうか。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2018/11/09(金) 19:33:45|
  2. アニメ
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初代無印見終わった

プリキュア無料
ニコニコ動画で15周年&映画公開記念で順次無料公開されておりました「ふたりはプリキュア」、今日で全49話を見終えることができました。(*´ω`)

いやぁ、ほんと楽しませていただきました。
大人(?)の私が見てもとても楽しめる作品で、すっかりはまってしまいましたです。
15年前はさすがに見る気がしなかった作品でしたが、シリーズが続いていく中で、フレッシュをチラ見し、ハートキャッチで本格的に見始めるようになり、スマイルで完全視聴するようになった気がします。

その流れであらためて初代であるふたりはプリキュアを見たわけですが、本当に初代の持つパワー(作中の二人のパワーではなく作品の)の強さを感じさせてもらいました。
確かにこれは魅力がある作品でしたわぁ。

まあ、おかげで影響もろ受けのSSを書き始めちゃったりしているわけですが、二人のイメージが強すぎてずいぶんと引きずってしまってます。(苦笑)
読んだ人はどうしてもこの二人をイメージせずにはいられないと思いますけど、それもまあいいかと。
何せ私自身が引きずられてますから。(*´ω`)
何とか近いうちに出せればと思いますけど、気長にお待ちくださいませ。

さて・・・マックスハートを見るかどうか・・・ですなぁ。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2018/11/08(木) 17:32:04|
  2. アニメ
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中間選挙とFA宣言

今日はアメリカで俗に中間選挙と呼ばれる主に上院議員の三分の一と下院議員全ての改選となる選挙が行われたそうです。

速報ではどうもトランプ大統領の属する共和党の旗色が悪く、上院では何とか過半数を維持したものの、下院では対立する民主党が過半数を確保したとのこと。
これでトランプ大統領は議会運営は難しくなり、政策遂行にも大きな制限となりそうとの報道ですね。
おそらくは日本にも影響が出てくるのは必至でしょう。
いろいろと厳しい要求が来るかもしれないですね。
気がかりなところではあります。

プロ野球では、日本シリーズも終わっていよいよストーブリーグも本格化してきました。
今日は西武の浅村選手と、広島の丸選手がそれぞれ国内FAを宣言。
ほかにも数人がFA宣言濃厚という話も出ています。

西武の浅村選手も広島の丸選手もそれぞれリーグ優勝に貢献した選手であり、両球団とも引き留めに全力を傾けるようで、宣言残留も問題なしとしているようですね。
なので両選手ともほかの球団の評価を聞いたうえで残留ということも当然ありそうではあります。
とはいえ、丸選手には巨人が、浅村選手には楽天やソフトバンクなどが声をかけるのではないかとみられているとのこと。
どうなりますでしょうか。

日本ハムからは今季入団した新外国人のアルシア選手が残念ながら退団との発表が。
やはり数字的に低かったので仕方がないでしょうか。
外国人選手は難しいですね。

今日は取り留めのない記事になってしまいましたがこのへんで。
それではまた。
  1. 2018/11/07(水) 17:59:19|
  2. スポーツ
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  4. | コメント:0
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舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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